ままぴよ日記 102 「私達の町にこんな学校が欲しい!」

 夏休みです。猛暑続きで夏バテしそうな毎日ですが、いよいよアメリカから娘家族が帰ってきます。楽しかった学校生活にお別れして、日本の学校に再入学します。幼稚園、小学校2人、中学校です。

 そんな孫の目に日本の学校はどう映るでしょか?うまく適合していけるでしょうか?動じないで切り抜けるでしょうか?心配でもあり、楽しみでもあります。

 さて、我が町では先日紹介した「夢見る小学校」の映画を見たママ達の心に火が付いてしまいました。今回はそのことを書きます。

お知らせ:次回から2回、お休みをいただく予定です。娘家族の引っ越しの手伝いに奔走します。
(かんなまま)
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我が子の不登校に悩むママ達


最近、不登校の話をよく聞くようになりました。1クラスに2~3人いるのは当たり前。そして、行き渋りながら学校に行っている子もたくさんいます。子育て広場でも保育園や幼稚園の行き渋りのテーマでおしゃべり会をすると、困っているママ達がたくさん集まってきます。

その家の中を覗くと毎日、毎日、親子の葛藤がくりひろげられています。

ママは自分で起きてこない子を無理やり起こすところから始まります。又は、緊張の為に夜明け前に起きて学校に行きたくないと泣き出す子の話を聞きます。食べてくれそうな朝ごはんを用意してテンションをあげ、学校に行ってくれるか?その日によって変わる子どもの態度に細心の注意を払いながらあの手この手で励まします。それでも行かない時は「いいのよ、家にいて」と言いながら、へこみます。そして気持ちを切り替えて、バタバタ自分の仕事に向かうのです。

いつも平常心でいるのは難しく、時には声を荒げて「もう、いい加減にしてよ!」「何であなただけ行けないの?」「それくらい我慢できなきゃ社会に通用しないのよ」「いい加減にしてよ!」と、捨て台詞を言って、後悔します。

そして、自分の子育てが間違っていたのではないか?子ども自身に問題があるのではないかと悩み続けるのです。


普通に学校に行っている子でも宿題をさせるのは一苦労。最近は採点、見直しまで親がします。給食を食べない、忘れ物が多いと先生から注意されてばかり。子ども達は先生がいつも怒っているだの、友達が意地悪をしただの、親に訴えます。時間割をさせるのも一苦労。夜遅くまでゲームをして朝起きられません。親も疲れてみて見ぬふり。そんな生活が当たり前になってしまいました。

先生も、熱心に不登校の子どもを学校に来させようと頑張ります。毎日家に迎えに行く。保健室登校でもいいよ、と促します。親にも連絡を取ります。熱心な先生はクラス中で声をかけあうように促します。

不登校の子にとっては、その熱意が苦しい事もあります。親を困らせたいわけではないけど、行けない自分をうまく説明できません。

聞かれれば、皆が納得してくれそうな答えを探します。頭が痛くなったり、吐いたり、熱まで出て体で表現することもあります。

日本は、子どもは学校に行くのが当たり前なのです。文科省は不登校の子どもの再登校を目指しているため、学校以外の多様な学びの場を保障するという発想がありませんでした。だから、先生も親もどうにかして学校に行かせようと頑張るのです。行けない子どもは社会から落ちこぼれるし、問題児と言われます。


衝撃を受けた映画「夢見る小学校」


でも、心の中で、こんなに嫌がっているのに無理やり行かせる必要があるのだろうか?学校にも問題があるのではないか?と思っていたママ達が、「夢見る小学校」の映画を見て衝撃を受けたのです。

えっ?こんなに自由なのに文科省が認めている学校?先生がいない?宿題がない?黒板を見ながら学年別の一斉委授業がない?テストがない?通知表がない?教科の勉強ではなくプロジェクトで家まで作る?1年から6年まで一緒に取り組む?職員室は遊びに行くところ?校則など大事なことは子どもと大人が会議で決める?とびっくりです。

映画の中の子ども達は一生懸命に自分で考えています。友達と話し合っています。身体も手も動かしています。大人と対等に話し、電話して交渉までしています。多分、一年生の時からそんな上級生を見ているのでやり方を学んでいるのでしょう。

農業、大工、食べ物のプロジェクトチームがクラスです。1年かけて大人顔負けのものを作っていますが、多分失敗も含めて色々な体験をしてきたでしょう。でも大人が「失敗していいよ、責任は大人が取るから」と言ってくれるので安心してチャレンジしています。


ママ達は、我が子と比べながら映画を見て、考え込んでしまいました。我が子はこんな顔をしているだろうか?私は子どもにしたいことをやらせているだろうか?でも、楽しいだけで成績は上がるのだろうか?


統廃合の地域説明会に参加


混乱して帰り、他のママ達と話し始めました。子どもの学びとは何か?好きなことをしながら学んでいる姿を見てしまったので、そこから考えたくなりました。

地元には、そんな学校はありません。不登校の子どもを持つママは他県のフリースクールを見学に行きました。楽しそうに遊び、学んでいる子ども達の姿を見て、その教育方針にも感動して帰ってきました。

「我が子を行かせたい!」と思いましたが、他県に毎日通わせるのは大変です。月謝や交通費も安くありません。地元にそんな学校が欲しい!と思い始めました。

ちょうど、我が町は学校統廃合再編の話が出ています。10年計画で今年度から順次始まります。新しくても廃校になる学校もあるようです。

統廃合の地域説明会に参加して質問をしようと盛り上がりました。この機会を失くしたら、親が学校について口出すことはできません。みんなで集まって勉強会をすることになりました。ほとんどのママが仕事をしているので土曜日の朝7時から朝活です。


