かんなままの「ぴ・よ・こ・とライフ」(33)社会の平和

かんなままさんの執筆記事第33弾です。 
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かんなままの「ぴ・よ・こ・とライフ」(33)社会の平和
離婚をしたり、片親が亡くなってしまったり、一番弱く苦しんでいる立場の親子がいます。その子ども達が心に傷を受けないでしっかり育つことまで考えられるのが、本当にいい社会です。金銭的なサポートだけでなく、心のレベルのサポートができないと、成熟した社会とは言えないのです。

出典:「ぴ・よ・こ・と2」竹下雅敏(著)



離婚した外国籍の3人の子どもがいるママ


2016年の統計で日本は3組に1組の割合で離婚しているという衝撃の結果が示されました。でもこれは調査年の結婚数と離婚数を単純に比較した場合で実態ではありません。でも確実に離婚は増えており、ピークは30~34歳で、熟年離婚は40年前の10倍になっているそうです。

それぞれに深刻な事情があるでしょう。そもそも結婚しない方が良かったカップルもあり、それが傷になるのではなくお互いの幸せのためのステップならOKだと思うのですが、現実は厳しいものがあります。

外国籍の3人の子どもがいるママはパパと何度もやり直そうと話し合いを重ねて頑張ってきましたが離婚することにしました。でも、子どもと離れることは考えられません。子ども達もママがいいと言いました。

pixabay [CC0]


アパート探しも外国籍でひとり親というだけで貸してくれません。保証人が必要ですが日本人は誰も保証人になってくれません。「私は悪いことしません。誰も信じてくれない」と泣きました。

今までは大きくて素敵なお家に住んでいたのですが、やっと小さなアパートを見つけて4人で暮らし始めました。中古の軽自動車を買い、子ども達を育てるために朝から晩までパートで働き始めました。

手取りは10万ありません。児童扶養手当、住宅手当、医療費助成や就労支援などを受けながら、狭いながらも楽しい我が家でした。子ども達の洗濯物を畳むときも穏やかな幸せを感じると言っていました。

でも、子どもはまだ保育園と小学生。病気をしたり学校の出ごとで仕事を休む日も多く、理解してくれていた職場からも迷惑がられていきました。苦しいながらも将来の事も考えて高等職業訓練給付金を受けながら専門学校に入学して資格を取ることにしました。

「子どもが小さいからまだ無理だよ。相当な覚悟がいるよ」とアドバイスしましたが「今の生活から一日も早く脱出するために頑張りたい」と気持ちは揺らぎませんでした。自分のお店を持てば、仕事しながらでも子ども達が帰って来た時に家にいてあげられると思ったからです。


苦境に立たされる独り親と犠牲になる子ども達


朝早く起きて家事をこなし、上の子ども達に学校に行くように伝えて子どもより先に家を出ます。保育園に下の子を預けて自分の学校に着くのが7時半です。10代の若い生徒に交じって慣れない授業。それも日本語です。辞書を片手に頑張りましたが習得するのに人の何倍も時間がかかります。家に戻ったら勉強ができないので時間ぎりぎりまで学校で過ごし、保育園に迎えに行き、夕食の準備です。子どもが寝てから夜中まで宿題。土日はパートと勉強。夏休みは補講。パート・・・。

学校の試験も重圧です。PTAの役員もまわってきています。学校があるのでいけない日が続くと他の保護者からクレームが来ます。無理が重なって眠れなくなってしまいました。料理上手だったのに食事の準備も滞り、買ってきたもの、家にあるものになっていきました。不安で食欲がなくなり、考え込む時間も増え、眉間にしわが刻まれていきました。

pixabay [CC0]


同時に子ども達も落ち着かなくなりました。

お姉ちゃんはもうすぐ中学生。ママを喜ばせようと猛勉強を始めました。一緒に勉強している友達が私立中学校を目指しているので行きたいと言うようになりました。「今日は1番だった。褒められた」とママに喜んで報告します。経済的に私立にやる余裕はありませんが、それを知ったらやる気をなくすかも、と心配です。でも、事実は早めに伝えなければ酷です。きっとお姉ちゃんはママを喜ばせたい一心でしょう。その気持ちを受け取りながら、私立に行く必要がないことを話して、これからの事を一緒に考えたら?とアドバイスしました。

下のお姉ちゃんは、別の反応を示します。ママを責め始めました。責めたくて責めているのではありません。ママを敏感に感じて不安になった上に、現実の生活の不満やつらさを抱えきれなくなったのです。

「パパの方が良かった!なんでこんなぼろアパートにいなきゃいけないの?」と言われて傷ついてしまいました。子ども達のためと言いながら頑張ったけど結局子ども達を悲しませている自分。公的な給付金をもらっているので頑張らなければと思いますがエネルギーが湧いてこなくて立ち上がれなくなってしまいました。

そんな話をしながらぽろぽろ泣くので、それを見た一番下の子がママに抱きついて離れません。この子も不安です。

もう限界です。学校に行き続ければ今の状況が2年続きます。このままだと子ども達も自分も壊れる。
ママは「学校を辞めます。どちらを取りますか?と言われたら私は迷わず子どもを取ります。子どもにとって今はとても大事な時です。」と言い切りました。


心のサポートのある成熟した社会への願い


私は彼女の保証人であり、身元引受人です。彼女がまっとうな人ですと保証する人です。だから、その選択を聞いて保証人になったのは正しかったと思いました。事が起きた時に何をどう選択するのか?社会の責任を重視するのか?子どもの幸せを取るのか?答えは決まっています。

でも社会のペナルティは逃れられません。今まで給付された学費は全て返金です。「早く楽になりたくて夢を追ってしまいました。焦りました」と反省しました。この学びの学費は高かったけど、子どもの幸せはママが傍にいることだと確認できました。

でも、辞めた後も大変です。なかなか正職に付けません。子どもは思春期に向かい、関係づくりが難しくなっていきます。ママ自身、一度落ち込んだ気力と体力を奮い立たせるには何倍もエネルギーがいります。眠れない日が続きます。どうすればいいのか先が見えません。

ママに、この記事を書いてもいいかと尋ねたら「書いてほしいです!私の例を多くの人に知ってもらって、理解してもらって世の中が少しでも良くなると嬉しいです」と言ってくれました。

このようにひとり親で苦境に立たされている人のなんと多い事か!
そしていつも子ども達が犠牲になってしまいます。

すべての子どもは健やかに育つ権利があります。親は第一義的責任がありますが、それができない時は国がそれを援助、支援しなければならないと子どもの権利条約に謳われています。今は経済的サポート、就労支援が始まったばかりです。まだまだ十分ではありません。本当はこの逆境の時にこそ乗り越えるための心のサポートが必要だと痛感します。寄り添って励まし支援する社会の愛が不可欠です。

そんな時に愛を受けて立ち上がった人は弱い立場の人にお返しすることを知っています。どうか愛のサポートが響き渡り、成熟した社会になりますように!!

pixabay [CC0] 1 & 2



Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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