[第42回] 地球の鼓動・野草便り 虫と植物


虫と植物

虫が卵を産んだり、越冬する場所を観察すると、草刈りをせず、種が出来ている草陰や、剪定しても焼却せず放置してある倒木の枝など、今の田舎ではほとんどない、我が家ならではの場所です。

草刈りをされる要因はいろいろですが、中山間地域の補助金というのがあり、草を綺麗に刈っていなければ、下りないのです。それにお互い草を生やすことが恥というように、神経質にもなっておられるようです。過疎化対策もあり、町の美化の為にと、年に数回も草刈りを徹底的にされます。あるいは定期的に除草剤を撒かれます。
草を生やすと害虫や蛇の温床になると思い込んでおられるのかもしれません。

ところが自然はバランス良く出来ていて、虫は鳥の餌になったり、カエル、トンボ、クモなども虫を食べるので、人間が農薬や化学肥料などまかなければ、また窒素過多の不健全な土壌にしなければ、害虫の被害はほとんどありません。蛇も意外と草刈りされた日当たりの良い、ちょうどピクニックにお弁当を座って食べるような場所を好むようです。

私の子供の頃は、道路脇に草がいっぱい生えていて、草で遊びながら歩いていました。
草や虫がこれほどまでに目の敵にされるようになったのは、いつ頃からでしょうか?

ほんとに人間のことしか考えていませんね。それも経済優先ではなく、本当の意味で人間のことを考えれば、微生物がたくさんいる健全な土壌に、草や虫、鳥や動物がたくさんいる豊かな生態系の自然のある方が、人間にとっても健全で良い環境だとわかるはずなのですが。

ヒカゲチョウの脱け殻がありました。家の石垣の側に生えているジュズダマの葉裏についていました。

ヒカゲチョウの蛹の脱け殻


同じジュズダマの近くの葉には、越冬中と思われるヒカゲチョウの新しい蛹がありました。

ヒカゲチョウの蛹


桑の木が大きくなりすぎて、小屋の屋根を壊しそうで伐らなくてはいけなかったのですが、切り倒された太い幹から新しい芽が出ていました。その木にゴマダラカミキリが卵を産み付けていました。

ゴマダラカミキリの産卵


近くの枝にはカタツムリが棲み着いています。12月になって雪が降り始めた頃のことです。
夏には、バケツ稲にトンボが来たり、カエルが棲み着いていたり、年中色々な鳥もやってきます。

カタツムリ


ちょっと呆れられるような庭ですが、お気に入りの草が、かわいい花を咲かせ、何種類もの蜂や蝶が来て蜜を吸い、受粉して種をつけます。草の実は鳥のご馳走になり、虫の食事になり、残りの種がまた来年の草になります。

植物の生え方を見ていると、植物同士のコミュニケーションがあり、棲み分けているような気がします。単純に勢力争いをしているようには見えません。虫ともコミュニケーションがあり、自然界はみんな意思疎通があるのではないかと見えてきます。人間の感受性が退化して、自然との意思疎通ができなくなったのかなと思います。


いえいえ、自然を愛する情緒豊かな方はたくさんおられますね。私も最近まで虫のことはあまり気がつきませんでしたが、観察会などに参加すると、とても詳しい先生方が教えてくださいます。
植物に詳しい方、どうしてここに生えているのか、そのルーツまで話されます。鳥や水生生物の先生もおられます。

そういえば以前日本熊森協会に参加していた頃のこと、「私は虫です」と話をされる大学教授がおられました。ほとんど毎日のように山に入っていて、熊にも1,000回以上(?)出会い、熊も覚えていて警戒しない・・・というようなお話もされていました。当時はえっ?!!とびっくりして、おかしくて笑ったのですが、今なら虫の可愛さがわかります。


蚕を数匹いただいて飼ったことがあり、その時に虫の気持ちが少しわかるようになりました。
絹糸をとるのは普通は蛹を生きたまま湯がいてしまいます。それがいやで、繭からカイコ蛾が穴を開け出たあとの残った繭から、真綿にしてそれを纈(シボ)のある糸にできるのを知りました。味わいのある紬糸になります。なので蚕の増え方が尋常ではなく、和紙などに産み付けた卵は1匹が何百個も。それがある日ゾワッと動き出し、桑の葉を求めて移動し、葉に登って食べ始めます。

小さな点ほどだったのが次第に大きくなり、食べ方も旺盛になって、夜中にも桑の葉が足りなくなって、とりに行かなくてはならなくなりました。一時期、家中蚕?というくらいになって、外の桑の木に網やテントを張って放しました。蚕は飛べませんし、口が退化していて蛾になってからは何も食べず、交尾して子孫を残すだけです。自然界では生きていくのが難しいほど人工飼育化されています。たまに桑の葉っぱについてきた茶色っぽい野蚕がいて、飛び去っていきます。

テントのない木に置いた繭から出た蛾は、鳥や蜂やカマキリなどの格好の餌になり、ほとんどいなくなってしまいました。カマキリがさも美味しいと笑っているのを見たことがあります。それでも中には生き延びていて、今年一つだけ繭を見かけました。

蚕を飼うまでは虫が可愛いと思ったことはありませんでした。中に病気になった蚕がいると、仲間から離れて桑の葉のないところで死にます。卵が増えすぎないように生まれてきた蛾を雄と雌と分けたりしましたが、それまでは蚕が喜んで信頼してくれていたのに、信頼を裏切った感がありました。時たま相手を見つけられない雄がいましたが、子孫を残すことが一番の喜びだったに違いありません。

昔は蛾が家の中に入ってくると、急いで袋をかぶせて捕まえて外に出していましたが、この頃は、蛾を見ると、蚕蛾かもしれないと嬉しくなります。猫やクモに捕まらないように、同じように逃がしても、以前とはまったく気持ちが違います。

色々な虫が少なくなっているのは確かですね。虫や生き物の生きやすい世の中は、人間が優しい世の中だと思いませんか?


yasou
自然賛歌

天然杉

杉の雌花と雄花・・・在来の天然杉の花粉は花粉症になりにくい


無患子(ムクロジ)・・・今年は実が見つからない

 鹿子の木(カゴノキ)・・・神社の杜の古木

銀杏の古木


キヅタ(フユヅタ)・・・葉っぱの形が色々に変化・・・花期は10~12月頃、アイビーはセイヨウキヅタ


キヅタ(花)


キヅタ(葉の変化1)


キヅタ(葉の変化2)


キヅタ(葉の変化3)





■ 参考文献

イー薬草・ドット・コム
「大地の薬箱 食べる薬草事典」 村上光太郎/著 農文協
「カラダ改善研究所 自然のチカラいただきます」中村臣市郎/監修 西日本新聞社



ライター

ニャンニャン母さんプロフィール

ニャンニャン母さん

プロフィール:1955年魚座生まれ、広島の県北 中山間地域在住、
体癖はおそらく2ー3種

20代の頃「複合汚染」有吉佐和子/著 を読んで、食の環境悪化を考えた時、野草を食べることを思いつき、食料としての野草研究を始める。
全くの素人ながら、健康住宅の設計事務所に入社し、健康住宅を学ぶ。
残された人生と限られた時間について気付かされ、仕事を辞め、自給自足を目指す。
平成22年頃、古民家を借り、Iターン。野草教室を開催。
「古民家カフェ・むす日」「山のくらしえん・わはは」「クリエイティブ・アロマ」等にて野草教室。

現在、野草好きになった87歳の母と、無関心な33歳の長男と猫3匹と暮らしています。

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