ぴょんぴょんの「挑発するコソボ(7)」 ~セルビア人の「意地」とは?

コリもせずに、また書きました。
コソボについて、セルビアについて、旧ユーゴスラビアについて、
まったくの無知だった私は、記事を集めて関連本を読んで、
知れば知るほどに、沼にハマってしまいました。
コソボとセルビアから、世界の歪んだ構図が見えてくる。
ここから学べることがいっぱいあります。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「挑発するコソボ(7)」 ~セルビア人の「意地」とは?


セルビアの2大サッカーチーム「レッドスター」と「パルチザン」の直接対決の過激な現場


「大枚はたいてセルビアに飛んだあげく、レッド スター ベオグラード 対 パルチザンの試合で、命の危険にさらされるとは...  いい経験だ、爆笑」(意訳)

なんだなんだ??
とうとう、戦争がおっぱじまったのか?

安心して、これはサッカーの試合。
首都ベオグラードに本拠地を置く、セルビアの2大サッカーチーム「レッドスター」と「パルチザン」の直接対決の現場だよ。

どんだけ、過激なんだよ。
こんな火の海を見たら、ビックリするじゃねえか!

レッドスターとパルチザンの試合は、いつも特別なんだ。
同じベオグラードのライバルチームだからね。
まあ、たとえれば、巨人阪神戦かな?

甲子園でこの光景はありえねえよ。
なんで、こんなに熱くなれるのかねえ。
欲求不満じゃねえのか?

民族性、と言っても、セルビアだけじゃないよ。
同じユーゴの一員だったクロアチアも激アツだし、あそこら辺のサッカーはどこも熱い。
ユーゴ全体が紛争に巻き込まれた時も、サポーターたちは一丸となって参戦したそうだよ。

こんな物騒なヤツらが兵隊になったのか? 恐怖だな。

実際、セルビアでもクロアチアでも、サポーター・リーダーが指揮官の小隊もあって、虐殺とかに関与したみたい。

このノリで戦争されたら、たまらんわ。

だから、戦争続きのバルカン半島には、ガス抜きのサッカーが必要なんだよ。

Author:Ikonact[CC BY-SA]

日本のサッカーが、平安貴族の蹴鞠に見えてきたぞ。

まったく別物だね。
あのストイコビッチも来日当初、ふつうにプレーしてるのにイエローカード食らって、凹んでたそうだよ。


セルビア人の諦めない精神、「意地」の文化


どんだけ、過激なサッカーをやってきたんだ?
だが、・・いや、わかる気もする。
彼らは元々「inat(イナット)」の戦士だからな。

なにそれ?

諦めない精神、「意地」のこと。
ユーゴスラビア言語研究者の田中一生(かずお)氏が言っている。
「もし日本人が『恥』を基調とする文化に属するとすれば、ユーゴスラビア人ないしセルビア人は『意地』の文化に属するとわたしは考えている。(中略)... オスマン・トルコによる400年の占領下でつちかわれた抵抗精神かもしれない。」
(「悪者見参」436p)

「いじ」と「はじ」のちがいかあ。

昔の日本人にも「武士は食わねど」みたいな「意地」はあったが、
今の日本人に「意地」はあるんか?


ないね、丸くなりすぎてるね。
日本人はセルビア人にどう見えているのか、聞いてみたいね。 


セルビアは親日国だった


セルビア在住の日本人によると、日本人観光客がセルビアに来たら、「中国人じゃなくて日本人」だとアピールしろと。

中国人だと、どうなるの?

からかわれたり、嫌な目にあうことも少なくないと。
セルビアの親中度は「普通~悪い」だから。

へえ?
あんなに中国にお世話になってるのに?
前回の話だと、セルビアは中国の投資に助けられていて、セルビアのヴチッチ大統領は習近平を「習兄さん」と呼ぶくらい、親中派なんでしょ。

ああ、ヴチッチに、新疆ウイグル自治区のこととか、武漢研究所からバラ撒かれた新型コロナの話をしても、聞く耳を持たんらしい。
どころか、ファーウェイの5Gや顔認証もどんどん入れて、孔子学院もできてるそうだ。

Author:RG72[CC BY-SA]

う〜ん、セルビアの親中度は「普通~悪い」。
国民はわかってるのかも。


一方、日本人は「勤勉で礼儀正しい、日本製品は高品質、日本食はヘルシー」という好印象。(Serbian Walker

それは、ありがたい。

そう言えば、セルビア観光の動画を見ていると、よく話題に上るのが、日の丸が描かれた黄色いバス「ヤパナッツ」。


「ヤパナッツ」?

