独逸の伯林で見た、聞いた、感じた社会問題、教育問題 ~第52楽章 職業を持つことをどう考える?

 2019年ももうすぐ終わろうとしています。ドイツベルリンでの年末年始は、1月6日ごろまでクリスマスの飾り付けが残っているのです。そのような中で31日はジルベスター(大晦日)でカウントダウンが行われます。2020年もよき年でありますように・・。

 第52楽章は、職業を持つことをどう考える?です。
(ユリシス)
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57歳で初めて職業を持ったというベルリンの男性



ドイツのベルリンで暮らしていて、ベルリンの人たちはどのように働いているのだろう?といつも興味をもって眺めています。日本人の働き方と価値観も違うので面白いものです。ドイツの中でもベルリンとその他の都市でも違うことが多いです。


これからご紹介する記事は、大手マスコミではなく、独立系で真実を報道すると書かれたオンラインメディアからのものです。少し前に気になって記事を保存していました。なぜ、この記事が気になったのかというと、30年以上も就職活動をしていたという呑気な雰囲気、職を持つことへの態度、世間体なども気にすることもなく、ずっとインターンシップを続けてきたこと、職業を持つことの大変さや厳しさとともに、なんとも鷹揚な姿勢がとても不思議でした。

行政、経営関連の分野は、ドイツ人にとても人気であり、大学の学部でも一番人気な分野でもあり、競争率も高い分野ですので就活が大変であったことが想像できます。また、このように呑気にしていることができる実家からの援助もあったと思いますが、もし、日本であったのなら、中高年の悲惨な就活の実態・・ニートの実態・・などと書かれてしまいそうです。日本でよく報道される、ブラック、パワハラ体質、長時間労働、過労死という日本の働き方と比べてみると、価値観が変換できるかもしれないと思いました。

こちらの記事は、ベルリンにて、大学卒業から30年以上経過し、やっと57歳で初めて職業を持ったという男性についての記事です。
簡単に日本語でまとめると、
トーマス・メダーさんは、1988年から1400件以上の仕事を応募しましたが、経験不足が理由でなかなか正式な職業を得ることができませんでした。トーマスさんはいままでに247回のインターンシップと2年の海外インターンシップを経験しています。これでも経験としては不足でしたが、このたび市場調査の仕事で採用されました。トーマスさん曰く、『今後の職業生活についてはストレスを感じていない。気に入らない場合は早めの年金生活に入る予定である。』

どのように思われましたでしょうか・・第一印象として、今までどうやって過ごしてきたの?生活は大丈夫だったの?と思われる方が多いと思います。

31年間で247回のインターンシップと海外の経験ということで、ほぼ毎月、毎年仕事の経験は積んできたと思われます。しかし正式な採用までには至らなかったということで、アピール力や積極性なども不足していたのだと思います。こういう場合は、本人が実は本当に仕事をしたいとは思っていないことが多いものです。情報として書かれてはいませんが、もしかして旧東ドイツの出身、移民背景もあるのかもしれません。

ドイツ人のコメントでは、この年齢ならば、3つの学士、2つの修士、1つの博士号ぐらいないと就職はできない、そして最後には、それが奴隷制度のルールであると書かれていました。



ここで書かれている奴隷制度のルールというのは、学位の取得が必須である、学位がないと就職できないというルールを指していると思います。ドイツは職人系の仕事以外は、超学歴社会でもあり、卒業の学位がないと就職ができないのです。また、社会科学の学部でなく、BWLという行政経営学科の方であったのなら、就職できたのかもしれないという意見も書かれていました。

私の感想としても、まあ、なんと呑気なのでしょう・・と思いましたが、鷹揚にできる環境があったということは、恵まれているのでしょう。ご両親の援助などもあり、貧窮することなく生活ができているということなのかなと想像します。メディアの姿勢としても、プライベートについては触れていない点は、EUの個人情報に則っていると思いました。

このような事例から思うことは、ドイツのベルリンではトーマスさんのような事例でも生活していくことができる環境があるということが興味深いと思いました。ドイツ人のコメントでもこれは特別であると書かれていますので、もちろん異例中の特別な例であると思います。

Author:Samuel Mann[CC BY]

注目したことは、57歳という年齢。日本ではバブル時代を経験した方たちが55歳前後になっていると思います。日本で権力に寄り添い、不祥事を起こしている方たちも50歳半ばの方も多いはずです。過酷な仕事に追われて身体を蝕んでしまっている50歳半ばの方も多いはずです。

57歳であってもこれから奮起すれば、70歳まで働くことができるでしょうし、高齢のご両親にも恩返しができるでしょうし、人生はその人次第であることも感じられます。57歳から90歳、100歳まで健康に生きて、自分なりの仕事を進めるのならば、まだ、30年、40年もあるのです。

