ままぴよ日記 61 「いじめ・不登校」

 孫が今年1年生になりました。優しい先生で「学校が楽しい!」と言っていたのに、その先生が心の病気になって休職してしまいました。
 その代わりに担任外の再任用のベテランの先生が教える事になりました。
 100点を取らないと居残りをさせる先生です。孫は居残りさせられるのが怖くてドキドキしながら行くようになりました。宿題も何度も見直します。
 とうとう「学校に行きたくない!」と泣き出してしまいました。
 理由を聞くと「先生が怖い話をした」というのです。何と酒鬼薔薇事件の話をして子どもを脅しているようなのです。校門に子どもの頭が置いてあったとか、連れ出して殺された子がいるとか・・・!!
 びっくりして他の保護者に聞いたら、そこの子も怖がっているとの事。
 何という事でしょう!!「すぐに校長先生に話しなさい」と言ったのですが、親はなぜか弱い立場で、「クレーマーと思われたくないので話しにくい」というのです。
 この先生は教師の仕事を何と思っているのか?この先生だけが病んでいるのか?
 次から次にそんな先生の話を聞いてがっかりしている時に2019年度のいじめや不登校の調査結果が出ました。
 いやはや・・・これは子どもの問題行動ではなく、大人社会の問題です。
(かんなまま)
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年々増えているいじめや不登校


全国の学校が把握した2019年度のいじめ・不登校の件数が発表されました。
いじめの件数は初めて60万人を超え、不登校の子どもはおよそ18万人になってどちらも過去最高を記録しました。特に小学生のいじめの増加率はこの5年で4倍に増えたそうです。

出典:NHK NEWS WEB、以下同


いじめの状況は「冷やかし、からかい悪口」が一番多く、「軽くぶつかられる」が続き、「パソコン、スマホで誹謗中傷や嫌なことをされる」がこの5年で2倍以上増加しているそうです。

そして、不登校は中学生が1.5倍に対して小学生で2.1倍。



不登校の主な要因として、最も多かったのは小中学校ともに「無気力・不安」で40%程度でしたが、続いて多かったのは小学校では「親子の関わり方」で17%、中学校では「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が17%となっています。40%の子どもが無気力?不安?日本の子どもが子どもでいられなくなっている証拠です。

このほか、小中学校と高校の暴力行為の発生件数は7万8787件で、統計を取り始めてから最も多くなりました。この5年で、中学校は減少している一方、小学校は4倍近くに増えています。




このように年々増えているいじめや不登校。

子どもたちの居場所づくりに取り組んでいる「NPO法人フリースペースたまりば」の西野博之理事長も、「いま本当に子どもたちが低年齢でストレスをためている。大人も社会も余裕がなくなり、それが全部子どもに反映しているのではないか」「従来の学校が制度疲労を起こしているということは誰もが気づいていて、集団の中で一方的に先生から教わる形は変化せざるをえない。」と言われています。

学校側もこの問題を真剣に受け止めてはいます。まずは実態を明らかにして解決しようとしているのですが、効果が表れません。

文部科学省のいじめ問題に関する基本的認識
1.弱い者をいじめる事は人間として絶対に許されないとの強い認識を持つこと
2.いじめられている子どもの立場に立った親身の指導を行うこと
3.いじめは家庭教育の在り方に大きな関わりを有していること
4.いじめの問題は、教師の児童生徒間や指導の在り方が問われる問題である事
5.家庭・学校・地域社会などのすべての関係者がそれぞれの役割を果たし、一体となって真剣に取り組むことが必要である


書いてある事はごもっともな事ばかりです。そのために道徳教育も教科として格上げされました。スクールソーシャルワーカーも配置されるようになりました(まだ市で1人くらい)。先生の研修も増えました。暴力がひどい時は警察も関わることになりました。でも事態は深刻になるばかりです。

もうこの解決策では子ども達を救えないという事ではないでしょうか。そもそも、子どもの問題行動と捉えるのではなく、大人社会の問題として取り組み、解決のための施策や行動に魂を入れなければいけないと思います。

一番困っているのは子ども達です。本来なら気にも留めないような「からかい」から発生して、意味が分からない「ハブリ」が始まり、相手の存在を否定するような「シカト」が起こっています。初めは1対1でも周りが見て見ぬふりをして、同調することで集団いじめのような構図になっていきます。


皆も心の中では「やめて!」と言いたいのですが、関わりたくないので黙ります。声に出したら自分が攻撃されるかもしれないからです。何もしなくてもこの空気感がつらい。息が詰まります。自分がいじめられているわけではないのに学校に行きたくなくなります。ましていじめられていたら学校に足が向きません。

