ぴょんぴょんの「ドキュメンタリー『セブンUP』」 〜「7歳までに人はつくられる」は本当か

Eテレで、イギリスのテレビ局が作ったおもしろい番組を見ました。
7歳の子どもたちは、63歳にどうなっているのか。
7年ごとの彼らの記録から、いろいろ考えさせられます。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「ドキュメンタリー『セブンUP』」 〜「7歳までに人はつくられる」は本当か

史上最高傑作のドキュメンタリー番組の1つ


しろは、7歳のとき、何になりたかった?

7歳? 小学校2年生かあ、ケーキ屋さんになりたかったな!


ははあ、その頃から食うことしか考えてなかったんだな。

じゃあ、くろちゃんは?

おれは、マンガ家だな。
授業中、いつもマンガを描いていたし。


へええ??
でも、それじゃ、きっと、食べていけなかったと思うよ。

正直、おれもそう思う。

ところで、なんで7歳なの?

「セブンUP」という、イギリスのドキュメンタリーを見たんだ。
これは、「7歳までに人はつくられるか」をテーマに作られた番組で、
1964年、当時7歳だった子どもたちを集めて、将来の夢、家族、学校生活などについて質問し、記録した。
その後7年ごとに、同じメンバーに同じ質問をして、彼らがどう変化したかを記録したドキュメンタリーだ。
NHK+

へえ、おもしろそう。

そして今や、彼らは63歳になった。
さすがに63歳ともなると、病気したり、亡くなったりしてくるが。

7歳から63歳まで、それぞれに、いろんなことがあっただろうね。

人生なんて、あっと言う間だって気づかされるが、このシリーズは「史上最高傑作のドキュメンタリー番組の1つ」と評価されている。


イギリスの階級格差を意識した人選


一人ひとりの成長だけじゃなくて、イギリス社会の変化も見られるね。
ところで、インタビューを受ける子たちは、どうやって選ばれたの?



当初の目的は、7歳までの生育環境が子どもの将来にどんな影響を与えるのか、階級格差はどのくらい決まるのかを調べることだった。
だから、異なる階級の子どもらを選んでいる。Wiki

イギリスって、まだ階級があるの?

あるある、大ありだ。今もこんな感じ。
上流中産階級:私立学校に通い、大学はオックスフォードやケンブリッジ、政治家が多い。
中流階級:持ち家があり、英語は上流階級のアクセント。ほとんどが大学を出ている。
下流中産階級:専門的でない事務職など。適度にカネを稼いでいるが、中流階級ほどじゃない。英語は地域のアクセント。
熟練労働者階級:大学は出ていない。配管業者、電気技師などの自営業。
未熟な労働者階級:低賃金の小売業をしているか、国の福祉を頼りに生活している。(EIKOKUGO

へえ、英語のなまりで差別化するんだね。

くだらねえこと、やってんだろ?
そのせいで、イギリスの貧富の差は、第二次大戦後、最大になってしまった。
2010年の報告によれば、富裕層(人口の10%)の資産が、最貧層(人口の10%)のほぼ100倍。さらに、上位1%の100人あたりの資産総計が、最下層1800万人(人口の30%)と同じ。(Business Journal
労働者階級は、EUからの移民に仕事を奪われて、ますます貧困化したというのに。

だから、BREXIT賛成が多数だったんだね。

イギリスには長年、こういう階級制度が染み付いてる。
生まれながらにして、オックスフォードやケンブリッジが約束されている子もいれば、一生労働者から抜けられない子もいる。

オックスフォード大学

知ってる。
イギリスでロック・ミュージックが盛んなのも、カネ持ちになる方法がないからだって。

サッカー選手だってそうさ。
ベッカムはカネ持ちで豪邸に住んでいるが、相変わらずの労働者階級だからな。(LATTE


階級は変えられないんだ。

貧困家庭に生まれると、教育や職業において、つねに不平等というハードルが立ちはだかる。一方、上流階級のイートン校など、卒業生の子なら成績にかかわらず入れてくれる。(LATTE

Author:__NAME__[CC BY]
イートン校

上流階級って、ズルだね。

日本だってやってるさ。
卒業証書はカネで買える、って言うじゃねえか?

そうなんだ!

だから番組は、イギリスの階級格差を意識して、子どもらを人選した。
労働者階級の代表に、ロンドン下町に住む少年と公立校に通う少女たち。
上流階級の代表に、ロンドンの私立小学校に通う少年たち。
さらに、養護施設にいる少年たちも入っている。(NEWSWEEK

その子たちがどう変わっていくのか、おもしろいね。


7歳だった彼らも今や63歳


上流階級の子は、7歳の時点で将来のことを聞かれると、私立中学校に進み、オックスフォードかケンブリッジを目指すと語ったが、はたしてその通りになった。

ケンブリッジ大学

ちゃんと、レールが引かれてるんだ。

その他の子たちは、いかにも子どもらしい。
ニールがなりたいのは「宇宙飛行士かバスの運転手」。
ポールは「大学って何?」と聞き返す。
サイモンは「仕事をする前に、あちこちに行っていろんなものを探したい」と話す。(NEWSWEEK

かわいいね。

だが、7歳だった彼らも今や63歳。
労働者階級のトニーは、競馬の騎手を夢見ていたが、プロはあきらめて、ロンドンのタクシードライバーになった。稼いだカネでスペインに家を買い、今は、嫁さんと仲良く、大勢の孫に囲まれている。

Author:ジミー・バレット[CC BY-SA]

