ぴょんぴょんの「〈混合診療〉まっしぐら」 〜不妊治療の保険適応は、何のためか?

首相就任早々、不妊治療の保険適応を訴えた菅首相。
それほどにまで、不妊で苦しむ人々を気にかけていたのか、
なんて、思うわけねいよね。
なんか、ヘン? と思ったら、またあの方の影がチラついている。
(ぴょんぴょん)
————————————————————————
ぴょんぴょんの「〈混合診療〉まっしぐら」 〜不妊治療の保険適応は、何のためか?

増え続ける不妊治療


スガーリン、就任早々、不妊治療を保険適用させるって言い出したけど、「大歓迎!」「もっと早くやってほしかった」って声が多いらしいよ。


一方、おれは「なんで、このタイミング?!」

それだけ、少子化が危機的だってことだよ。

ハア?
ここまでおれたちを、化学薬品・農薬・添加物漬けにして?
放射能汚染水を海に垂れ流して、世界中に汚染を広げようとしてて?
人口削減、人類総病人化を目ざすヤツらが、いきなりのUターン? 
おら、信じねえ!!

だとしたら、スガーリンは、厚生省に言わされてるだけかな?

厚生省役人の天下りのためか?



とは言え、実際に不妊は深刻で、不妊治療も増えてるよ。
2018年に体外受精で生まれた子どもは5万6979人で、過去最多だった。
朝日新聞


そんなにいるんか?

でも、保険適応になるまでには、たくさんの課題があるみたい。
だって、体外受精の金額も、1回30万~100万円とか巾があるし。

自由診療は、病院の言い値だからな。
トロやアワビみたいに「時価」だから、保険点数を決めるのはかなり難しいだろう。


でも、保険適応になって、助成金がもらえなくなるのを心配する声もあるよ。

へえ、不妊治療に助成金が出てたのか?

そう、でも条件があってね。
妻が44才未満、夫婦の所得が730万円未満なら、体外受精と顕微受精1回につき、15万円(初回は30万円)を3回まで受けられる。(朝日新聞

所得が1円でも増えると、もらえねえんだな。

助成金は、予算がなくなったら終わりだし。
その点、保険適用されたら、そういう心配もなくなるし、助かる人は多いと思うよ。(朝日新聞

う〜む、いくら保険が効くからって、気軽に何度も受ける治療じゃねえぞ。
不妊治療で大量に使われるホルモン剤で、心身ボロボロになるヤツもいるからな。


毎年「過去最高」を記録し続ける医療費


そうだよねえ、少子化対策なら、もっと抜本的にやらないとね。
なんで若いうちに結婚できないの? 家を持てないの?
結婚しても、子どもを作る余裕がないの?
真っ先に雇用の仕方を変えないとねえ。

それよか、スガーリン、消費税なくした方が、話は早いぞ!

耳、塞いでるよ。
だけど、おかしいと思わない?
社会保険も国民保険も、すでにアップアップなんでしょ?
なのに、不妊治療の治療費なんて、出せるんだろか?

そうだな、どう考えても、十分におかしい。

自民党議員連盟の試算によれば、不妊治療を全面的に保険適用すると、年約1120億円の負担増になるって。(東京新聞

それ、おれたちの保険料や税金から出すの?


そして、切実な現場の声、「苦しいんです、健保組合」。けんぽれん

健保組合、つまり健康保険組合って言や、おカネ持ちだったじゃねえか。

たしかに、大企業の社員や家族が加入してるからね。
でも今は「健保組合では、積立金を取り崩したり保険料を引き上げたりしてなんとか運営していますが、すでに限界を超えており、健保組合制度の存続にかかわる深刻な問題となっています。」(けんぽれん

そうかあ、大企業も派遣社員が増えて、保険料、集まらないんだな。

それに、お給料も減ってるから、保険料も減るし。
「団塊の世代」が75歳以上になる、2022年がヤバイと言われてたけど、今年は新型コロナでしょ? 来年は、たくさんの組合が潰れるんじゃない?

まさに、アップアップだなあ。

2016年のAERAで、厚労省幹部がこう言ってるよ。
「社会保障財政も医療財政も、皆保険制度も破綻の瀬戸際です。・・国庫支出金に支えられながら何とかやってるが、実際は赤字続きで、すでにシステムとしては破綻している。」AERA

なんで、そんな事態になったんだ? 