逆に人が自分をどう思っているか気になります。目立つことで、いじめのターゲットになりたくないからひたすら同調します。でもそんな自分が嫌いです。だって自分に嘘をついているのを知っているからです。だから自由にしている人を見るとイラっとします。子ども達は「ずるい」という言葉をつかって攻撃したくなります。

学校が目指す「自由に自分で考えて表現できる子どもに育てる」とは程遠い環境です。誰もそんなクラスを望んでいないのに・・・。

2016年、当時中学2年生だった紙谷桃歌さんが「日本のいじめ対策は間違っている」と声をあげてくれました。この文章は当時の内閣総理大臣賞・旭川地方法務局長賞に選ばれました。

【最優秀賞】旭川地方法務局長賞

日本のいじめ対策は間違っている
紙谷 桃歌

 今、日本の学校や様々な所で問題となっている「いじめ」。日本は、いじめを防止するために様々な対策を実施しています。例えば、学校側はカウンセラーの協力を得ながらいじめを受けた生徒を継続的に支援する、いじめを行った生徒には別の教室で授業を受けさせる、道徳教育の充実、などのものです。しかし、これらは本当にいじめ防止の根本的解決につながっているのでしょうか。
 そもそも日本のいじめの一番の問題点は、長期間にわたって続き、陰湿化しやすい点だと思います。私は小学校五年生の頃までドイツに住んでいて、ドイツで起きていたいじめも目の当たりにしましたが、日本とは違って、暴力的な代わりに少しも長続きせず、ほとんどが一日で終わってしまうものばかりでした。では、なぜ日本のいじめは長期化しやすいのでしょうか。
 それには、二つの原因があると思います。一つ目は、日本の根本的ないじめのあり方にあります。例えば、ドイツで「いじめ」といったら、大抵校庭などのひらけた場所で下級生など自分より弱そうな相手や、気に食わない相手に暴力を加えることを指します。この種のいじめは暴力的で、比較的目に付きやすいので、すぐに先生の指導が入り、長続きすることはほとんどありません。一方日本で「いじめ」といったら、暴力よりもどちらかといえば嫌がらせや集団無視などの精神的苦痛を与える行為を指します。このやり方だと、表面上は何もなさそうに見えるので、周りからは気付かれにくく、結果、先生方など学校側の対処も遅れてしまいいじめが長続きしやすくなってしまいます。
 二つ目は、周りの見ている人達の反応です。私も一、二度、ドイツで上級生にいじめられたことがあったのですが、どの時も必ずそばにいた同級生や知り合いが味方になってくれて、協力していじめっ子を追い返していました。私の経験に限らず、いじめを見たら必ず周りの人達が止めに入ったり先生を呼んだりなどしていました。しかし、私が通っていた日本の学校で一度いじめが起きた時、気の毒に思いながらも誰も助けようとはせず、むしろどこか逆らってはいけないような雰囲気が漂っていました。
 つまり、いじめのストッパーとなるものがなく、どんどんエスカレートしていって、長期化してしまうのです。ではどうすれば、「いじめのストッパー」になれるのか。
 これは私個人の考えですが、「いじめのストッパー」になるには必要不可欠な三つの要素があると思います。一つ目は、正しい善悪の判断ができること。二つ目は、自分の意見を持つこと。そして三つ目は、他人の意見を尊重すること。日本人はこの三つの中の一つ目と三つ目はとても良くできていると思うのですが、二つ目の「自分の意見を持つ」に関しては意識できていない人が多い気がします。
 日本人は周りに合わせることを良しとするので、協調性にとても優れているのですが、いじめの場合、この特徴は悪い方向に行きがちです。いじめは大抵一人対大勢なので、周りの人達は自然と人数の多いいじめる側についてしまうのです。こういう場合には、自分の意見を持ち、周りに流されずきちんと主張することが重要になります。私はこれこそが今の日本人が「いじめのストッパー」になるために最も必要なことだと思います。
 私が通っていたドイツの学校では、クラスの誰もが最近起きた問題・もめごとを書き込めるノートがあり、毎週金曜日の最後の授業で行われる学級会議でそれを開き、書かれている内容の一つ一つを全員で話し合いながら解決していく、という活動がありました。
 日本でも、こういった活動を取り入れてみてはどうでしょう。一つの問題に対して真剣にそれぞれの意見を交流し、全員で良い方向に進めようとする。このような場をつくることで正しい善悪の判断、自分の意見を持つ、他人の意見を尊重するという能力を養うことができると思います。
 今の日本のいじめ防止対策は、いじめを受けた人の救済を重視していますが、いじめを外野から見ていた周りの人たちには、あまり目を向けていない気がします。これでは、いじめを根本的に撲滅することにはつながりません。もっと生徒に自分の意見を持ち、主張させる機会を増やし、基本的人権について自分なりの意見を持たせるべきです。それが、私達が将来自分達の基本的人権を守っていくための力になると思います


