前号で概要をお示ししたように2002年から2005年にかけて私は電話機リース詐欺に引っかかっていたのでした。それもうかつなことに3度目の訪問販売業者(株)日本システムラインとのやりとりで初めてはっきりとそのことの認識ができたのであり、2005年1月時点のそれまではきちんとは気づいてもいなかったのです。この電話機リース事件が以前記した特集記事を解説する寄稿記事の中で「カルマが返り見事に転倒した。」「NTTの構造改革大量リストラが私にも重大な影響を与えた。」(これについてはいずれ記述します。)と記述していた意味だったのです。
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ー通過儀礼ー リース詐欺の体験 〜第2幕 弁護士事務所にて〜
意外な光景
2005年3月中旬のその日、私は(株)日本システムラインとの最終合意文書を取り交わすため大阪の弁護士事務所に赴いていたのです。
まずこの弁護士事務所ですが、5名ほどの弁護士が勤務している事務所で主幹弁護士(女性)は私の生家の斜め前にある家のご出身です。そしてその家は私の寺の古くからご門徒(檀家)であり、私の家とは昔に(途切れたのですが)血縁関係があったので親戚でもあるのです。何か問題が起きたとき最も頼りになる存在だったのです。既にこの日までに幾度か足を運んで相談を交わしていました。
日本システムラインに対してはすでにこの弁護士事務所から契約無効取り消しの内容証明は送付してありました。また、その訪問トークによる三井住友銀リースとの契約は書類不備で成立はしていなかったことがこの日までに発覚していました。それで日本システムラインとの問題解消これについては簡単な確認で済むものと私は思っていました。弁護士側もそう考えていたのか、その日の応対は私の事件担当の古参弁護士ではなく主幹弁護士の息子さんの若い弁護士が担当することになっていました。私の関心事は既に日本システムラインとのことは終わり、その前の(株)トラストコミュニケーションズ、(株)スクラムとの契約を外すこと、そしてこの電話機リース詐欺の背後にある問題に移っていた状態だったのです。
ところが、午後3時頃と記憶しますが私が弁護士事務所に到着してみると意外な光景が飛び込んできたのです。私がドアを開けると既に日本システムラインの幹部社員が数名来ていました。そしてその社員たちは応対している若い弁護士に口々に何かを欲求し激しく詰め寄っているのです。若い弁護士のほうが圧倒されてタジタジとなっているのです。これは当時の私には非常に意外な光景でした。私は日本システムライン等の悪徳業者は素人相手ならともかく弁護士など法律のプロの前ではそそくさと退散するものと考えていたのです。しかし現実は違っていました。いくら若いとはいえ相手は弁護士です。そして場所はその弁護士事務所の中です。ところが彼らは全くひるんだ様子はなく逆に弁護士をやり込める勢いなのです。「大魚は逃がしたが少しでも分け前は頂くぞ」との姿勢です。弁護士ともやりあった相当の場数を踏んできているのが伺えます。
私が席に着き合意に向けた話し合いが始まります。会話自体は静かで落ち着いたものです。そして結論です。結局、私にとっては決して本意ではなかったのですが幾ばくかの和解金?を支払うことで決着となりました。そして多少不本意とはいえ日本システムラインとの一件は終了し、これはこれで良かったのですが問題はこの後でした。
匙を投げられる
日本システムラインの幹部社員が帰った後、若い弁護士が私に向き合い切り出しました。言いにくそうに。
弁護士:「今後のことなのですが・・・」
私 :「はい」
弁護士:「現在リース料金は月々3万円程度ですね。」「・・・これは法人の経費でまかなえているものですね。」
私 :「はい、そうですね。」
弁護士:「多少高額ではありますがそこまで無理がある数字でもないと思えます。ですから、これはこれで継続される形でどうでしょうか?」
私 :「・・・ということは、トラストコミュニケーションズなど前の契約は無理だと言うことですか?」
弁護士:「・・・難しいです。はい。」
弁護士側から私は匙を投げられたのでした。
前回、事件の概要を記した掲示板で、私のスレッドに対し老コメンテーターが「社会の公正をひたすら信じ、恐れず対処を。そうしたら大概の場合は悪徳業者側のほうが裁判直前に降りてしまうものなのです。」とのアドバイスがありました。それに応え、私は次のコメントをしていました。3月4日の投稿です。
「私自身は、この電話機リースのトラブルの背後に何があるのかを明らかにしたいとの思いもあるので、ある意味、裁判になるのは望むところです。従って弁護士とも「徹底的にやろう」で基本的には一致しています。 幸い、坊主というのは大概時間的には余裕があるので、そのあたりの体力的なところでは問題がないと思っています。(笑い)アドバイスありがとうございました。本当にこれからです。また新たな展開が出てきましたら報告させていただきます。」
私自身はやる気満々だったのです。しかし、私の弁護士側はそうではなかったということだったのです。(無論、弁護士の決断は私の傷ができるだけ浅く済むようにとの配慮からです。裁判で負ければ傷は深く広がります。たとえ正義でも勝算がたたないと顧客の利益を損なうのですから。)帰りの電車に揺られながら私は担当の古株弁護士との会話を回想していました。
金を払ってはならない
弁護士:「相手業者との非常に具体的で詳細なやり取り全てを文書にされているので大変な説得力があります。今回の日本システムラインの件は何とかなるでしょう。」
私 :「トラストなど前の件は?」
弁護士:「実のところ厄介なのです。既に月々相当期間代金を支払っていますね?これだとその契約の内容を認めたものと裁判所は判断するのです。日本システムラインの場合はお金を払っていないから錯誤だと主張でき、何とかなるわけです。」
私 :「えっ!?私がまとめた文書を読めば業者が騙しているのは明らかではないですか!!」
弁護士:「(怒気を含んだ私の声に)分かります。勿論私は良く分かります。しかしあの人たち(裁判員)は違うのです。実はすごく変な人たちなのです。1,2回の支払いなら「錯誤だ」との声に耳を向けるかもしれません。しかし相当期間支払ってしまうとそれだけで判断します。途中の経緯など大概が見向きもしないのです。変人の裁判官の様子を良く注意しなくてはならず私たちも苦労するのです。でないと裁判で勝てませんから。」
私 :「えー!そんな常識がないのですか?騙されない限り、わざわざ自分が大損する契約書に判をつくはずがないではないですか!」
弁護士:「おー!なるほど。今のはあの人たち(裁判官)も「おや!」と聞くかもしれません。「損が分かっていて判はつかない」は。」
私 :「この電話機リース詐欺の問題、全国で沢山の表に出ていない被害者はいるはずです。これは単に悪徳業者だけの問題ではなく、おそらく背後にもっと大きな問題が隠れていると思います。これらも明らかにしていきたいと私は考えています。」
弁護士:「わかりました。ともあれ頑張って対処していきましょう。」
電車の中、いろんな事が頭の中に駆け巡り、まっすぐ帰宅する気にはなれず、私は神戸で途中下車したのです。