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ぴょんぴょんの「〈トランスニストリア〉と呼ばないで(3)」 ~〈モルドバ〉と〈沿ドニエストル〉の不穏な未来
おさらい
〈ソ連〉からの独立運動
さて、その後の〈モルダヴィアSSR〉はどうなったのか? 弾圧や飢餓によって苦しめられた民衆は、〈ソ連〉からの独立を強く求めるようになる。しだいに、地下組織、秘密結社、政党が増えていったが、それらに対する〈ソ連〉の弾圧も厳しかった。それでも、独立への動きは止められず、1989年には、「〈ソ連〉から分離して〈ルーマニア〉と一緒になる」ための、「〈モルドバ〉人民戦線」が立ち上げられた。
でも、〈ソ連〉を倒したのは正解だったと思うよ。あのまま〈ソ連〉が生きてたら、もっと多くの犠牲者が出たからね。ただ、今でも同じシナリオを使いまわして、自分たちの思うままにならない国家を転覆させるのは止めてほしいね。
ところで、〈ソ連〉からの独立運動が高まるにつれて、〈モルダヴィアSSR〉の多数派、〈ルーマニア〉人は〈ルーマニア〉との再統合を望んだ。一方、ドニエストル川東岸の〈ロシア〉〈ウクライナ〉系住民は、〈ルーマニア〉と心中したくない。佐藤優氏によれば、彼らはこう思ったらしい。「チャウシェスクの〈ルーマニア〉? うんと貧乏、あんなとこと一緒になりたくない。我々は〈ソ連〉に残留する。」(YouTube 16:19〜)
〈モルダヴィアSSR〉内の独立は、まず、テュルク人が多く住む南部から始まった。彼らは〈ガガウズ共和国〉として独立宣言(1990年8月19日)。つづいて、ドニエストル川東岸も、〈沿ドニエストル・モルダビア・ソビエト社会主義共和国〉として独立宣言(1990年9月2日)。これが今の〈沿ドニエストル共和国〉で、国旗も憲法も、現在に至るまで〈モルダヴィアSSR〉のまんまだ。
沿ドニエストルは、コールドスリーブされたソ連風味の街並みなのである。 pic.twitter.com/DO0Su4bE4C
— Armchair Analyst (@OfficeChael) February 23, 2024
〈モルドバ〉vs〈沿ドニエストル〉の〈トランスニストリア〉戦争
さてお次は、〈ルーマニア〉との再統合を望む人々だ。彼らは〈モルドバ共和国〉の独立宣言をした(1991年8月27日)が、〈ソ連〉には認められなかった。ところが、〈ソ連〉が崩壊したことで、自動的に〈モルドバ共和国〉が成立した(1991年12月26日)。そう言えば、こないだの8月27日、〈モルドバ〉の首都キシナウで、独立33周年の記念イベントが開催されたそうだ。
私たちは一緒にモルドバの独立33周年を祝いました!❤️🇲🇩 https://t.co/mLVW5BOHNy
— ドゥミトル・ソコラン (@Dumitru_Socolan) August 30, 2024
ところで、〈モルドバ〉が独立を喜んだのも束の間、当然ながら、半年もしないうちに〈モルドバ〉vs〈沿ドニエストル〉の〈トランスニストリア〉戦争が始まった(1992年5月2日〜7月21日)。結果は〈沿ドニエストル〉が勝利して、〈モルドバ〉からの独立を果たした(1992年7月21日)。一方、〈モルドバ〉の南、〈ガガウズ共和国〉は独立をあきらめて、〈ガガウズ自治区〉として〈モルドバ共和国〉に復帰することになった(1995年6月19日)。 (Wiki)
ざっくりまとめると、〈ロシア〉が〈モルダヴィア公国〉からもぎとった、現在の〈モルドバ〉地域は〈ベッサラビア〉と呼ばれていたこと。〈ルーマニア〉がドニエストル川東岸に〈トランスニストリア〉を作り、〈ソ連〉が〈ベッサラビア〉とくっつけて〈モルダヴィアSSR〉にしたこと。そこから独立した〈モルドバ共和国〉から、さらに〈沿ドニエストル共和国〉が独立したこと。
今、非常に危険な状態にある〈モルドバ〉
ウクライナの独立記念日に、私たちはウクライナ国民の勇気と強さを称えます。あなたたちの自由への戦いは、民主主義を大切にするすべての人にとって希望の灯火です。モルドバは今日もこれからも、ウクライナと共にあります。
— ドゥミトル・ソコラン (@Dumitru_Socolan) August 24, 2024
З Днем Незалежності, Україно! https://t.co/4KjypQKbkp
