ぴょんぴょんの「キタキツネのいる景色」 〜写真家、井上浩輝氏のこと

 たまたま聞いたラジオ深夜便で、井上浩輝(いのうえひろき)氏を知りました。
 そして、ご本人の語る北海道の魅力に、すっかり引き込まれてしまいました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「キタキツネのいる景色」 〜写真家、井上浩輝氏のこと

雪の上で這いつくばる写真家の井上浩輝さん


あ〜〜〜 とうとう、ムシムシの梅雨になったなあ。


暑がりのピッタには、ツライ季節だね。

湿気にガマンならねえし、ムレるのガマンならねえし。

ぼくも、むれるのは好きじゃないな。
むれないところがカッコいい。

なんだ、そりゃ?
新しい下着かなんかのキャッチコピーか?

「群れない」ところがカッコいいんだから。
「僕は、キタキツネの孤高さに魅せられているんです。群れないところがかっこいい。」(光電子

いきなり何かと思えば、そっちの「群れる」かよ。
しかも、キタキツネって、どっから連れてきたんだ?

北海道に行って、キタキツネに会ってみたくなってさ。

北海道は、これから1番いい季節だが、コロナで行くことはかなわねえ。

じゃ、キタキツネの写真で、北海道に旅行しない?
ほら、これ。

なんだ・・この写真は?


この這いつくばってる人は、写真家の井上浩輝さん。

いくらなんでも、雪の上で這いつくばって、寒くねえのか?

今だから、涼しそうに見えるけど、冬は遭難するくらい寒いと思う。
でも、冬のキタキツネは、こんなにモフモフで・・。



おお! りっぱな、しっぽをお持ちでいらっしゃる。

そして、春になれば、恋の季節。


春かあ〜 仲良さそうだなあ。

そして、子ギツネ誕生。


顔出しちゃ引っ込み、出しちゃ引っ込み・・。
生まれた時は、灰色か、まるで子犬だな。


子犬・・たしかに、キタキツネはイヌ科だからね。
でも、夜行性で、狩猟本能が強くて、ジャンプ力がスゴイところはネコに似てる。
そして、ようやくキツネ色になったのがこれ。



クァワイイ!! 
手足に黒い靴下はいてるとこ、やっぱ、キツネだあ。

柴犬の子に似てるが・・ちと、目がちがうような?

そうなの、キツネの目はネコみたいに縦スリットなんだよ。

へえ、知らんかった。

キタキツネは、北海道のほぼ全域、特に道東に多いそうだよ。夜行性だから、夜間、車のライトに反射する小さな光を2つ見つけたら、キタキツネかもしれないって。(GoodDay 北海道

夜じゃなくて、昼に見たいなあ。

でも最近は、観光客にエサをねだる観光ギツネが問題になってる。

そりゃあ、毎日苦労してエサ集めるより、人間からエサもらう方が楽だわ。
くれくれって出てきたら、こっちも、ついついやりたくなるしなあ。

だけどそれは、彼らのためにも、ぼくたちのためにも良くないよ。
添加物だらけの、人間の食べ物が、あの子たちにいいはずないし
そして、ぼくたちにとって、彼らの運ぶエキノコックスは危険だよ。

エキノコックス?

動物から人間に感染する寄生虫。サナダムシ(条虫)の仲間で、体長2~3mm。感染すれば、重篤なアレルギー、肝硬変、呼吸困難、意識障害、けいれんが起こって、そのまま放っておくと90%以上が死ぬと言われている。(Doctors File

コワ〜〜! キタキツネは遠くから眺めた方がいいぞ。

10頭キタキツネを見かけたら、4頭はエキノコックスに感染している。
糞からも、虫卵がばら撒かれるから、要注意だって。
井上さんも、定期的に検査を受けてるって言ってた。

人間が、馴れ馴れしく近寄っちゃいけねえってことだな。

それに、不注意な人間と共存する彼らも大変だよ。
特に、交通事故
とかね。


車にはねられたのか?

足にケガして、動けなくなったキタキツネ。
そこに「どうしたの?」って、別のキタキツネが寄ってきて、ネズミをつかまえてきて食べさせては、毛づくろいをしてやる。食べさせては、毛づくろい、それを何度か繰り返してるうちに、ケガしたキタキツネは、猟ができるまで回復していった。


人間と共存してきたキツネ


人間より、よっぽど上等じゃねえか。
キツネってえと、ずる賢くて、だましたり、出し抜いたりするのかと思ってたが。

くろちゃん、それ、先入観

だって、幼稚園の頃、キツネが化かす話ばっか、聞かされたぞ。

イソップにもあったよね。
首の長いツルさんに、平たいお皿でごちそうして、意地悪したり?

