ぴょんぴょんの「憲法改正前夜」

 「 前夜 」(現代書館) は長くて、読むのがしんどかった。通して読むのが精一杯。しかも、憲法なんて苦手中の苦手の分野。
 しかし本の最後のほう(P322)で、梓澤(あずさわ)氏がこう語っていた。
「普通の人が普通の言葉で、この(憲法改正)問題を自分の生活のところに引き寄せながら語り合うなんて、おもしろいなと思いますけどね。」
 なるほど「普通の人が普通の言葉で」書くとどうなるか。試しにやってみよう。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「憲法改正前夜」


世界が平和であることが理想の現行憲法


くろちゃんが本なんか抱えて、あはは・・似合わないねえ。

うっせえ! おれもしかたなく、読んでるんだよ。

なんて本? 辞書みたいに分厚いね。

「前夜ー日本国憲法と自民党改憲案を読み解く」

くろちゃんが、にほんこくけんぽう?! なに、カッコつけてんの〜ゲラゲラ!

好きなだけ、笑ってくれ! ま、おれの尊敬する山本太郎・参議院議員がさあ、「前夜」を読みましたって、カッコ良く話してたんだよ。それでおれも、マネしてみたの。

そっかあ、山本太郎も読んでるのかあ〜。
でもさあ、憲法改正ってそんなに大変なことなの? 
古くさいのを現代に合わせて新しくするって、いいことなんじゃないの?

おめえ、ほんっとにいつも、感動するくらいに無知だなあ。
おーし、おれが教えてやろ! 耳かっぽじって、よおく聞けよ!

まず憲法の前文。
ここ、めんどくせえから飛ばしたくなるが、なかなかいいこと書いてあっぞ。
初めに、過去の戦争の反省。そして、二度とそういうことが起こらないように決意した上で、主権が国民にあるって宣言してる。
ところがだ! 自民党案の前文は、しょっぱなからこうだぜ。
「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇をいただく国家であって・・・」

WikimediaCommon[Public Domain]

いきなり、天皇をいただいちゃうんだ!? すでにもう、ヤバい感じ。

さらに現行は、日本だけじゃなく、世界が平和であることが理想だと言ってる。
「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。」で締めている。平和に関して、力がこもってるのがわかるか?

すばらしいね。これが本来あるべき日本の姿って感じ。

一方、自民党案。
日本が「今や国際社会において重要な地位を占めており」ってふんぞりかえってる
し、「国と郷土を誇りと気概をもって自ら守り」、「和を尊び、家族や社会全体が互いに助けあって」とか、なんだかムズムズしねえか?

富士山と桜をバックにした、なんとかよしこさんの顔が浮かんでくるね。

だろ? そして、ここもすごいぞ!
現行1条「天皇は、日本国の象徴であり」
自民党案「天皇は、日本国の元首であり」に変わってる。

「元首」ってなあに?

「元首」って「国の首長」って意味らしい。
大日本帝国憲法第4条に、「天皇ハ国ノ元首ニシテ」ってある。

戦時中の憲法にもどってる〜?!

3条、現行憲法にはない文句が、新しくつけ加えられてる!
「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。」
「2,日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。」

こんなの、憲法に書いちゃっていいのお?
それに、2014/11/21の時事ブログでも取り上げられてたけど、「君が代」って日本語じゃなかったよね?


武力の永久放棄の現行憲法と戦争する気満々の自民党案


逆にそうだから、「君が代」好きなんじゃねえのか?
さあ、問題の9条だ。
有名な条文「日本国民は・・・国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は・・・永久にこれを放棄する。」の「永久にこれを放棄する。」が、自民党案では「用いない。」に変えられてる。

「永久の放棄」に比べると、めっちゃ消極的になってるね。

しかも9条2項目。
現行「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
自民案「前項の規定は、自衛隊の発動を妨げるものではない。」

ま、ま、真逆になってる!! 自衛隊発動していいんだ! 
なにこれ〜!! 「戦争したい!」が丸出しじゃない?!

