ぴょんぴょんの「質問に答える」 〜野口晴哉の考え方

 野口晴哉が設立した、整体協会の月刊誌「全生」には、「質問に答える」というシリーズがあります。それが、なかなかにおもしろいので、いくつか抜粋してみました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「質問に答える」 〜野口晴哉の考え方


教育の前提として、人間の動きをていねいに観察し、そこから出発して導いていくのでなかったら、教育は単なる、知識の着物になってしまう。あくまで、人の本性を伸ばすことを考えねばならぬ。
(月刊全生 昭和57年3月号)


質問:小学校2年生の男子。学校の成績もよく、自動車についてとても詳しいが、口にしまりがなく、よくよだれを垂らし、食事の時はガツガツして、手づかみで食べる。この子の指導法を教えてほしい。
(月刊全生 昭和57年3月号)

頭はいいのに、ポカンと口開けて、よだれを垂らすって?

生理的な「よだれ」は1〜3歳までだから、この子はどっかおかしい。

体が原因かな? 胃でも弱いんだろうか?

いや、体じゃなくて、心の問題だと野口晴哉は言う。
赤ん坊でもないのに、よだれを垂らすのは、心の中に何か抑えてるものがあって、感情に出せなくなっていると言うんだ。
「子どもの感情を抑えつける度合いとよだれの量とは、かなり密接な関連を持っているのです。・・生理的な異常がなければ、これは感情の中に抑圧があるのです。一度感情にまで運んできてしまった心を抑えるという傾向が、よだれの分泌を多くしているのです。」(月刊全生 昭和57年3月号)  

まさか、よだれが感情に関係していたとは・・。

そして、発散できない感情が積み重なると、どこかで突然、爆発する。

そっか! それが「ガツガツ食べる」「手づかみで食べる」に現れているんだね。

対処法だが、貯めこんだ感情を大そうじしなければいけない。
思いっきり泣かせる、怒らせるなりして、相手の中にあるものを全部吐き出させればいい。(月刊全生 昭和57年3月号)



質問:貧乏ゆすりを止められない子ども。
止めてはいけないと思いつつ、気になっている。
(月刊全生 昭和57年4月号)

ぼくも、時々貧乏ゆすりしちゃうけど、無意識に出ちゃうんだよね。


野口氏の答え「放っておいても治ります。」

やっぱり、別に気にしないでもいいんだね。

集中した気持ちが抜けなくなると、貧乏ゆすりを始めるそうだ。
「『これをやって、それがすんだらこれをやる。それが終わったらこれをやろう』というように、一つ一つ段階を付けてやるように教えれば、貧乏ゆすりはしなくなります。」(月刊全生 昭和57年4月号)

「これ以上集中するのは止めなさい」って、体のサインなのか。

ただ、貧乏ゆすりは背骨か腰椎と関係あると言う。
意志の弱い人は背骨が悪いし、決断のできない人は腰が悪い。
「腰が少しゆがんで、決断しようとするがまだ決断できない、というようなときに、貧乏ゆすりが出てくる。だから、貧乏ゆすりはその調整だとみなすべきで、これは無理に止めさせてはいけません。」(月刊全生 昭和57年4月号)

貧乏ゆすりは、腰のゆがみを治すための自発運動だったんだ。

だから、止めるのではなく腰を整体すれば、決断しやすくなるから、貧乏ゆすりもなくなると言っている。


質問:小学1年の男の末っ子。毎日の寝小便に困っている。今年の夏休み、20日くらい田舎へ帰った間は全くもらさなかったのに、家に帰って10日で元に戻ってしまった。
(月刊全生 昭和57年3月号)

寝小便で悩んでる親子は、けっこう多いよね。
夜中にアラームで起こして、トイレに行かせたり。
親子ともども、寝不足で大変だって。


病院受診すれば、抗利尿ホルモンとか、頻尿の年寄りが飲む薬で、尿を止めるらしい。

尿を止めたら、良くないんじゃない?

野口氏の答「これは、田舎に行っていた20日間、なぜ寝小便をしなかったのか、そこにここの問題のカギがあるのです。きっと田舎にいた20日間の生活は、運動量、エネルギーの発散する量が多かったのだと思います。」(月刊全生 昭和57年3月号)  

まるで、名探偵の推理だね。
でも、運動量、エネルギー発散量が、なんでおねしょと関係あるんだろう?

性欲だ。

え?

子どもは寝小便で、性欲を満たすらしい。

つまり、おねしょは性欲の一種ってこと?

