国の財産、国有林を金融商品化し民間業者に売り払う「国有林管理法の改正案」国会提出 〜竹中平蔵氏加わる「未来投資会議」の提言に従って「コンセッション方式」導入

 日本の森林が丸坊主になってしまうかもしれない、そのような不安のある法案が国会に提出されています。「森林経営管理法」の改正法案です。
 元となる「森林経営管理法」は2018年5月に急ぎ成立しましたが、これは放置された森林の管理権を森林所有者から市町村が強権的に取り上げ、民間事業者に委託して、事実上、企業が伐採を含む経営を担うもので「一種の民間企業への払い下げ」と言われています。憲法違反の疑いを指摘されつつ、すでに今年の4月1日から施行されています。
 今国会に提出された改正法案はさらに踏み込んで、対象が国有林になっています。森林ジャーナリストの田中淳夫氏は「ほとんど国有林の民間払い下げみたいなもの」と述べています。
従来は、民間に任せる経営は1年単位だったところを、改正案では上限50年という長期に渡って「樹木採取権」を与え、面積も現行数ヘクタールだったところ、年間数百ヘクタールもの伐採が可能になります。しかも、伐採後の再造林は「義務」ではなく「申し入れ」となっており、もしも民間業者が再造林を怠った場合は、国が負担して造林し、その後の育林も引き受ける、という尻拭い付きです。さもなければ禿げ山がどんどん増えてしまいます。
 田中氏は、伐採権を企業へ付与した結果の例として、フィリピンが国土の森林の大半を失ったばかりか、企業が荒廃した森林を厄介者のように国に返したケースを紹介しています。散々材木を売りさばき、後始末を国に押し付けた格好です。
 国が経営難を理由に「民間の知恵」を導入してコスト削減するなど「役所に経営能力が無いと認めたようなものだ」とはその通りですが、この民間導入の仕掛け人がまた出た、竹中平蔵氏がリードする「未来投資会議」でした。
 そもそも森林経営の困難は、利益を見込めないほどのコスト高と後継者不足と言われます。政府が国土の森林保全を重要視し、後継者が不安なく育つような予算を組めば民間企業に売り払う必要はなかろうに。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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配信元)

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国有林伐採後放置法案? 再造林も義務なしの仰天
引用元)
連休明けの国会で、国有林管理法の改正案(国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案)の審議が始まる
(中略)

 (中略)改正の要諦は、これまで入札では基本1年単位だったものを長期にすること。それがなんと50年だという。民間業者に「樹木採取権」という形で与えるのだ
(運用は、基本10年で設定するとなっている。面積も対応可能な数百ヘクタールを想定するという。年間約20ヘクタールずつ皆伐させる考えらしい。)

 この辺だけでもいろいろツッコミみたい部分があるのだが、もっとも仰天したのは、伐採後の林地の扱いだ
(中略)
再造林をしてくれといいつつ義務ではなく、経費は国が支出するのが前提のようである。どうやら申し入れても植栽されなかったら、国が代わってやりますよ、その後の管理(育林)も国が引き受けますよ……ということらしい。

まてよ、と振り返る。民有林の経営管理をなるべく伐採業者にゆだねようとする森林経営管理法(今年より施行)では、再造林は義務化していなかったか。

(中略)

 もともと国有林はまとまった面積があり、しかも測量調査も行われ境界線などの確定もほとんど済んでいる。林道・作業道もかなり入っている。その点、小規模面積でバラバラにある民有林(しかも所有者や境界線がはっきりしないところが多い)と比べて圧倒的に作業がしやすい
 伐採業者にとっても、放置された民有林に興味はなくても国有林なら扱いたいという声が圧倒的だ。そんな声に応えて?国有林の投げ売りをする法律改正に見えてしまうのは私だけだろうか。
(以下略)



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水道に漁業に国有林……経営の民間払い下げが広がる裏事情とその危うさ
引用元)
(前略)
 50~60年間も国有林を預かって伐採できるとなれば、ほとんど国有林の民間払い下げみたいなものだろう。
 (中略)一般には「伐採権(コンセッション)の分配と同じ」と言われている。
 ちなみに伐採権の企業への付与は、発展途上国の森林経営ではよく見られるもの。たとえばフィリピンでは国有林の伐採権を企業に与えたところ大規模なラワン材の切り出しが行われ、国土の森林の大半が失われ荒れる結果を招いた。(森林率は20世紀初頭の約70%が2003年には24%に)そして期限が来たからと荒れた森林は国に返されたが、その後始末に悩まされている

 なぜ、コンセッション方式という名の経営の民間委託が進むのだろうか
 一つは現状の経営に問題を抱えているからだ
(中略)
 森林経営も、経営意欲をなくした所有者が増える一方で、林業事業者は増えていない。コスト高で利益が見込めないからだ。国は木材生産量を増加させたいのだが、担い手が少ないのだ。
(中略)
 ともあれ行き詰まった経営を、“民間の知恵”で経営すれば、コスト削減を測れると思っている

 行き詰まるとすぐに民間の知恵というのは、役所や既存組織に経営能力がないと認めたようなものだが……経営改善の方法に民営化しか思いつかないというのも知恵がない。

 実はいずれも仕掛け人は同じである。官邸に設けられた「未来投資会議」である。今や政府の経済政策の多くがこの会議でとりまとめられている。経済産業省に事務局があり、議長は首相だが、会議をリードしているのは経団連の中西宏明会長や竹中平蔵・東洋大学教授のようだ。彼らの提案で、漁業も国有林も「民営化」が進められている。いかにも民営化が好きそうな面々だ。
(以下略)
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配信元)

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