ままぴよ日記 33

 アメリカの政治経済、福祉、医療のニュースを聞くたびに、何と弱者切り捨ての格差社会なのだろうかと心配になるのですが、ボストンに住む娘家族は元気で過ごしているようです。
 でも、これは日本も同じこと。世界情勢がどうであれ、いつ何が起こるかもしれない状況であれ・・・そこに暮らす人は目の前の暮らしを一生懸命に生きていくしかないのです。
 普通の暮らしを誠実に生きる事の何と尊い事か!そして、どんなに小さな存在であっても、そこにどんな意識で暮らしているか?が未来を作ることに直結しているのだと思います。
(かんなまま)
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テストも宿題も時間割もないアメリカの学校


「アメリカに来て、まだ一度も勉強してない!!」と豪語したお姉ちゃん。4月から学校に行っているにもかかわらず、日本の学校のような勉強をしたことがないという意味なのでしょう。

テストも宿題も時間割もない学校。本を読んでどう思ったかを話したり、算数も動きながら数の概念を体験したり、体育はまるで遊びそのもの。特に年度末の26日前に「ABCカウントダウン」が始まったのには驚きました。

アルファベット26文字を使って毎日変なお題を与えられて登校するのです。(もちろん参加しないのも自由です)

AはAirplane 紙飛行機大会、Beachは水着やゴーグル着用で登校、Crazy hair/socks 変な髪型と靴下で登校、Dance クラスでダンスパーティー、Excellence 得意なことを披露、Fine dress おしゃれして登校、Game ボードゲームを持参して遊ぶ、Hat いろんな帽子を被って登校、Inside out 服を裏返して着て登校、Joke ジョークを披露、Kindness みんなに特に親切に、Lunch outside 外でランチする、Movie ビデオ鑑賞、Nature 自然観察と絵画、Outside 青空教室、Pajama パジャマで登校、Q (先生お休み)、Rainbow 虹色の服やアクセサリーをつけて登校、Sunglass サングラス着用で登校、Tie ネクタイ着用で登校、Up watch upということでビデオ鑑賞、Visitor 先生が自分の赤ちゃん連れで登校、Water color 水彩画、X(先生お休み)、You 1人1人に先生からプレゼント、Z 最終日・・・こりゃあ、行くだけで楽しいわ!



日本では決められたルールに従う人が優等生


まだ日本にいた頃、計算ドリルの通し番号を書いていないだけで何度も宿題をやり直させられた弟。先生が決めたルール通りにしないと合格がもらえないので、ミスをしないか?忘れ物はないか?といつも緊張して学校に行っていたのが嘘のようです。

先日の時事ブログにも掲載されていましたが、小学5年生の男の子が筆算の線を手書きで書いたら定規で線を引くようにと指導されて160問の書き直しをさせられたというニュースがありました。
その後、この記事が反響を呼び、様々な事例が寄せられました。

まだこんなことをやっている学校。これが教育だと思っている人は先生になってはいけない。子ども一人一人の個性に目を向ける余裕がなく、おかしいと思いながら子ども達を変な規則に従わせている先生は病気になります。どちらにしても被害者は生徒で、学ぶ喜びからどんどん遠くなっていきます。

そして、決められたルールに従う人が優等生になるのですが、当の本人は自分不在で、いつまでたっても自信がないままです。高学歴のママが赤ちゃんのお世話をマニュアル通りにしようとして大きな壁にぶつかります。私はこんなこともできないママ。早く保育園に預けて専門家に育ててもらった方が子どものためではないかと真剣に悩んでいます。

人は最初に出会った人間関係や体験に翻弄されます。それが生きていくパターンになり、場を変え人を変えながら同じ問題を繰り返していきます。小さい頃のかかわりがその人の一生を決めると言っても過言ではないのです。もちろん、その後の出会いや自分の気づきでどんなでも人生を変えることはできますが、できるならそんな辛い思いはしない方がいい。

本来、子どもは自分の感覚に敏感です。まずは言葉にならない感覚を何らかの形で表現します。それをすべて受け入れて「嬉しかったのね」「嫌だったのね」と適切な言葉で代弁してもらえると自分の感覚や感情を言葉で表せるようになります。感情と言葉が一致することは気持ちのいいものです。

あい∞ん(挿絵)



この積み重ねが自己肯定感となり、このままの自分でいい、何だかやれそうな気がするという自信につながっていくのです。小さいころから無条件に受け入れられた経験の積み重ねが根拠のない自信を生み、生きる力になるのです。
https://kodomo-manabi-labo.net/basic-trust

それを考えた時、日本の子ども達は家庭や保育園、学校で自分の感覚や感情を無条件に受け入れられて表現できているでしょうか?むしろ気が向かない事ばかりさせられているのではないでしょうか?やがて何をやってもダメ・・・と、学習性無力感に襲われて本来の感性を閉じてしまいます。自分が何をしたいのかもわからなくなります。

