ままぴよ日記 62 「少子化対策は若者支援」

 昨年生まれた子どもは過去最少の8万5千人。今年はコロナの影響なのか更に減り7万台になる予想です。その上、コロナ禍で就職難。学生ローンが重くのしかかり、夢破れて非正規雇用で働く若い世代。

 40年前、麻雀やパチンコばかりしていても大学を卒業すれば必ず就職できていた時代とは比較にならないくらい悲惨な状況です。仕事をしたい!結婚して家庭を作りたい!子どもを作りたい!と思うのは贅沢なのでしょうか?子どもや若者の無力感はそのまま日本の未来の姿です。胸が詰まります。

 今回は珍しく政治問題に切り込みます。だって、黙っていられなくなりました。
(かんなまま)
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今の子育て支援だけでは解決しない問題


さわやかな晴天が続き、私達の子育て広場は大勢の親子でにぎわっています。「家に居たら息が詰まるから」と、広場に訪れるママも多いのです。密にならないように気を付けながらお外遊びに誘います。ママ達も安心してママ友やスタッフと色々な話をしてくれます。実は、そんなママ達の本音トークの中に笑えない現状が見え隠れしています。


その中には今の子育て支援だけでは解決しない問題がたくさんあります。経済的に困っている世帯が増えました。「夫が失業した」という話をよく耳にします。そして、コロナの影響で夫の給料が下がったので、早く働いてくれと頼まれて産休返上で働きに出るママもいます。

10代20代のシングルマザーや、不妊症でやっと授かった高齢出産のママも増えました。40代で初産のママも珍しくありません。仕事人間だったママは子育てモードになるのが難しいようです。子育ても管理、評価、更に向上を目指します。発達障害の疑いがあり見守りが必要な親子も増えました。

これは子どもがいる人の現状です。その他に、就職できないで引きこもりになった人、仕事が安定しなくて結婚したくてもできない人、子どもが欲しくてもできない人が増えてきていることを考えたら、若者のSOSは一個人の問題ではなく、日本の将来を左右する社会問題なのです。

本来なら家庭生活も仕事も一番脂がのっている世代なのですが・・・この苦しさは何なのでしょう。


現政権のいう少子化対策、その驚きの財源


残念ながら、政策を決める政治家は若者や子育ての生活感をわかっていません。一方、ママ達の関心ごとは日常の「赤ちゃんのうんちが出ない」「今日も子どもを怒ってしまった」「お給料日まであと5日をどうしよう?」というものです。そういう私も、子育て中はテレビの国会中継を見る余裕もなく目の前のことで精いっぱいでした。政治の世界とは次元の違うところで生活しているので、誰に投票したらいいのかさえ分かりません。



ところが、こんなに事態が深刻になったら、政治の世界に無関心ではいられません。誰がどんな政権を取ってどんなことをしようとしているのか?知らないうちに私達の生活を脅かすような事態が進行しているのです。

例えば、菅総理大臣は所信表明で不妊治療、待機児童解消などの少子化対策に力を入れると明言しました。それは喜ばしい事ですが、その財源を聞いてひっくりかえりました。なんと、「児童手当の特例給付を廃止して、待機児童解消策に充てる」というのです。ちなみに、待機児童解消の財源には1600億円が必要で、児童手当の特例給付金を廃止すると1800億円を捻出できるそうです。

児童手当は子どもが中学生まで一律にもらえる手当です。児童手当の額は以下の表のとおりですが、2人の親のどちらかの所得が所得制限限度額以上の場合は、特例給付として月額一律5000円が支給されています。ややこしいのですが、妻も働いて扶養家族でない場合、子どもが1人の場合、親のどちらか高い方が660万円以上が限度額になります。


その特例給付を廃止して待機児童解消をはかろうというものです。更に今回からは夫婦合算して年収900万以上の世帯が対象なので、なんと子育て世帯の4分の1が支援を打ち切られることになります。