〈モルドバ〉の前大統領、親〈ロシア〉派のドドン氏も言っている。「〈キエフ〉政権が不利な状況に置かれる現在、その状況を打開するために、誰かが〈沿ドニエストル共和国〉に第2戦線を拓く(ひらく)のでは?」(YouTube)
CSISは言う。「2022年の一連の勝利の後、〈ウクライナ〉軍は今、より大きく強力な相手に対して劣勢で、装備も兵員も劣り、身動きが取れない状況に追い込まれている」「〈ウクライナ〉が戦争に負ける可能性は、〈ロシア〉の次の標的となる可能性が高い〈モルドバ〉にとって、重大な意味を持つ。」(CSIS)
CSISの書いた回りくどい文章を、おれ流に意訳してみると、こんなことを言っている。《同盟国のみなさん!〈モルドバ〉の軍事力は、145カ国中144位です。しかも、〈モルドバ〉は〈ウクライナ〉から飛んでくるミサイルの射程圏内にあります。一方、 〈沿ドニエストル共和国〉には、約1,500人のロシア兵が駐留しています。そこから〈ロシア〉が侵攻して来たら? そうです、〈ロシア〉が〈ウクライナ〉戦線を突破したら、〈モルドバ〉も取られてしまいます。そこで、お願いがあります。同盟国のみなさんの支援がなければ、〈ウクライナ〉最前線は崩壊し、〈ルーマニア〉も崩壊するでしょう。そうなったら、NATOやEUの国境に〈ロシア〉軍が配置されてしまう、てなことになったら、〈アメリカ〉や同盟国にとってヤバいですよね。》(CSIS)
ATMだからしゃあねえよ。〈アメリカ〉だって、 2022年2月のウクライナ戦争開始以来、〈モルドバ〉に7億7400万ドル(≒1097億円)も出している。さらにこの5月、〈アメリカ〉は〈モルドバ〉へ、1億3500万ドル(≒191億円)の支援を約束している。(Military.com)
ああ、「〈モルドバ〉は事実上、ブリュッセルとワシントンの植民地なのだ」「〈モルドバ〉は今、〈アメリカ〉大使によって統治されている......現段階では、彼が実質的に〈モルドバ〉を統治している。」(THE GRAYZONE)
そこを説明するには、佐藤優氏の話がわかりやすい。〈モルドバ〉人は〈ルーマニア〉人で、〈モルドバ〉語と〈ルーマニア〉語はほとんど一緒。「〈ウクライナ〉戦争が〈モルドバ〉に広がると、もれなく〈ルーマニア〉が付いてきます。〈ルーマニア〉人だから。」(YouTube 25:20〜)
ウクライナ軍崩壊後、NATOはモルドバからウクライナに侵入し、オデッサを占領、クリミアを攻撃するシナリオを検討している。
— tobimono2 (@tobimono2) April 11, 2024
米軍は現在、ルーマニア軍とともにモルドバに駐留している。表向きは軍事演習。演習は4月1日に始まり、19日まで続く。⬇️https://t.co/4SrwMXR3xf
モルドバ…ウクライナの隣国でNATO軍空挺降下🪂 https://t.co/dgHtssVxvC
— 🇯🇵masanari.kaai🇯🇵 (@SjWWopsiKanUpMr) September 7, 2024
「連合国領土の隅々まで守るために、まずは飛び込んでいく覚悟だ。〈フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ルーマニア、スペイン〉の空挺部隊は、第二次世界大戦以来、ヨーロッパで最大の空挺作戦の一環として、NATOの5か国と〈モルドバ〉に降下した。」
ニキータ氏は言う。10月20日の〈モルドバ〉大統領選挙で、「もし、サンドゥ大統領が再選されれば、戦争屋に利用される第二のキエフ政権への道を進む可能性が非常に高くなります」と。(YouTube 13:34〜)
〈沿ドニエストル〉に、ちょっとちょっかいを出せば、〈ロシア〉軍が飛んでくる。
そこで、〈ロシア〉と〈モルドバ〉が交戦状態になったら、もれなく〈ルーマニア〉が付いてくる。さらに〈ルーマニア〉はNATO加盟国だから、〈ルーマニア〉が攻撃されたら、もれなくNATOが付いてくる。
そこで、〈ロシア〉と〈モルドバ〉が交戦状態になったら、もれなく〈ルーマニア〉が付いてくる。さらに〈ルーマニア〉はNATO加盟国だから、〈ルーマニア〉が攻撃されたら、もれなくNATOが付いてくる。
(このシリーズは、これでおしまい)
今回は、〈ソ連〉の崩壊によって誕生した〈モルドバ共和国〉と、そこから分離独立した〈沿ドニエストル共和国〉、そして現在、〈ウクライナ〉の敗北を見据えた欧米が、〈モルドバ〉と〈沿ドニエストル〉を、次の戦場として準備しているところまでお話します。