立派です!自分の意見をきちんと書いてくれました。これは自分の体験として比べるものがあった事と、子どもの時から自分の考えをきちんと伝える教育を受けてきたから書けたのでしょう。


さて、息子が暮らすフィンランドの話です。フィンランド人はシャイで気質が日本人とよく似ているそうです。でも日本と違うのは、人材こそが最高の資産だと国民が認識しているところです。そのために自分の可能性を高めて、希望の仕事やなりたい大人になるために役立つ優れた教育を受ける権利があると思っているし、そういう施策が進められています。

いじめ問題も真剣に受け止めてトゥルク大学が開発したKiVaプログラムを2009年から本格的に各地の小中学校に導入していったそうです。このKiVaのプログラムは、傍観者をなくすことこそが、いじめの拡大を防ぐと位置づけられています。

KiVaには、フィンランド語で「楽しい、心地よい」との意味があり、プログラムは、月に1回90分間、年10回行う授業と、合間に行うパソコンのゲームで構成されているそうです。

他に、いじめが起きた際にどう行動したらよいかを学ぶロールプレイングや話し合いをして、いじめられている子に声を掛けることや味方になることの大切さを学習するそうです。

まさに、自分は尊重される存在であるという視点に立って、子ども達の気持ちをみんなで疑似体験しながら学ぶプログラムです。その際にお互いが自分の気持ちを素直に表現します。気持ちに善悪はないので、お互いの気持ちを理解した上で、どうしたらみんなが気持ちよくなるのかを話し合うのです。色々なケースを何度も体験して共有していくうちに、お互いを尊重し合える社会性が育つのでしょう。

このようにいじめに関しては各国がそれぞれの取り組みをしていますが、追い打ちをかけるように世界中でメディアを介したいじめが増えています。SNS上で、会ったこともない人が無責任な書き込みをして煽り、スクショしては拡散していきます。この書き込みはネット上に残り続けるのでデジタルタツーと呼ばれています。つまりずっと傷つけ続けるのです。

ネットに関しては、「安易に子どもに与えたらどうなるのか?」を考えるよりも「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の状態です。まさに私達はゆでガエル!


特に子ども達は自分の情報がネット上に晒されて、自分が選んだと思っている情報がAIに操作された情報で、自分ではない人に作りあげられていく怖さを知る由もありません。未来は、もはや自分でいる事の方が難しくなっているのかもしれません。

さて、日本の子ども達は居心地が悪い場を変える力が育っていません。長年、自分で考えるより正しい答えに導かれる教育を受けてきたので、それに反対するような意見を言うのが苦手です。

でも、コロナ禍で多様なニーズに合った学びを保障しなければいけないこともわかってきました。あまりにも多くの生徒がいじめで傷つき、学校に行けなくなっています。もう一斉授業スタイルの学校だけが学びの場とは言えなくなってきていますし、対処療法の対策では間に合わないのではないでしょうか?こうなったら教育制度から変える必要があると感じます。

Author:Nattuwm[CC BY-SA]

同時に、大人の子どもに対する意識も変えなければいけません。子どもは愛されて、必要な環境を与えられたら自ら伸びていく種を宿しています。主役は子ども本人!大人は指導者ではなくサポーターです。

そして、AIに支配される前に、未知なる自分を磨く方法も伝えたい。その究極の教材が東洋医学セミナーだと思っています。これをみんなが学んだら人という概念が覆されると思います。夢のようですが、目指す方向が与えられているのは救いです。

でも、始めるのは足元から。まずは生まれてきた子どもを愛で包んであげたい。子どもを愛しながら、同時に自分の傷も癒してあげればいい。やがてその子の幸せと自分の幸せが一体であることに気づき、周りの世界も一体であることを知る。

結局、愛をはぐくみながら生きていたらすべてが自然にうまくいくような気がします。あれれ、何を言いたかったのだろう。そう、愛があればいじめも不登校も「それ、何?」という事になるのです。


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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