中高所得層は高校無償化の対象外でもあり、大学の貸与奨学金も借りられないなど、全く子育て支援の対象となりません。年収はあっても個人的に介護や病気の家族を抱えているかもしれません。仕事上の問題で、子どもの学費に回せない家族もいます。親の所得による線引きで支援が切り捨てられて進学をあきらめる子どもや若者が出てくるという事です。

つまり、日本の中高所得層にとっては、子どもを産んで稼げば稼ぐほど支援から切り捨てられていく制度なのです。

実は、平成29年4月1日時点で待機児童が50人以上いる市区町村は全体の7%です。同じ子育て支援の給付金を全国一律にカットして、一部の都市の待機児童対策にすること自体が子育て世代を大切にしていないと言わざるを得ません。

詳しくは参考サイトをご覧ください。
「いま話題!児童手当の特例給付廃止検討について、分かりやすく説明してみた!」
「児童手当の特例給付廃止検討から伝わってくるメッセージ」



違和感を覚える日本の子育て支援


日本大学教授であり、内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議構成員の未富芳さんも「日本の低所得層やひとり親は子どもを産み育てるほど生活が苦しくなり、中高所得層にとっても稼げば稼ぐほど支援から切り捨てられていく状況こそが子育て罰大国・日本の実態なのです」と言われています。(※子育て罰とは、桜井啓太さん(貧困研究、社会福祉学)によって指摘されてきた、子育て世帯にあまりに厳しい国である日本の状況を批判する概念です。)(Yahoo!JAPANニュース


ところで、日本の総支出の中で子育て支援に充てているのはどのくらいなのでしょう?データが古いのですが、内閣府「社会全体の子育て費用に関する調査研究(2005年)によりますと、2002年子ども達に対する社会全体の子育て費用総額は38.5兆円であり、そのうち公費負担部分の規模は20兆円。

対GDP比で約4.0%です。欧米主要国で全く同じ研究結果はないものの、OECDのデータ等(2001年)によると、家族政策支出と教育費の公費負担支出の対GDP比は、スウェーデン11.2%、フランス8.5%、イギリス6.7%、ドイツ6.5%、アメリカ6.0%、日本4.2%です。

一方、家庭内で親が行う育児活動は金銭の支払が行われない「無償の労働」です。これを「家庭内育児活動費用」として、仮にパート労働者の平均賃金を基にコスト換算すると、年間8.1兆円の規模となるそうです。(あの~、実は24時間気を抜けない労働なのですが、それは加味されない)

下の図によると、0~5歳では無償の家庭内育児活動費用が大きく、1人あたり86.5万円かかっている計算となるそうです。家庭内育児活動費用のうち、9割は女性(妻)の労働です。

年齢(4段階)別子ども1人あたりの子育て費用における公費・私費負担の内訳(家庭内育児活動費用を含む場合、18歳未満)

この調査の結果、
女性にとっては、結婚・出産により、家庭内育児活動の負担が集中することに加え、仕事をやめたことに伴う逸失利益の大きさが子育ての負担感を増し、それが結婚や出産をためらわせ、少子化に影響を与えていると考えられる。

このため、逸失利益を小さくするために、仕事と子育ての両立支援や女性の再就職支援の取組の充実が必要である。さらに、現実に乳幼児期の子育ての多くを担っている家庭内育児に対して、どのような社会的支援策を進めていくのか検討が必要である。

と結んでいます。

むむむ・・・。この調査の意図は「女性は結婚して子どもを産んだら子育ての負担感と、仕事を辞めたことによる負担感が増す。そして仕事を続けていたら、本来利益を得るはずだったものが損をしたことにもなるため、少子化対策として、仕事と子育ての両立支援と再就職支援をする必要がある。」と言いたいのだろうか?