さらに9条には、第二項「国防軍」ってのが新設されてる。
わざわざ自衛隊を「国防軍」て呼んでるのは、栗栖広臣著「日本国防軍を創設せよ」から来てるそうだ。
自衛隊は国民の生命、財産を守るって思ってるだろ? ところが栗栖氏は、そうじゃねえって言ってる。「国の独立と平和を守る」のが自衛隊(自衛隊法)。その「国」ってのは、「天皇制を中心とする一体感を享有する民族、家族意識」であって、「決して個々の国民を意味しない」だとよ。

えええ? 国は守るけど、個々の国民は守ってくれないの? 
それに、「天皇制を中心とする一体感」ってなに? キモい。

次もコワいぞ。
国防軍の軍人、つまり今の自衛隊員が職務違反したり、機密を漏らしたりしたときは、ふつうの裁判じゃなくて「国防軍の審判所」で裁かれるんだと。

審判所? なにされるんだろう?。

石破ゲル閣下が、BS−TBS(2013.4.21)で、こうのたまったそうだ。
「国防軍審判所は非公開」 「いまの自衛隊法では命令に従わない隊員に対し、目いっぱいでも7年の懲役刑しか課することができない。しかし(出動)命令に従わなければ、その国における最高刑、死刑、無期、または懲役300年、そんな目にあうのなら出動命令に従おうということ。」

こわ〜い! ゲルこわ〜い! 密室裁判で、何されるかわかんないね。

次行くぞ! 12条 
現行「この憲法が国民に保証する自由及び権利は・・・常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。」
自民案「自由及び権利には責任が伴うことを自覚して、常に公益及び公の秩序に反してはならない。」に変わってる。

梓澤(あずさわ)氏も指摘してるが、「公共の福祉」という言葉がすべて消されてしまって、「公益及び公の秩序」に変わってるんだ。これもや〜な感じじゃねえか?

「公益及び公の秩序」。泣く子も黙る「治安維持法」を連想しちゃうよね。


日本国籍を持たない外国人には生存権を保証しない自民党案


次もキモいぜ、21条。 
現行「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保証する。」これはそのまま。ただ、自民党案は21−2を新設してる。
「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。

「公益及び公の秩序」アゲイン。
この一句で、ぼくたちを身動きできないように縛りたいんだね。

22条。 
現行「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」
自民案「全ての国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。」

これじゃあ、日本国籍を持たない外国人には、自由がないわけ?

梓澤氏「改憲案は、日本の国籍を持たない外国人には、仮に日本人と同じ生活をし、同じように税金を納めていても、生存権は保証しないということをうたっている。この外国人の扱いについて、改正草案の中で、ずっと一貫した思想が貫かれている。」

pixabay[CC0]

なんか、ヤバい感じ・・・

24条に新設された条文もヘンだぜ。 
「家族は社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は互いに助け合わなければならない。」

この流れだと、素直に受け取れないよ。きっと昔の日本みたいな、家族制度を復活させたいって言ってるんだろうなあ。あったかい家族じゃなくて、家長には絶対に逆らうな、家族は絶対服従ってやつ? やだよ、そんな古臭いの。

そうさ、いかにも、家族の単位が大切って聞こえるけど、映像配信の「夫婦」「親子」で言ってるのとはちげえよな。
澤藤(さわふじ)氏「家庭が君主制度のモデルになっているわけです。」

あたたかな家族の集団が、世界の平和をつくるって思うけど、これって憲法に書くべきことかなあ。

36条。 
現行「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」
自民案では、この「絶対に」が抜かれてる
んだ。
梓澤氏は、小林多喜二の話をしたあと、「なぜ『絶対に』を抜くんですか! この自民党改憲草案は! 許せないですね、僕は! これを書いた人たちが!」とシャウトしてる。

こんな人たちに権力を持たせたら、絶対にあぶない!


