体の「左右で逆になる」経脈の気の流れ / 各経脈の旺ずる時刻と交感神経支配 / 心包と三焦という謎の臓腑について

竹下雅敏氏からの情報です。
 アーユルヴェーダの解説シリーズの26回目です。記事には「十二経絡の理解の仕方は両手を上げて立ち (万歳の形) 陰経の気の流れは下から上の方向へ, 陽経の気の流れは上から下へ流れる」と書かれていますが、これは誤りでこの記述の気の流れは、男性の左半身・女性の右半身のみ正しく、男性の右半身・女性の左半身では、“気の流れは逆”になる事を前回の記事で説明しました。
 冒頭の動画は、昨日見つけたのですが驚きました。動画の7分15秒の所で、“修行者の観察によると、体左右の気の動きは逆になっている”と言っています。8分6秒では、左手の肺経は胸から指先へ、左手の大腸経は指先から頭へと気が流れるのに対し、右手の肺経は指先から胸へ、右手の大腸経は頭から指先へと気が流れると解説しています。
 ただし、この流れは男性の場合であり、女性はこの逆になります。しかし、経脈の気の流れが「左右で逆になる」ことを理解しているのは、チベットの修行者くらいしか居ないと思っていただけに、この動画の言及には驚きました。
 動画には誤りもあり、10分16秒で「督脈は2本 左右で逆の動き」とあり、“左の督脈は上昇、右の督脈は下降する”と言っていますが、正確ではありません。“督脈は1本であり、下降と上昇は同時”なのです。動画で説明されている2本の督脈は、イダー・ピンガラーの模像です。
 “続きはこちらから”をご覧ください。正経十二経脈の左半身、右半身の各経脈の旺ずる時刻を示したものです。男女ともに、左半身の正経十二経脈(心包、三焦を除く)は交感神経の緊張を促し、右半身の正経十二経脈(心包、三焦を除く)は交感神経の弛緩を促すのです。例えば、左手の肺経脈は午前3時~5時に活発になり肺の活動は盛んになり、右手の肺経脈は午前5時~7時に活発になり肺の活動は鎮まるのです。ただし時計上の時間ではなく、太陽の南中時を正午とする時間です。
 最後に心包三焦という謎の臓腑について説明します。「心包(しんぽう)は、伝統中国医学における五臓六腑とは別格の臓器である。心主ともいう。心臓を包む膜または袋と解釈されているが、三焦と同じく実体のない臓器である」とされているのですが、実は心包は「筋膜」であり、三焦は「外分泌腺」のことなのです。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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東洋医学公益講座 第59回 十二正経 肺経 まとめ
配信元)

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大阪経大論集・第57巻第1号・2006年5月
東洋医学における<気>
(前略)
身体には気を循環させる通路がある。 それを 「経絡」 と呼び, 経脈と絡脈がある。経とは体の縦 (上下) を流れる太い流れ, 絡とは横 (左右) を流れる細い気の流れであり, 経絡上に気のたまる点を経穴 (ツボ) と呼ぶ。


(中略)
経絡にも陰陽があり, 十二経絡の理解の仕方は両手を上げて立ち (万歳の形) 陰経の気の流れは下から上の方向へ, 陽経の気の流れは上から下へ流れるととらえれば分かりやすい。 手経より足経へという陽経と足経より手経へという陰経ルートの原則があり, 陽経は手の三陽経は身体の上部においては外側から内側へ, 足の三陽経は身体の上部から下部へ向かう。 陰経は手の三陰経は身体の上部においては内側から外側, 足の三陰経は身体の下部から上部へ向かう。このルートを示したのが図3と図4である (石田1987)。 さらに陰陽は陽明・小陽・太陽の三陽と太陰・小陰・蕨陰(けついん)の三陰に分類されている。
石田 (1987) は, 各脈の名称については, ①循行開始点が手端なのか足端なのか, ②陰経か陽経か, そして三陰三陽のいずれなのか, ③どの臓腑と関わるのか, ④体表や背中側を通るのか, それとも体内や腹部側を通るのか, ⑤循行の方向で知ることができるという。
(以下略)

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各経脈の旺ずる時刻PDF出力
経脈 左半身 右半身
3時~5時 5時~7時
大腸 5時~7時 7時~9時
7時~9時  9時~11時
 9時~11時 11時~13時
心臓 11時~13時 13時~15時
小腸 13時~15時 15時~17時
膀胱 15時~17時 17時~19時
17時~19時 19時~21時
心包 19時~21時 21時~23時
三焦 21時~23時 23時~1時
23時~1時 1時~3時
1時~3時 3時~5時

正経十二経脈と交感神経系PDF出力
臓腑 各臓腑への交感神経支配
緊 張 弛 緩
左手肺経脈 右手肺経脈
大腸 左手大腸経脈 右手大腸経脈
左足胃経脈 右足胃経脈
左足脾経脈 右足脾経脈
心臓 左手心経脈 右手心経脈
小腸 左手小腸経脈 右手小腸経脈
膀胱 左足膀胱経脈 右足膀胱経脈
左足腎経脈 右足腎経脈
心包
三焦
左足胆経脈 右足胆経脈
左足肝経脈 右足肝経脈

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