しかし、ツルもキツネに仕返ししたから、今思えばどっちもどっちだな。

でも、キツネが悪者で、ツルさんを悪く言う人はいない。

それが、大人になっても刷りこまれたままとは、オソロシイ。
しかし、化かすとか、狐憑きとか、狐火とか、キツネの嫁入りとか、キツネは妖怪世界に足つっこんでるよな。

Wikimedia_Commons[Public Domain]
広重『名所江戸百景』より「王子装束ゑの木 大晦日の狐火」

英語でFOXと言えば「ずるい人」だけど、「魅力的な美人、セクシーな女性」の意味もある。英語のトリビア
韓国でも、機転が利いて、世渡り上手な女性を「キツネ」と呼ぶそうだよ。(KONEST

あまり、いい意味に使われてねえな、しかも、女性。
確かに、「あの女ギツネが・・」ちゅうセリフもあるし。

おそらく、男性よりも賢いからじゃないの?
キツネって、追っかけられると、足を止めてチラッと振り返って逃げる。
さらに追っかけると、また振り返って逃げる。
そうやって、森の奥までどんどん入って、森から出られなくなっちゃうって。

そら、結局、ワルい女と同じじゃねえか。

ハンターから逃げた後も、自分の足跡を踏みながらバックして、茂みにジャンプして姿をくらませる。ハンターは、突然、キツネの足跡が消えてるのを見て「ヒエ〜、バケモノ!」って腰ぬかす。(Kuny's Cafe)

ところで、キツネはやっぱし「コンコン」て鳴くのか?

キタキツネは、ほとんど「ギャーン」「キャッキャッ」だけど、「ワンワン」「ニャーニャー」って鳴くこともあるらしい。(GoodDay 北海道

ほお〜 そう言や、くろまるも甘える時「ニャオワン♪」って言うぜ。

ネコ? イヌ? どっち?

キツネはこれまで、人間と共存してきたんだな。
日本の昔話や童話にも、よく登場する
し。
キツネの恩返し、キツネの嫁さん、いずれも、決め技は化けることだが。

こちらは、有名な「キツネの嫁入り」
でも、ぼくのオススメは、「かみそり狐」


ハッハッハ!! 見てる方もだまされる。

頭のいい人間より、キツネの方が何枚もうわ手でした、チャンチャン♪


井上浩輝さんが写真家になるまでの道のり


ところで、井上浩輝の話にもどるが、彼はどうして、キタキツネを撮るようになったんだ?

井上さんが写真家になるまでの道のりは、長く険しかった。
彼は最初、医者になりたくて医学部に挑戦してたんだ。
何度か挑戦したけど、結局あきらめて法学部に入り、今度は弁護士を目指した。
けど、司法試験にも受からないまま、とうとう30才を超えていた。

へえ、ぜんぜん違う方向に向かってたんだな。

この先、どうする当てもなく、現在の奥さんの実家にひょこひょこついて行った。
そこは北海道、十勝岳のふもと、非常に景色の美しいところで、行った途端、むしょうに写真が撮りたくなったそうだよ。

受験勉強に明け暮れたヤツが、突然、北海道の大自然に触れて目覚めたか!

はじめは、自然風景ばかり撮っていた。
「僕がキタキツネを撮るようになったのは、時間を持て余していたからなんですよ。」(光電子

はあ? ヒマだから、キタキツネ?

風景写真は、最高のシャッターチャンスまで、待つ時間が長いんだよ。
とても長くて、恐ろしいほど暇で、「虚無さえ感じる時の経過に耐えながら、真冬の雪景に独りでいると、さまざまな考えが頭や胸をよぎります。怖さや辛さを感じることさえあるんです。」(光電子

自分と向き合う、聖なる待ち時間。まるで「釣り」のようだ。


そこに、まっ白な景色をバックに、軽やかに登場したキタキツネ。
ひたすら待ち続ける、孤独なひとときに訪れた、運命の出会いだった。
「その瞬間、思ったんです。『彼を撮ろう!彼とともに楽しもう!』と。」(光電子

良かったな、受験勉強で感性までヤラれてなくて。

もともと、こっちの人だったんだね。
「それから、まるで遊び相手を見つけたようにキタキツネを撮り始めました。雪の上でジャンプしたり、優美なしぐさで座ったり、大きな尻尾を揺らしながらしなやかに駆けていく彼らのシルエットは、僕にとって甘美といっていいものでした。待ち時間の遊び相手だった彼らは、ついにはわざわざ探してまで撮る存在になっていきました。」(光電子

キタキツネは、まさしく彼にとって天からの使いだった。

そうだね、医者や弁護士になってたら、こんな時間、持てるわけなかったし。
キタキツネに会うこともなく、一生を終えてたね。

合格できなかったのが、不幸中の幸い。
人生、何がいいのか、わかんねえもんだな。

それを証明するかのように、彼の写真は、2016年にナショナル・ジオグラフィック「TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016」ネイチャー部門で、日本人初の1位に選ばれた。 これが、その「Fox Chase」。


2匹のキタキツネが、夕方の雪原を駆け抜けて行く・・。
いいなあ・・ピンクと白の余白が、なんとも日本画的でいい。

そして、これは、井上さんの代表作になった。

あのピンクは、編集じゃなくて自然の色か?

自然の色だよ。
冬の北国は、こういう淡いピンクの夕焼けになることがよくあるんだって。
「あれは恋の景色だから。彼らは基本的には一匹で生きる動物。二匹でいるのは子作りの季節だけなんですよ。」(光電子

そうか。恋の季節を象徴するピンクだったのか。

この写真が撮れるまで、彼は何度も同じカップルを目撃したんだ。
でも、近すぎたり、空が鉛色だったりで、シャッターを切れなかった。
しかし、今日が最後という日に「ただ一度の瞬間」が訪れた。
あまりにも幸福そうな姿で、僕が見続けてきたキタキツネを象徴する一枚と言えます。」 (光電子

神さまに与えられた、まさに奇跡のショットだったのか。

どう? キタキツネ見に、北海道に行きたくなったでしょ?
でも、今はムリだから、せめて、これ見て涼んでね。


むひょお〜〜 氷の妖精が、見えてきそう〜♪


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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