この人、明るくて努力家だから、何をやってもうまく行きそう。

農家の息子ニックは、オックスフォードに進学して物理学を学び、後にアメリカの大学で教壇に立つようになる。NEWSWEEK

へえ、農家でも、オックスフォードに行けるんだ。

成績さえ良ければ行ける、が、大学内では相変わらず、階級意識はあるみたいだ。
英語のアクセントで、すぐバレる。まあ、番組じゃ、そんなことは触れてないが。

きっと、苦労したんだね。

彼はいい妻に恵まれ、幸せそうだったが、ガンの療養中で、収録後に亡くなったらしい。

そうだったのか・・。

ジョンは、銀のスプーンを口にくわえて生まれてきたような、上流階級の子だ。
ピアノが上手で、クイーンズ・イングリッシュをキチキチ話す、貴公子だ。
予定通り、順調にオックスフォードに進み、望んだ通りの法廷弁護士になった。
しかし実際は、9歳で父親に死なれ、ブルガリア人の母が働きながら彼を育て、奨学金でオクスフォードに進んだと言う。

へえ、そんな苦労してるようには見えない。

彼は、言う。
人間は、自らの力で変えられないものによって差別されてはならない。
自分は恵まれているので、できるだけ社会に還元するのが自分の責任だと。(NEWSWEEK
彼は、祖先の国ブルガリアのために、ボランティアで貢献している。

人徳のある人だね。ブルガリア人の奥さんも美人だ。

そして、オリバー。 
富裕層のひとり息子。
小さな頃は乳母に育てられ、イートン校からアメリカのイエール大学に行った。
すごく賢そうなのに、「人生の失敗への恐怖が強い」と語る姿をみていると、何かの拍子にポキッと折れてしまいそうな危うさがある。
世界級ライフスタイルのつくり方

イエール大学

おカネはあっても、お母さんの愛情が足りなかったのかな。

中産階級のニールは、見るからにかわいそうなヤツだ。
両親とも教師で、賢く陽気だった彼は、21歳で心を病んでしまう。

原因については、番組では深入りしていないのでわからない。
彼は28〜35歳のあいだ、失業手当で暮らし、時にはホームレスになったりした。NEWSWEEK
その後は地方議員になって、人々のために働いて生活しているが、せっかく結婚した妻とも別居中。妻の前に交際した女性のことが、いまだに忘れられずにいる。

何があったのか知らないけど、後ろ向きで、暗いよね。

その他にも、思春期に両親が離婚して、自分の結婚もうまく行かなかった女性。
結婚して離婚したけど、再婚して温かい家庭を持てた男性。
仕事で報われずに苦しむ女性など、人生いろいろだ。
63歳になっても、彼らはまだ自分自身を探しています。私たちは最終目的地に到達することはなく、常により多くのものを求めていることを示しています。
YouTubeコメント

63歳になっても探求は続く、ため息が出ちゃう。

養護施設で育った二人の子ども、ポールとサイモンがどうなったか見てみよう。
今でも二人は、妻から「自信がないわね」と言われている。
「7歳までに人はつくられるか」と聞かれて、ポールは答える。
「7歳の時、不安げで自信の持てない少年でした。今でもだいたい同じです。」

やっぱり、7歳までに決まってしまうのか。

性格は決まるかもしれない。だが、ポールはこうも言っている。
「ぼくは幸運です。ぼくの人生で彼女(妻)の影響力は大きい。
何でもプラスに考えるようになった。」


明るい奥さんに救われたんだね。

いっしょに施設で育ったサイモンは言う。
「自信がないとは、自分を疑うことだと思います。」
「自分を理解すると、何が可能なのか分かる。
ぼくは、自分が何者なのかを理解するのに60年かかりました。

ずっと悩んできたんだ、でも今はいい顔をしてる。
それに、たくさんの孫たちに囲まれて幸せそうだ。


本人が明るくて、前向きなら、階級にかかわらず幸せになる確率が高い。
または、いい伴侶に恵まれれば、もっと幸せになれる。


上流階級でスイスイ行くのがいいとは、限らないよね。
彼らには彼らなりの苦労があるだろうし、自由がなさそうだし。

ヤバイことにも、手を染めたりな。

でも、イギリス人て、もっとみんな幸せで、自信に溢れてるかと思ったけど。

養護施設で育ったサイモンは、イギリスの養護施設は軍隊のようだったと言った。
養護施設で一緒だった親友のポールは、父親の関係でオーストラリアに移住した。
そこでも養護施設に入れられたが、最高の子ども時代だったと言っている。


オーストラリアは、階級制度がないからかなあ。

「7歳までに、人はつくられるか」?
たしかに、ある程度、その人はつくられている。
だが、そいつが幸せかどうかは、家が裕福か、上流階級かは関係ない。
むしろ親との関係や本人が周りから受けてきた愛情・養育姿勢の方が相関がある。
世界級ライフスタイルのつくり方

親子の関係の方が、重要だね。

まったく同感だ。
親が子供に与える甚大な影響を考えざるをえず、自分の生い立ちや子どもの育て方などさまざまな方向に思考が飛ぶ良いドキュメンタリーでした。」(世界級ライフスタイルのつくり方

なるほどね。

そして、パートナーも大事。


自信のなかった男性が、ポジティブな奥さんに救われてるし。

だが、こんな階級制度、いつかぶっ潰れてほしい。

人々が、上流階級のしてきたことを知ったら、なくなるよ。

早くそういう世界になんねえかなあ〜。

この番組「7年ごとの記録 イギリス 63歳になりました」は、3/25(木) 午後10:45 まで、NHKプラスで見られるよ。


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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