原因は、毎年「過去最高」を記録し続ける、医療費だね。
2018年度の医療費も、43.6兆円、過去最高だって!(厚生労働省

そらなあ、日本人はちょっと何かあると、すぐに病院クリニックに駆け込むからだよ。
健康保険はある意味、おれたちを病院信仰、薬信仰にさせて、人任せにしちまった。
一方、病院信者、薬信者のおかげで、病院は潤ってきた。


たしかにそうかもね。
患者さんに必要な(たまに必要以上の?)治療や検査をやれるのも、3割負担だからだね。

日本の精神病院の入院日数が、よその国に比べて異常に長えのも、3割負担だから。

それ、ユリシスさんの記事でしょ。

もし、全額払わされるとしたら、気軽に駆け込めねえし、長く入院もできねえ。
つまりどっちも、やりたい放題やってきたツケが回ったんだな。

とにかく、健康保険の内情は火の車。

やっぱし、日本人の「病気ノイローゼ」が原因か?

いやいや、それよりも、高齢化だよ。
医療費の大部分が、高齢者の慢性病や延命治療に充てられてるからね。

う〜ん、かと言って「高齢者に延命措置をするな」とは言えねえしな。

たとえば、胃ろうに公的保険を充てるのはおかしい、民間保険や自己負担でカバーすべきだって意味じゃない?

もし、胃ろうが自費になったら、老人ホームの景色も変わるだろうな。


だけど、医療費が増えた原因は、老人だけじゃない。
先端医療と呼ばれる代物も、医療費が増えた一因になっているよ。
現代ビジネス

医学の進歩? いや複雑化だろ? ホントにそれいるの? 効くの?

高額な新薬も、続々と出てくるしね。
2017年に登場した、がん治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)。
出始めの頃は、1回約73万円、年間で3000万円以上だった。
現代ビジネス


オプジーボは、保険適応になったんか?

2018年10月に、保険適応になってるよ。

ウオオ! そりゃ、健康保険を圧迫するわ。

ちょっと、ちょっと!信じられる?
2019年に病院にかかった人の、1か月当たりの医療費の最高額が、4037万円だって。GemMed

1ヶ月で4037万円もかかった? 
いったい、どんな治療されたんだよ。
だが待てよ、3割負担だから、本人負担も1200万円? 
うわあ、うかつに病気になれねえ!!

問題は、それだけのおカネをかけて、その人がちゃんと良くなったかどうかだよ。

不妊治療みたいな高額の治療や高額の薬を、なんで保険適用にするんだろ?
健康保険は、カネがねえのに?
まさか、よってたかって、国民皆保険制度をぶっ潰すつもりか?


なんのために?

タイヘンだ〜! 保険制度が破綻するぞお〜!
保険適応を減らして、自己負担の〈自由診療〉を増やさなくちゃ〜
??


『混合診療の解禁』を提唱し続けて来た人物


そう言えば、不妊治療の保険適応にも、こんな意見があった。
「混合診療を解禁し、最低限の医療を保険で保障して、オプション部分は自費や民間保険で賄う二段構えが良いと考えます。」(朝日新聞

〈混合診療〉とは、〈保険診療〉と〈自由診療〉を同時に行う診療のこと。
だが、現時点では一部の例外を除いて、〈混合診療〉は禁じられている。
〈保険診療〉と〈自由診療〉を同時に受けると、保険は効かなくて、両方の診療にかかった費用を、全額、患者が支払わなければならない。
でも、〈混合診療〉が解禁になったら、〈保険診療〉分は3割だから安くすむ。

国民皆保険制度を壊して、〈混合診療〉解禁の方向に向けようとしてる?

もし〈混合診療〉が解禁になったら、デメリットはなんだ?

風邪や頭痛・胸焼けなどの「軽医療」は、ほぼ確実に〈保険診療〉から削除される。(明日の医療

おれは困らねえが、ドラッグストアに駆け込むヤツが増えそうだな。


自力で治す人も増えてくると思うよ。
問題は、医療が高額になると、受けられる人と受けられない人が出ること。

カネがなくて、助からないヤツが出るかもしれない。

そう、今までみたいに、みんな平等の医療じゃなくなるんだ。
それに、おカネ持ち相手の病院には優秀な医師が集まって、庶民の病院は?