子育ては社会の損失?子育てに逸失利益という言葉をつかう?経済中心の概念に違和感を覚えます。

「社会が真摯に若者支援と子育て支援をすることによって自分を活かして社会貢献できる人材が増えます。だってやる気いっぱいです。そして、社会も家族も子育てを大切にすることで、本来は得られなかった自己の成長と愛が増えるのですと言いたいです。

このように、社会が子育てをどうとらえるかで全く施策が変わります。そもそも日本は、女性の国会議員比率(衆院)が10.2%で、193か国中165位です(我が町の女性議員は1人!)。

これじゃあ少子化対策の必要性を声高に言いながら、実態を知ろうともせず目先の保育園確保に走るのも無理はありません。「少子化対策は、子どもを子どもらしく育て、若者を元気にして、子育てに喜びを持てるような政策を作る事!」なんて有言実行してほしいのになあ。


そのためには社会全体の意識と仕組みを変える抜本的な改革をしなければいけません。11月4日の衆議院の予算委員会で逢坂誠二議員と菅総理大臣との質疑応答がまさにその部分に切り込んでくれました。

Author:内閣官房内閣官房[CC BY]
画像はシャンティ・フーラが挿入
逢坂誠二議員

逢坂誠二議員
(中略)...年収が高ければ婚姻率が高い。年収が低ければ結婚率は低いんです。(中略)...正規の方は、約6割結婚できる。でも非正規の方は、15%程度しか結婚できない。(中略)...若者の雇用をどう安定させるか。それから若者の収入をどうやって将来見通しのあるものにしていくかというのが少子化問題では非常に大事な取り組みになってくると私は思っています。(中略)...非正規を増やすことは、少子化のアクセルを踏むことになりますから、非正規を増やさない、なんとかしたい、そういう思いをお持ちでしょうか?
(中略)
小規模企業になると(中略)...8割くらいを人件費に回すわけですよ。だから総理が旗を振って、非正規を正規にしましょう、賃金上げましょう、と言っても、(中略)...なかなか簡単にできない。だからこそ、私は政府の直接支援が必要だと思うんですね。とにかく若者を応援する、若者の収入を見通しあるものにする。
(中略)
収入の少ない若者は、例えば50万円年収増やしたとすれば、その50万円を使うわけですよ。「限界消費性向が高い」と言う言い方をしますが、消費に回る、経済にすぐ回るんですね。若者を応援したお金は回るんですね。(中略)...収入が多い人(中略)...に50万円増やしても、それは消費には回らない(中略)...若者を応援して年収が増えると、社会保障の基盤が安定化するんです。(中略)...総理、いかがですか?」
(中略)
菅総理
(中略)...非正規雇用の若者の正社員化の支援。そうしたことのなかで安定就労にむけて、就職支援だとか、職場定着だとか、若者の支援、しっかり政府として取り組んでいきたいとおもいます。」
(以下略)


「是非!総理、よろしくお願いします。」と、結んだわけですが、本当に有言実行してほしいものです。


少子化対策は田舎から始めよう!


人口6万人の我が町でも出生数が5年間で100人減りました。近隣の市町村が保育料や医療費の独自の補助を打ち出してから転出する世帯が増えました。親にとって目に見える経済的支援は大きいようです。

でも、若者を雇用する大きな企業がない、若者が集まる大学もない我が町。歳入を増やす当てもなく、市が独自で子育てを経済的に支援する体力がないようです。そういう市町村がたくさんあります。これからは、国の直接支援として、これから結婚して家庭を築くだろう全ての若者に教育と雇用を保証する方向へシフトしていってほしいものです。

私達は、子育て家族の身近にいるものとして、ママ達に寄り添って、子育て家族が安心して暮らせるようにソフト面で力を入れていきたいと思います。

新型コロナの影響でリモートワークも可能になりました。何も都会に住む必要はありません。幸い我が町は待機児童問題もありません。気候に恵まれて海の幸、畑の幸があります。驚くほど物価が安いので大都市のベッドタウンとしては最適だと思います。

「お~い!我が町は、お金はないけど、自然と食材と人材が豊かだよ~!おいで、おいで~!」少子化対策は田舎から始めよう!

Author:663highland[CC BY-SA]


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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