調べてみると、文科省は令和4年度6月に出された「今後の不登校児童生徒への学習機会と支援の在り方について」という通知で、小・中・高合わせて約24万人の不登校生徒(不登校傾向の子は4年前からカウントしていないので実際はもっと多い)がいることから、オンラインやフリースクールなどと積極的に連携をして多様な学び方に方向転換しようとしているのがわかりました。

そもそも、不登校の要因やニーズは多岐にわたっているので、その全てを学校や教育委員会のみで担うのは限界があるのです。

又、保護者も本人と同様に子どもの進路や将来に不安を抱え、子どもにどのように対処していいのかわからないで悩んでいるので、保護者に寄り添った支援を行うと書かれていました。

同時に、様々な強いストレスや困難な事に直面した際に、児童生徒が自らの心の状態を受け止めて理解できるように、学級担任や養護教諭、スクールカウンセラー(SC)、スクールソシャルワーカー(SSW)が連携しつつ、SOSの出し方の教育を組織的に進めていくと書いてあります。

ママ達は「SCとかSSWの存在を知らなかった」「相談したけど予約を取るのが大変で、本当に困っている時に相談できなかった」と言っていました。

知り合いのSCの方にも参加してもらって、いろいろ尋ねました。そもそも、SCの身分も地域によって違うようで、我が町では25校の学校に対して2人。そして、SCと言っても学校に関する相談を受けるような勉強はしていないと聞いて愕然としました。又、専門家がアドバイスをしようとしても校長先生の意見の方が強いのも驚きでした。

アメリカやヨーロッパではこのSCの専門性を活かしてクラスや学年に1人配置されています。子どもや親、先生の悩みを初期の段階から受け止めてくれる人がいたら、ここまで深刻にならないのでは?と残念です。市町村が雇用するので人件費がないのでしょうか?

さて、統廃合の地域説明会に参加したママ達からの報告では、「校区の範囲、通学距離や方法などの質問はたくさん出たけど、学校の教育についての質問はなし。出せる雰囲気でもなかった」「不登校や特別支援教室についての質問をしたけど答えてもらえなかった」と残念そうでした。

保護者と学校が、子どもの教育について議論する機会もない日本。でも、このままではサクサクと統廃合だけが進み、保護者は今まで通り学校運営に協力する人、子どもは学校で学ぶように指導される人になってしまいます。


大きな現実の壁


私は知り合いの教育委員に、ママ達が教育長に話す機会を作ってもらえないだろうかと打診しました。すると「そのような意見は初めて聞きました。ぜひ教育長に繋ぎましょう」と言われました。

がぜん、ママ達の熱が入りました。

同時に、あるママが我が子の不登校の事で教育委員会に相談に行き、自分の意見を行政に伝えるにはどうしたらいいか尋ねました。行政は「市のHPの質問欄に書けば届きますよ」と教えてくれたそうです。

だからママは勇気を出して、自分の思いを書きました。子どもが学校に通いたくても通えない事。通えない理由は多様である事。フリースクールがないので、他県まで見学に行ったが月謝や交通費が高くて断念したこと。教育の機会均等のためにも、統廃合の機会に、全国で作られ始めた多様な学びの場を作って欲しいと伝えたそうです。

それを読んだ教育委員会は、学校を作るなどお金がかかることを言われても不可能。このような団体の意見をいちいち聞いていたら次々に自分達も聞いてくれと言ってきて収拾が付かなくなるから、教育長との話はお受けできませんと断られてしまいました。

親としての切実な願いを伝えただけで道を閉ざされたママ達はショックを受けました。大きな現実の壁です。

子どもの学校の事を考え、皆で話し合って、学び合ったママ達。私も「この思いを教育長に届けよう」と、焚きつけてしまいました。

行政は予算ありき。「作ってくれ」と簡単に言われてもお金が出ないのでNOと答えるしかなかったのでしょう。でも、子どもやママ達のような当事者の声を聞かないのは問題です。憤りを感じました。

でも、ママ達は目の前に生身の子ども達がいます。みんなめげませんでした。「子どもの為にもっと知りたい」「自分の教育に対する軸を持ちたい」と話し合いは続いています。

そして、今まで言えなかった心のうちも話し始めてくれました。「我が子がいつも学校から注意されていたので肩身が狭くて追い詰められていた」「本当は素直で優しい子だけど、学校では強く見せたいと肩を張っていたのではないか?子どもが悪いことをしたら叱るのが親の役目だと思って叱っていたけど、一番困っていたのは子どもだったのでは?」と。


このように、ママ達は1つひとつ、我が子への理解を深めていき、親として子どもの代弁者になり始めました。もちろん、先生の手が足りない事や、仕事量が多くて大変なことにも思いを馳せて、皆が幸せになる学校を考えたいと願っています。

壁は立ちはだかっていても、この方向性は間違っていないと思います。これに気づいたという事は、変革が始まったのです。目の前の壁は愛と知恵で越えるしかありません。

以下、ママ達が調べてくれた情報です。日本各地で新しい学校が続々誕生しています。
ここ数年に開校した&開校予定の新しいタイプの学校

その中で、廃校になった学校を利用して公立の不登校特例校もでき始めたようです。

開かれた熊本教育長のブログ。みんなで教育の事を語ろうと始まりました。現役の先生方がたくさん参加しているそうです。
熊本教育長 教育を盛り上げる会

子ども達の遊び場でもあり、フリースクールも併設している「川崎市子ども夢パーク」の「ゆめパの時間」という映画が上映されています。「子どもも大人も身もだえしながら自分の生き方を探している」と言う代表の西野博之さんの言葉が響きます。是非見て欲しい映画です。


さあ、みんなで子ども達の学校の事を考えましょう!


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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