この子育て環境、特に学校の在り方を根底から変えなければ1億総疲弊、1億総鬱社会になってしまうのではないでしょうか?これは「不登校が増えたから多様なフリースペースを増やしましょう」「発達障害児が増えたから特別支援学級や通級を増やしましょう」という問題では解決しません。社会や学校自体が変わらなければいけないのです。学校に行けない人の方がまともな人。でも生きるのが苦しいなんて、おかしな社会だと思います。



五感を通して学ぶ子どもたち


さて、ボストンでは9月が新学期で先生も変わり、クラス替えがありました。校長先生の方針で日本人の子がバラバラのクラスになりました。長い夏休みがあったし、クラスも変わったので学校に行きたくないと言い出すのではないかと思ったのですが電話をかけてみると「絶対、学校休まない!!」と元気な声で言いました。「英語わかるの?」と聞いたら「全然!」と平気です。でも授業でどんなことを習っているのか説明してくれました。「わかっているじゃない」と言ったら「まあね」と。

子どもは凄いなあと思います。大人は言葉だけで理解しようとしますが、子どもは全体の雰囲気で肌から理解しているとしか思えません。現に4歳の弟は新しいプリスクールに行き始めましたがすぐにお友達が出来て楽しそうです。お互い何語で話しているのやら(笑)

お姉ちゃんの新しい先生はグロースマインドセットという方法で授業をするそうです。学校スタンダードではなく教師の個性も尊重されているようです。先日はグループのテーブルにぬいぐるみが1匹ずつ置いてあって、皆でA4の用紙を使ってぬいぐるみの椅子を作るという課題が与えられたそうです。


条件はぬいぐるみが椅子に座った時に足が床につかない事。設計図も書きます。完成したらその設計図を隣のグループに渡して、次のグループはその設計図を見て椅子を作るのだそうです。でも、その通りに作っても違うものが出来上がったりするそうです。なぜだろうと考えます。それを1日かけてやるとの事。

自分たちで取り組む総合的な学習です。先生はそれを評価しないし、自分で作ってどう思ったか?ほかの班を見てどう思ったかを発表し合うのだそうです。一事が万事そんな授業で、お姉ちゃんは学校を休みたくないのです。英語もわかっているのかわかっていないのか?チームで自然に動きながらコミュニケーションをとっているのでしょう。

でも、毎日遊びのような授業で学力はつくのでしょうか?国際学力調査(PISA)の結果ではアメリカは72か国中、数学では40位!ちなみに日本は5位です。アメリカは地域で格差がありすぎて一概には言えませんが、少なくとも子ども達が学校に行きたい!みんなと学ぶのが楽しい!と言える子どもが多いアメリカの方がまともな教育だと感じます。自己肯定感の国際比較では日本の子ども(7.4%)アメリカ(55.9%)を見てもわかります。

そして、アメリカは学校以外の選択肢が多いのも特徴です。シュタイナーやモンテッソーリーなどのオルタナティブスクールがあり、ホームスクールでは約200万人の子ども達が学んでいるそうです。学校以外で学んでいる子ども達のために図書館や文化施設、インターネット上で様々なアクティビティを用意されているし、自然は豊かで野外活動も盛んです。

本来、子どもは遊びながら学ぶようにできています。家でどんな暮らしをしているのか?どんな会話をしているのか?日常のあらゆる場面で学んでいるのです。だから日常生活の質の方が学校より影響を与えます。

ある日「ターシャの森の夏」という番組を見て感動しました。ターシャ・テューダの曾孫である姉妹がターシャの残した家で両親と共に暮らしているのですが、ホームスクールで両親の深い愛と、暮らしの中で学んだ知恵を教えてもらいながら成長している様が映し出されていました。


娘家族も、子どもが小さいうちは学校で友達と学ぶ楽しさを経験し、自然豊かな環境でのびのび育てたいと思っているようです。下の弟2人は週に1回、親子で森の幼稚園に通い始めました。家ではできないダイナミックな遊びを楽しんでいるようです。やっと歩けるようになった1歳の孫は怖いもの知らずで、何でも触って舐めて自然の中に同化しているそうです。きっと感覚器官が目覚めて、満たされて、根拠のない自信がじわじわと作られている事でしょう。

さて、日本では規則に縛られた学校に通っているたくさんの子ども達。外で遊ぶ事もままなりません。でも、家庭の中でできる事はたくさんあります。親のまなざし、言葉かけ一つでも変わります。私は地域の子ども達と野外活動をするのが大好きです。「野外で算数」という本があります。

2007年にスウェーデンで出版された、算数の野外教育教材ですが「紙に書かれた数字や数だけが算数ではありません。​算数は、さまざまな課題を解決することができるという自信や想像力を育むものでもあります。それは、自己に気づき、周囲の世界に関わっていきながら、算数を現実の一部として捉えるということです。(本文より)」と書かれています。

何て素敵なのでしょう!まず、子どもは生活の中で遊びながらどこからどこまでが私?1メートルはどのくらい?など自分の五感を通して理解し、空間を把握し、やがて周りの世界を理解し始めるのです。それが算数の勉強なのです。

「センス オブ ワンダー」レイチェル・カーソンが言っているように原点に戻って、この世界を楽しんでみませんか?



Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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