非常時にやりたい放題できる「緊急事態法案」


93条。 
現行「地方公共団体の長、その議会の議員・・・は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」
自民党案の94条「当該地方自治体の住民であって日本国籍を有するものが直接選挙する。」ここでも、外国人の排除が見え見えだ。

ナチスのときの、ユダヤ人の扱い方に似てる。

そして次が、これから問題になる「緊急事態法案」だ。 
梓澤氏「 自民党案98条と99条は、戦争、内乱、自然災害の場合に内閣総理大臣が緊急事態宣言を出すことができること、国、その他の機関の指示に従う国民の義務を謳っています。

非常時は、国とか自衛隊とかが絶対権力を握って、やりたい放題できるってことだね。

WikimediaCommon[Public Domain]

それこそ、文字通り何でもできる。
内閣総理大臣の一声で、面倒な国会を通さずに、自衛隊も、警察も、国民の金も、思いのまま。やりたい放題できるってことよ。
関東大震災のとき、緊急事態に乗じて、権力を握った軍隊が、虐殺行為を行ったのは知ってるか? 社会主義者や朝鮮人が標的にされ、およそ7〜8000人が殺されたって書いてある。

そ、そんなにたくさん! 地震よりも権力の方がコワい!

次が、「3分の2」が問題になってる96条。
自民党は、ここを変えたくってジリジリしてる。
現行「この憲法の改正は、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。特別の国民投票または国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」
自民案100条「この憲法の改正は、・・・・・総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。」
梓澤氏いわく「私は現行憲法96条を公権力暴走システムと呼んでおります。

もともと選挙で、2分の1の票を獲得して公権力を握るんだもんね。それが同じ2分の1の賛成で良かったら、らくらくと憲法変えられちゃうもんね。

おうよ。3分の2で縛ることで、改憲をむずかしくしてくれてるんだ。
澤藤氏「国民が国家権力をつくるんだけれども、一旦できた国家権力は国民に対して敵対するという側面がある。その国家権力を暴走させないよう縛るものとして、つまりは権力制約の装置として憲法というものがある。

そういう意味で、今の憲法はちゃんとブレーキをかけてくれてる。ありがたいことだね。

ところで最悪、憲法改正が国会を通ったとしても、国民投票で阻止できる、って安心してねえか?

うん。国民投票で阻止できるよ!

甘い甘い。外国じゃ国民投票に関する法律があるけど、日本ではまだそれがないって、IWJの番組で言ってたぜ。

なんで法律が必要なの?

たとえば、今の自民党はマスメディアを完全に支配してるだろ? 「嵐」とか使って、憲法改正を肯定するCMでも打てば、若い人はそっちに流れる。そんなこと、マスゴミは大得意だぜ。外国は、そういうのをちゃんと禁止してるってさ。

たしかに。小泉人気のときもそうだった。そうなると、テレビを信じる国民による、国民投票ってのもあやういね。


天皇の名を借りて事をなすのに非常に便利な自民党案


そろそろ疲れてきたけど、この97条は省きたくない、いい文だよなあ! 
「この憲法が日本国民に保証する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」

すばらしい〜〜! なにか心に響くね。憲法がどんなにありがたいものか、わかる。

それがだ! 自民党案ではここがすべて削除されてる!

うそっ! ありえない! 絶句・・

そして最後、
現行99条「天皇・・・国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」
ところが自民案102条「全ての国民は、この憲法を尊重しなければならない。2.国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」

Author:Zscout370[Public Domain]

天皇がいなくなってる! なんでえ?!

天皇は、憲法を守らなくていいんだそうだ。
梓澤氏「利用論ですね。軍人たちが天皇の名において、何かを反平和的なことや憲法に反するようなことをやろうとするときに、それは非常に便利。
岩上氏「天皇の無答責ということを利用して、自分たちこそが無責任で、無答責でありたいと考えている。これは無限の権力を手に入れたいということですね。」

さらに梓澤氏は、徴兵制と関連づけている。
「私は徴兵制ということを、自民党案102条・・・から読み取るんです。
・・・自民党案は、基本的人権の上に『公益、公共の秩序』があるんだから、『その意に反する苦役に服させられない』なんていう抵抗は許されない。さらには『全て国民は、この憲法を尊重しなければならない』とあるんですから、これでは徴兵制を敷くことが、憲法に違反しなくなる。そこが大事なんです。」

そうくるんだ! 徴兵制、あり得ると思う。

さあ、これで大体のとこ見てきたが、どうだ? 
これでもまだ、「憲法改正? 別に〜 いいんじゃな〜い?」って手放しでいられるか?

最初っからすでに、ヤバい感じでドギマギしちゃったよ。
みんなに知らせて、早くなんとかしなくちゃね!!!

ぴょんぴょん

Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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