トーマスさんのように長い期間のインターンシップを得て、自分の力で職を得ていくことは素晴らしいとも思いました。寄らば大樹の陰のようにコネを使うよりもよいのでは・・とも思いました。スティーブ・ジョブスが若い時から活躍して有名になって56歳でお亡くなりになるまでのアップル製品に捧げた30年間の期間をトーマスさんは、就活していたことになる・・と考えると、なんとも仰天してしまいました。

Author:Acaben[CC BY-SA]

日本でも有名な企業などに就職をされている方などは、このような方の記事を見て、どのように思われましたでしょうか。日本では、学校を卒業して、有名な企業などで職業を得るためには、暗黙の了解で縁故、OB・OGの紹介などを利用された方も多いかと思いますし、人気なところであればあるほど、必要なはずです。本当に自力で職業を得ることは大変なことであると思います。ドイツでもコネクションが大事だとも言われています。

ドイツでの就職活動は、日本のように一斉に就活をするのではなく、個人個人で会社に応募する制度になっています。学生時代から企業に応募して、会社と協働で論文を書いている方もいらっしゃいますし、学生時代から会社で働きながら勉強している方もいらっしゃいますし、いろいろな方法があります。特徴としては、経験を重視しているところです。日本のように会社が社員を教育していくという制度ではないようです。

Author:Marco VerchFollow[CC BY]

幸せを感じられる一生の仕事はなんだろう?


女性が職業を持つこと、働くこと、女性にとって安全第一で幸せを感じられる一生の仕事はなんだろう?とよく考えます。有名な職場で働きたい場合は、縁故がないと得られない仕事も多いですが、コネをどのようにして得ていくかも女性の安全と身を守ることをまず考慮しなければいけません。女性にとって大事なことは、自分の身を大切にすることであるとも聞いたことがあります。先日、裁判で女性が勝訴された件を思い出します。ドイツの複数のメディアでも報道されていました。ドイツの記事で書かれていた印象的なことは、日本では警察に訴え出る女性はわずか4%くらいであると書かれていたことです。日本ではじめて合法的に権利が認められたこと、そしていまだに日本社会が古い体質の男性社会であり、イギリスのBBCの報道と似たような感じで恥とタブーの構造があると書かれていました。
https://www.spiegel.de/politik/ausland/japan-shiori-ito-gewinnt-schadensersatzprozess-in-vergewaltigungsfall-a-1302083.html

この事件は、多くの方が自分のことと照らし合わせて、いろいろなことを考えさせられた事件だと思いました。女性の権利の問題、就活の問題、法的な問題、日本の構造の問題・・・など多くの側面があります。私の個人的な意見だと、昔から日本の飲み会というのが嫌いでして、日本でも簡単に女性が男性にお酒を注いではいけないと思うのです。欧州では、お酒を注ぐのはレストランのソムリエの仕事です。女性が男性にお酒を注ぐことは、商売の人に思われてしまうか、気があると思われてしまいます。日本もそのようになればいいなと思っています。


また、なぜ男性が悪事をするのか・・という、その原因は教育の問題なのか、親の育て方での愛情不足なのか・・とも考えてしまいました。男性の悪事は母親の愛情不足であるとも言われています。お母さんの価値観が非常に大事なのですが、現在でも多くの教育熱心な親御さんたちが子供を良い学校に入れたい、良い就職をさせたいと鼻息荒く進んでいます。しかし、有名なところに行きたい、お金をたくさん稼ぎたいという価値観をもつと、親子共々、権力にすり寄っていくことになりますし、友達なども自分にとって利益がある、使えるような人を集めることになってしまいます。残念なことに、多くの方が無意識のうちに、寄らば大樹の陰という行動をしてしまっていることが多いのです。



現在では教育産業が盛んで、中学受験をする多くの小学生が医学部を狙っていると聞きましたが、上記を見ると大変なことがわかります。医者を目指していたのにもかかわらず、就職では、お給料の高いコンサルティングファームに流れているという内容にもびっくりしました。
2000年くらいから戦略系のコンサル会社が就職でも人気になってきました。噂では26時にならないと帰宅できないという超激務な仕事でもあります。
http://career.mods.jp/2014/01/06/647

フレームワーク思考法を用いて論理的思考で問題解決をしていくそうですが、その問題解決とは解雇であるという指摘もあるようです。


下記のように、アフガニスタンにて、砂漠を緑化することに尽力した故中村哲医師のような医師が今後も現れることを期待してしまいます。


どんな年齢になっても・・。


この時代の子供の育て方が大事なのかな・・。



Writer

ユリシス

311を機に息子と共に、東京からシアトル、2012年ケアンズ、2015年ベルリンへと移住。
ユリシスの名前は、ケアンズ近郊でみられる見ると幸せになると言われる青い蝶から命名。
幸運にもケアンズの家の近くでペアのユリシスに遭遇したので、それを思い出し・・。
映像配信、東洋医学セミナーなどシャンティフーラでの学びが大好きです。
体癖1-3 



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