衆議院予算委員会・統計不正問題を追及する小川淳也議員 〜 「霞が関の人事権を全権掌握した史上初の官房長官」に対して霞が関の不祥事の責任を問う

 4日に瞠目の質問をした小川淳也議員が、12日衆議院予算委員会で勤労統計不正問題の第2弾となる質問に立ちました。
田中龍作ジャーナルで要点を簡潔にまとめておられましたが、今回も気迫のある明快な質問で、のらりくらりはぐらかしの閣僚答弁が機能しない場面もしばしば、実に気持ち良いです。菅官房長官の木で鼻をくくった答弁も想定済みとばかり、その姿勢を厳しく叱責しました。
 前回の追求への人々の反響は大きく、統計不正の問題もさることながら、背景にあるこの政権の体質に脅威を感じると言う多くの国民を背に受けて追求すると表明しました。
 賃金水準を引き上げるためにデータから省かれてしまった日雇い労働者の賃金ですが、経済実態を知る上でそれがどれほど重要なものであったか、最後に小川議員はその本質を述べました。社会的に強いとは言えない人々に対して、政府がその賃金水準を把握することは、つまり政府が彼らの生活をしっかり把握している、というメッセージなのだと。そして飾り立てた数字ではなく、政府は国民生活の実際に迫りたい、そこに関心があるのだというメッセージにもなるのだと述べました。
 そうか、長らく忘れていたけれど、政府は国民のことを心配すべきものだったのだ。
その本来から大きくかけ離れた現政権の姿をくっきりと見せ、まともな政権ならばできることを要求する見事な質問でした。
最後にざっくり書き起こしの要約をしました。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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【アベノミクス偽装】 問題の2015年、菅官房長官は厚労省から説明を受けていた
引用元)
(前略)
 学識経験者などからなる「検討会」(※)において、勤労統計は変更されないという結論が出たのに、なぜか総務省の統計委員会に議論が召し上げられた。※正式名称:「毎月の勤労統計の改善に関する検討会」

 統計委員会は申請主義をとっている。各省が申請して初めて統計委員会が開かれるのだ。

 ところが麻生大臣の鶴の一声が出る直前の2015年6月、「未諮問審査事項」という聞きなれない概念が作り出された。長年諮問してない統計は、俺たち(官邸)から見直しを指示するというトップダウンの形式にまでなったのである。

 麻生大臣の鶴の一声はこの年の10月に開かれた経済財政諮問会議で飛び出した。会議の議長は安倍晋三首相。学識経験者などからなる「検討会」は、政治的意図の入る調査方法に反対していた。麻生大臣の方針とは逆だったのである。

 鶴の一声以降、検討会は開かれていない

(中略)

 小川議員は「最近、この厚生労働省の勤労統計研究会、そして統計委員会の委員に対して、官邸官僚、総理や官房長官の秘書官、補佐官が当時の経緯をあまり外でしゃべるなと圧力をかけているという噂がある」ことも明らかにした。

 実際、委員たちに当たって当時の経緯を聞いているが、彼らの口がだんだん重くなってきているという




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厚労・統計不正:小川淳也(立憲)「最初に気づいたのは財務省ではないのか?」2/12衆院・予算委員会
配信元)

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小川議員の質問の要約
 まず、不正統計のキーパーソンとなる大西前政策統括官への質問で、隠蔽の意思があったのか危機管理能力の欠如があったのかを確認すべく、関連文書の提出、また大西氏に関わった酒光統括官、野地室長、石原前室長の参考人招致を求めました。曖昧なごまかしを認めない姿勢です。

理路整然と質問する中で、不意に核心をつくように「保険給付の影響や次年度予算への影響に最初に気づいたのは、財務省なのではないのか?(12:37)」と突っ込み、財務省とのやり取りの経過一覧を提出するように求めました

 大西前統括官への2点目、賃金構造基本調査について、訪問調査をすべきところを郵送調査で済ませたことは隠蔽が伺えること、そしてこの調査に計上された1億5000万円は郵送調査では過剰計上ではないか、と迫り、これもメモの提出を求めました

 ここで記者会見を終えた菅官房長官が入室し、ここからは菅官房長官への追及に移ります(19:20)。

 質問では、田中龍作ジャーナルも伝えるように、検討会では定義を変更しないと結論していたものが、なぜか不自然に官邸から統計事項の見直しが指示される形式になったことが明かされました。麻生大臣の「鶴の一声」よりも以前に、当初の検討会の結論とは反対の意図を持った政治的な力学があったと指摘しました。 

 菅官房長官に「厚労省からデータの下振れの説明を受け、激怒した事実があるか」との直裁な問いに、菅氏「私は激怒することはない。」とはぐらかしますが、小川議員は菅官房長官の一挙手一投足が厚労省にとって相当なプレッシャーであったことを説得力を以って語り、厚労省からの説明資料とその応答録を提出することを求めました

重ねて「当時から統計には関心がなかった」と逃げる菅氏に「霞が関の人事権を全権掌握した史上初の官房長官です。史上最大に権力者ですよ、戦後最大の。総理が2番目じゃないかと思うくらい。官房長官にその自覚がない限り、霞が関で起きている不祥事の数々は治癒しない」と逃げを許しません。

 さらに追い討ちをかけるように、「最近、この勤労統計研究会そして統計委員会の委員に対して、官邸官僚が当時の経緯を外で話すなと圧力をかけているという噂がある(25:50)」とし、官房長官に「ここで指示して下さい。当時の事実を捻じ曲げたり、あるいは嘘の説明をしたり、あるいは説明すべきことを説明しないなどということは官邸官僚としては不届きだ。そのようなことがあったら厳しく処罰するとこの場で言って下さい。」と申し渡しました。御本尊に対して。痛快です。

 いよいよ本論。
まずは勤労統計研究会の議事録のうち、佳境に入った2015年7月〜9月だけ、4年経った今も公開されていないことを指摘し、根本大臣に一刻も早く提出するように求めました(27:40)。

 2018年の賃金水準が極めて高いことに関して、日雇い労働者を省いた点を集中的に質問しました

統計委員会としては、日雇い労働者を抜くような定義変更は、統計の役割が半減するなどの懸念を何度も答申に挙げているにもかかわらず、厚労省がそれを振り切った経緯を説明し、定義変更で賃金がどのように変化するか、さらにどのくらいのブレがあるかを小川議員独自に試算も行い、根本大臣と安倍総理に精査を求めました

が、答弁はひどいもので「たった今見せられても精査できない。」「今朝8時の質問の通告では対応は無理。」
小川議員は「これは経済実態に関わる話であり、専門家の意見が必要だとか、専門的に見るべきだと言うものではない。政府として政策的、政治的に常にウオッチしているべき数字」「政府が関心を持つべき賃金のトレンド調査から日雇い労働者を外したことの影響は重大。これをきちんと推計して賃金の上振れを明確に提出させてほしい」と問題点を整理しながら質問します。

が、何を聞いても大臣側は「初めて知った、専門家ではないので答えられない」などと責任放棄のような言い逃ればかりが目立ち、担当能力が無いのだったらトットと辞めろと言いたくなるような答弁をグダグダ続けます。
 小川議員は「飾り立てた数字ではなく、国民生活の実際に迫りたいのだという政府の姿勢を示せ、社会的に弱い立場の日雇いの推計を必ずやると答えろ」とビシッと訴え、それはそのまま本来の政府のあり方を示して見せてくれました。

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