2003年、日本政府が、無償資金協力によってベオグラード市に寄贈した93台のバスが、セルビア語で「日本人」、「ヤパナッツ」という愛称で呼ばれている。
当時、空爆と経済制裁でボロボロだったセルビアでは、オンボロバスが走っていた。そこに、「日本から贈られた93台の新車のバスは衝撃的だった。」(東洋経済

へえ、日本も、たまにはいいことしてるんだ。
それにしても、20年経ってるのにきれいだね。

大事に大事にメンテナンスしながら、使っているそうだ。(Jica

なんか、うれしいね。

空爆時に、在セルビア日本大使館に勤めていた外交官の話によると、
「当時、我々もあらゆる情報を収集して日本外務省にユーゴ空爆の不当性を報告していたんです。これは間違いだと。しかし本省からは梨の礫(つぶて)。痺れを切らして打電したら……」
「空爆が不当かどうかなど問題ではない。大切なのは日米安保なのだ」という返信が来たと。
(「終わらぬ民族浄化 セルビア・モンテネグロ」243p)

はあ〜〜情けないね。
セルビアの状況を、間近で見ている人の声を無視するなんて。

だが、空爆が始まり、他国の大使館がどんどん閉鎖していく中、日本大使館はずっと開いていた。あたかも、日本政府の姿勢に抗議するかのように。
その頃を振り返って、現在の駐日セルビア大使はこう言っている。
「当時の日本の大使館は閉鎖せずにそのままで、ずうっと残って、連帯のシンボルだった。」(YouTube 9:35〜)

在セルビア日本国大使館
Author:外務省[CC BY]

命をかけた抗議だったんだ。
でも、その時の大使は、たいしたもんだ!

オッホン!
かくして、セルビアは親日国である。
武道への関心が高く、黒澤明作品をはじめとする日本映画や、川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎、最近では村上春樹らの著書がセルビア語に翻訳され、若者を中心に日本のマンガ、アニメが人気であることも大きい。
東洋経済

なんか、うれしいなあ。
ぼくも、セルビアに親密感がわいてきた。


日本とセルビアは、すべてが正反対


じゃあ、セルビア人と日本人の違いはな〜んだ?

背の高さ。


でっかいヤツが多いのは、たしかだが、
日本とセルビアは、すべてが正反対なんだよ。
セルビアと日本を足して2で割ったら「ふつう」と言えるくらいに。

へえ? 何が正反対なんだ?

セルビア人は仕事がしたくない。
早く終わらせて飲みに行きたいから、急いで仕事をする。
当然、ミスが多い。
役所、銀行ではほぼ100%、どっか間違っているそうだ。
YouTube

ぼくはセルビア人だったんだ。

セルビアでは時間が当てにならない。
バスも時間通りに来ないし、授業も時間通りに始まらない。
完成予定が来年だった工事が、2年後にやっと完成したり。


秒単位で電車が走ってる日本の方が、異常かも。

よくわかってるセルビア人もいる。
「日本人は仕事に熱心だから休暇が少ししか無いね。これはセルビア人の人生観とは相違するよ。もっとセルビア的で(人生を楽しめば)良いんじゃないかな。」(YouTube

はあ〜、まったくだ。

また、日本人は集団を重んじるが、セルビア人は個を重んじる。

それは、うらやましい。

オシムを覚えているか?

もちろん!
サッカー界のレジェンド、イビツァ・オシム氏。
ユーゴスラビア代表監督、Jリーグや全日本の監督も務めた。
残念ながら、去年の5月に亡くなったけど。
たしか彼は、ボスニア人だったよね。

イビツァ・オシム氏

そうだ、かつてのユーゴを構成していたボスニアの人だった。
オシムが見た日本人選手はこうだった。
「日本人は平均的な地位、中間に甘んじるきらいがある。野心に欠ける。これは危険なメンタリティだ。受け身すぎる。『精神的に』周囲に左右されることが多い。フットボールの世界ではもっと批判に強くならなければ」。
(「オシムの言葉」42p )