性欲は、尿意に転換される。大人でも性欲を抑えるとトイレが近くなる。
夜、ウトウトしながら、布団の上でシャーッとやる快感が、性欲発散に近いらしい。

かと言って、子どもは性欲をどうやって処理できるの?

処理する前に、性欲の元、過剰エネルギーを放出させればいい。

そうか! 
田舎にいる間は外で遊んだり、たくさん歩いたりして、エネルギーを消耗した。
だから、おねしょしなかったんだ。

田舎の食事も良かったんだろう。野菜中心で、カロリーが抑えられて。
だから、野口氏は親にこうアドバイスした。
「この子に粗食を与え、夕方、人混みを長く歩かせて、その晩観察してみてください。おそらく寝小便はしないだろうと思います。」(月刊全生 昭和57年3月号) 

うわあ、そんなアドバイス、ふつう思いつかないね。

天才だろ? また、こうも言った。
子どもに、何の責任もなくブラブラさせないで、責任を与えるとエネルギーが消耗できる。
また、理想や希望を持たせると、性エネルギーが大脳昇華して、おねしょしなくなる。

体癖で言う、1種的な現象を起こさせるってことか。
これまた、よそじゃ絶対に聞けない、ユニークな解答だね。


質問:幼稚園でお茶を教えている先生。2名の男子がうまくできなくて困っている。
(月刊全生 昭和60年6月号)

幼稚園児に、じっとさせるのはムリじゃないの?


だが、お茶は全ての動作の基本だから、子どもに教える意味はあるな。
子どもがうまくできない原因は「余分な気取り」だと、野口氏は指摘する。

子どもが、気取る?

そう。気取りの原因は、たいていが性欲だと言う。

ええっ?! ここでもまた、性欲?

おめえだって、彼女の前だと気取るだろ?

言われてみれば、たしかにそうだけど、幼稚園児だよ。

性欲は生きる根本エネルギーだから、どんなに幼くても持ってるのさ。
だが、どの子でも、気取りが表に出てくるわけじゃない。
おそらく、「余分な気取り」は親から来ていると指摘している。

やっぱ、原因は親なのか。

子どもの失敗は「できないかもしれない」不安から来ている。
そこに、親がプレッシャーを与える。すると不安は、試験前に風邪を引くとか、盲腸炎になるとか、試合前日にケガをするなどの形で表に現れる。


あるある。

潜在意識の中に不安があるから、意識でやろうとする、この、やろうとする意識が起これば起こるほど、転んだり、ケガをしたりすることが多くなる。これは決して偶然ではない。」(月刊全生 昭和60年6月号)

わかるなあ、よく見せようとすると、体が固くなって失敗しちゃうんだよなあ。

解決策は、子どもに「気取る必要がない」と教えればいい。

どうやって?

みんなと、比べられないようにすればいい。
ちょっと違った動作を加えたり、省いたりして、みんなと違う動作にすれば、失敗しなくなる。(月刊全生 昭和60年6月号)

なるほどねえ。
そういう気配り、ぼくもして欲しかったなあ。
幼稚園も学校も会社も、人との比較でプレッシャーばっかり。
ふだんならうまくできることも失敗して、カッコ悪くて、どんどん劣等感のドツボにはまって行ってたよ。

指導する側は、そういうメカニズムをよく知らんといかんな。


質問:父親が「雨が降って外は暗いし、コワそうだ」と言うと、1人でトイレも行けなくなるような臆病な子どもの、矯正方法を教えてほしい。
(月刊全生 昭和57年4月号)

その家って、何か出るんじゃない?
子どもって、見えないもの、見えてたりするから。

家の12方位に「ナディー・チャート風水」を貼る、安心な家になった、で、一見落着。


じゃなくて、野口氏は何て言ってるの?

まず、この子を「臆病」と決めつける親に、釘を刺している。

親が決めつけている?

大人だって、暗いところは気味が悪いしコワいが、それは人間の本性だから心配する必要はない。悪いのは、トイレに行けないほど、脅した親だと。


へえ、ここでも親が原因なのか。

その子は、たぶん敏感なんだな。
聞いた話から、次々と連想して、想像してコワくなるんだろう。
だからそれは、臆病じゃなくて、空想が豊かな子、ということになる。

なるほど、そういう見方ができるのか。

なのに親は、子どもがコワがるのをおもしろがって、脅かす。
子どもにいらない恐怖心を与え、臆病というレッテルまで貼ってしまった。
「豊かな空想力や連想力によって、子どもが臆病になったとしても、それは子どもの罪ではない。」「子どもの空想を親が強引に誘導して、臆病だという観念を押し付けたのです。だから、これは親の計画的な犯罪です。」(月刊全生 昭和57年4月号)

計画的犯罪! 返す言葉が出ないね。

問題は、これから先どうするかだ。
子どもに貼ってしまった臆病のレッテルを、どうやってはがすのか?