ヤブが集まる? つまり、医療にも格差ができるんだな。

「正に格差であり、健康や寿命が保有する金額で決まるという恐ろしい未来が生まれる前兆のようにも感じる。」(明日の医療

なるほど、医師会が〈混合診療〉に反対する理由はここか。
高額医療による国民皆保険の破壊、スガーリンの不妊治療・保険適応宣言、
誰が何のために進めたいのかは透けて見えてくるように思う。」(明日の医療

誰が?

何を突き詰めても、必ずこの名に行き当たる。

もしかして、竹中平蔵氏?

Author:World Economic Forum[CC BY-SA]
竹中平蔵氏

「今さら説明するまでもなく竹中氏は、小泉政権時代より『混合診療の解禁』『医療の自由化』を提唱し続けて来た人物である。
徹底的にマスコミを操作し、医療者・医療機関への不信感を煽り立て、経済界や財務省が予てから悲願としていた医療費の削減を成し遂げた。」(明日の医療

そう言えば竹中氏って、スガーリン内閣のブレーンになってるよ。

ちゃっかり、ハマりおってからに。
しかし、過去にこういうことがあった。
2013年の国際コンファレンスで、竹中氏は、日本には規制緩和が必要で、政府は民間の自由度を上げることを最優先にすべきだと、熱く語った。
しかし、その言に対して、コロンビア大学教授ジェフリー・サックスと、ノーベル経済学賞のジョセフ・スティグリッツの両氏は「米国の規制緩和は失敗した」 とバッサリ!
明日の医療

竹中氏の好きな「規制緩和」が、否定された。

サックス氏「米国では規制緩和で民間にリーダーシップを与えた結果が強力な利益団体とロビイストを生み出した。現在の米国医療はムダが多く、入院医療・医薬品価格共に高額であり破滅している」。
スティグリッツ氏「米国は規制緩和に失敗し、貧しい人々からの搾取が続いている。民間の首を絞めてはいけないが、市場には失敗があり、政府には成すべき役割がある」。
明日の医療

あ〜あ、こういうありがたい警告も、竹中氏の耳には念仏かあ。


郵政も民営化した、水道も、林業も、農業も、教育も、カネに変えるメドがついた。
あと、めぼしいものと言えば、医療くらいだ。
混合診療の導入、公的保険の縮小、さらに株式会社の病院経営に向けて、着々と前進する竹中平蔵氏であった。

めでたくない、めでたくない・・。

国民皆保険の壁に守られてきた、日本の医療。
それをぶっ壊して、カネに変えたい連中。

崩れかけた国民皆保険への最後の一撃が、不妊治療の保険適応にならないように!




あまりにも盲点だった「混合診療」、気が収まらず舞台裏に駆けつけました。
(まのじ)

ぺり:ぺりどっと、ぴょん:ぴょんぴょん先生、まのじ
ぺり :スガーリンが不妊治療を保険適用させるって言い出した理由が、本記事ですごく明瞭になり、とてもためになりました。

ぴょん:私も、健康保険からおカネをいただいていたのに、保険のこと何もわかってませんでした。
実際には保険診療は制約が多く、いらない処方や検査をするほどもうかり、良心的にやるほどソンをする印象で、クリニックをたたむ瞬間まで混合診療を望んでいたのですが、その根底にあるものを知った今、なんで医師会が必死に反対していたのか、やっと理解することができました。

ぺり :「胃ろう」って言葉、知らなかったんです。

ぴょん:老人病院は、これで儲かってるんです。
食べられなくなった本人の意志も確認しないで、家族が勝手に頼むんですよ。年金のために。チューブを入れるのに6万円、定期的に取り替えるたびに2000円入りますから。
保険を利用した、胃ろうビジネスです。

まのじ:混合診療の一番の問題は、日本の宝のような「国民皆保険」という前提が壊れてしまって、お金があれば良質な医療が受けられるし、お金のあるところに優秀な人材が集まってしまう、ということなのですね。

ぴょん:そうですね、たぶん、アメリカみたいになるんじゃないですか。庶民の病院はつねに混雑していて、医者も疲れ果てて、満足に診てもらえない。かたや、オーシャンビューの入院室では、美人看護師の手厚い看護。
そういう世界を作りたいんでしょうね。

Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

Comments are closed.