たしかに今も周囲を見ながら、マスクをしようか外そうか、まごまごしてる。

さらに言う。
「私には、日本人の選手やコーチたちのよく使う言葉で嫌いなものが二つあります。
『しょうがない』と『切り替え、切り替え』です。それで、全部を誤魔化すことができてしまう。
(中略)...『どうにもできない』はあっても、『しょうがない』はありません。これは、諦めるべきではない何かを諦めてしまう、非常に嫌な語感だと思います」。(「オシムの言葉」289p ) 

たしかにあそこら辺で「しょうがない」で生きていたら、とっくに殺されてるね。

島国根性の日本人、ゆでガエルの日本人に、ヤツらの爪の垢でも煎じて飲ませたい。



今現在、セルビアからコソボを奪って、セルビアをさらに弱体化させようとしている


でもさ、見方によっちゃ、コワい民族だよ。
個人が自分の考えを持ち、諦めない「意地」があって、体もでっかい。
こういう人たちが団結したら、めっちゃ強い。

だから、彼らが団結しないように引き裂いたのよ。
第二次大戦ではナチス・ドイツが、クロアチアを占領した。


外務省より


色の着いた部分がクロアチア。
ナチスの傀儡となったクロアチアは、クロアチアに住む多くのセルビア人を虐殺した。
その後、旧ユーゴからの独立戦争でもクロアチアは、ハンガリー経由で武器を受け取り、セルビア中心のユーゴスラビア軍と戦って、多くのセルビア人を虐殺した。
それに報復するかのように、今度はボスニアで、多くのクロアチア人がセルビア人に虐殺された。
それまで互いに助け合って暮らしてきた民族同士を、このように残虐に殺し合うよう仕向けた黒幕は誰だったのか?

クロアチアに武器を送ったハンガリーと来れば、オーストリア・ハンガリー王国。
と来れば、ハプスブルク家? そこにつながるロスチャイルド家?

木村元彦氏は「悪者見参」の428pで、こう書いている。
ユーゴスラビア連邦崩壊が始まって以来、この民族に対して国際社会が与えた仕打ちの不公平さはまさに筆舌につくしがたい。国際法廷で、メディアの世界で。検証すればするほど覆い隠されてきた意図的なセルビア叩きの歪んだ事実がいくつも見えてくる。世論はセルビア人だけを鬼か悪魔のように言い募り、もろもろの国際機関は言うに及ばず、日本の平和運動の中ですら、紛争に疲弊したこの民族に対する差別発言はよく見受けられた。」

誰の許可も得ずにセルビアを空爆で破壊し、セルビア人を「悪者」に仕立てた犯人は、裁かれるべきだ。

さらに今現在、セルビアからコソボを奪って、セルビアをさらに弱体化させようとしている。
だが、そうはさせじ、と抗議するセルビア国民。

これは、ヴチッチ大統領とコソボのクルティ首相が会談した3月18日の夜、ベオグラードで開かれた集会の模様だ。

「今夜、ベオグラードで 🇷🇸 コソボとメトヒアのための全国集会が開催されます。EUの提案に反対、降伏に反対!」(DeepL自動翻訳)

「悪者」のレッテルを貼られた彼らは、今なお戦っている。

彼らのイナット、「意地」を感じるね。

こんな歴史を持っているのに関わらず、人との間に壁がない、気さくなセルビア人。
「『悪者』たちがどんなに人懐こく、いかにお人好しな民族なのか。現地へ行けば必ずや体感できるだろう。」(「悪者見参」432p )

彼らの柔軟さと強さを見習いたいと思う。

山崎佳代子氏という、ベオグラード在住の詩人がいる。
彼女は、NATOの空爆が始まると知りながら、再三に渡る避難勧告を受けながら、家族と共にベオグラードに留まった。
友人たちを見捨てて、逃げるわけには行かないと。
彼女の著書、「そこから青い闇がささやき ベオグラード、戦争と言葉」では、詩人らしい選びぬかれた言葉で、戦時の日常をたんたんと綴っている。
最後は、この詩人の言葉で閉めよう。

特定の国、特定の民族に対する憎悪に満ちた言葉が飛び交い、不安と恐怖を作り上げて、ヒトと人との絆、国と国との繋がりが断たれていく時代にも、安らかな心でありたい。安らかな心を持つ人だけが、他者を救うことができるのだから。こどもを守ることができるのだから。心の安らぎを失わぬことこそが、名も無き私たちに残された唯一の戦いかもしれない。そして、私たちは勝たなくてはならない。」

(「そこから青い闇がささやき」232p)


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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