親が子どもに、あやまればいいと思う。
お父さん、お母さんが悪かった、お前は臆病なんかじゃないって。

しかし、野口氏はバッサリ!
今さら、お前は臆病ではない、元気だと言って説得しても、それはムダです。」(月刊全生 昭和57年4月号)

じゃあ、どうしたらいいんだろう?

親が、その子の臆病さを意識しないで、「今月の末に海へ行こうか。あそこの海は遠浅できれいだ、気持ちよく泳げるよ」と言うと、空想力の豊かな子どもだから、行くまではすごく楽しい。そこで「今日はいい顔をしてるね、元気なんだね」と聞く。すると子どもの中に元気な心が出てくる。そうやって、父親、母親が作り上げた臆病への段階を、一段一段戻していかなくてはいけないと。(月刊全生 昭和57年4月号)


はあ〜 一段一段かあ、一度レッテルを貼ると、はがすの大変だね。

この子は、相手の心も連想できる、頭の良い子なんだと。
頭の悪い子なら、相手の心を連想できないから、相手をいじめても平気だろうが。
「この子どもは決して、臆病ではないのです。親の無理解、無知の犠牲になっていただけなのですから、あらゆる機会をとらえて、楽しいこと、愉快なことが連想できるような、親との話し合いが出来るようになればいいと思うのです。」(月刊全生 昭和57年4月号)

臆病どころか、感受性が豊かで、想像力があって、頭の良い子だったのか。

両親は、自分の子を見誤っていたのに、気づかされたということ。
でも、この答えを聞いてた親は、ドッキリだったろうな。

世の中の親は、ほとんどみんなドッキリだよ。
野口先生、すばらしい!


質問:生後11ヶ月の男子、なんでも噛むので困っている。写真も噛むし、人も噛むので止めさせたいが、どうしたらいいのか。
(月刊全生 昭和60年6月号)

よくあるよ。歯がための時期じゃないの?

野口氏「噛むのは、人間の本能だから心配ない」と。
野口氏自身も、よく鉛筆をかじっていた。
それが、たばこに代わっても、たばこをかじっていると言う。
70才になる爺さんが「タバコだけはどうしてもやめられない」と言うのは、タバコ中毒と言うより、乳汁中毒だと言う。


お爺ちゃんの乳汁中毒?!

よく、赤ん坊は指をしゃぶるとか、何かを口に持って行きたがるだろ?
あれは、離乳が早すぎたんだ。噛むことも、離乳の時期が早すぎたというワケだ。


お爺ちゃんも、離乳が早すぎた?

もう一つ、赤ん坊がかじると、親が反応するのも原因だと。

なるほど、親の関心を引くためか。

「かじられたときに、何も言わないで、ケロッとした顔をして、『それじゃあ、今度はお母さんがかじってあげよう』と言ってちょっとかじってやると、もうやらなくなる。」(月刊全生 昭和60年6月号)

ハハハッ! そいつは、子どももビックリだね。

騒いだり、叱ったりすれば、子どもは親の関心を得る方法として、叱られたことを繰り返すのと同じ心理で、それを繰り返します。その心理は、潜在意識的な本能ですから、子どもはみんな持っているのです。」(月刊全生 昭和60年6月号)


質問:小学5年生の男子、自分のテレビを買うために貯金していたのが、いよいよ満期になって、テレビを買うつもりで張り切っている。自分のテレビなんか買わせたら、勉強しなくなるから、困っている。
(月刊全生 昭和57年4月号)


これはまた、おもしろい質問だね。

野口氏は開口一番、「なぜそうなる前に、他のものに使わせておかなかったんだ。」

たしかに。

だが、ここまで来たからには、「この場合はいさぎよく、テレビを買うべきです。・・落第しても『テレビを見すぎて落第したんだ。これからは馬力をかけてがんばらなくてはいけない』と思わせるための機会になると考えるならば、これはその方がはるかにいい。最初の目的通り買ってあげるべきです。」(月刊全生 昭和57年4月号)

親は、ガッカリしたね。

自業自得。
もうこうなったら、テレビを子どもの生活に生かしなさい、と言っている。
と言っても、この話は昭和40年頃の話だから、今のテレビとは比べられないが。


今のテレビは、ほとんど時間のムダだからね。
それにしても、小学5年生で、よくそこまでおカネを貯められたね。
根性があるって、ほめてあげればいいと思うよ。

ほうほう、しろ先生の珍解答が出たところで、今回はこのへんで。


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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