ままぴよ日記 66 「ママ退院。私は右手に大根、左手に鍋をもって出動です」

 2回目の緊急事態宣言が延長されました。

 巣籠りを強いられる日々です。
 でも、赤ちゃんがいる家庭は昔から巣ごもり状態でした。それは家族からも社会からも守られていたからできたことです。今でも、各家庭が食べ物を得て、子育てや家事を助け合える状態なら、緊急事態でも何ら変わることなく赤ちゃんを育てる事ができたでしょう。
 でも、現実は悲惨です。
 経済中心の合理主義の社会。自分の生活の術を何も学習していない、お金も支援もない弱い立場の親子が追い詰められています。
 そんな家庭への経済補償は叫ばれても子育て補償は後回し。
 支援者として、そんな子育て状況が気になります。
 でも、できない事を世間に向かって嘆くより、今、私にできる事をするしかありません。

 そんな私の胸をガシッと鷲づかみにして、私にできる事を与えてくれた孫達とお嫁ちゃん。気が付いたら手にお鍋を握っていました。ありがたいことに自然は変わらず営みを続けてくれているので、安全な食材が手に入ります。イソイソとお料理を作る日々です。
(かんなまま)
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ママが産婦人科から退院してきました!


子ども達は学校に行っています。私も午前中に子育てセミナーがあったのですぐには行けませんでした。セミナーが終わって一目散に息子の家に向かいました。

トッポンチーノの日本版の赤ちゃん布団にくるまれた赤ちゃん!小さな手、大きなあくび、歯が生えていないお口…なあんてかわいいのでしょう!!手をしっかり洗って抱かせてもらいました。「初めまして!私がばあばですよ。どうぞよろしく。あなたに会えるのをずっと待っていましたよ」と話しかけました。

ママも元気そうです。「家事は私がするから寝てなさい」というのですが、自分の家に帰ればなかなか寝てばかりもいられません。お昼ご飯を食べたら、あっという間に小さいお兄ちゃんが帰ってくる時間になりました。バス停までお迎えに行くと、すぐに「ママは?」と聞いてきます。「おうちにいるよ!赤ちゃんも!」と言うと駆け出しました。


それなのに、玄関でママの靴を発見すると、脱いだ靴をゆっくり揃え、手を洗い、カバンを所定の場所に置いて(日頃はしない)…手を広げて待っていたママのお胸にもじもじしながら飛び込みました。恥ずかしいやら、もったいぶるやら、嬉しいやら…、ママから留守中の我慢をねぎらわれて大満足のお顔。そして、赤ちゃんをちらっと見てチョンと指でつついただけで、お気に入りのおもちゃで遊び始めました。動物のフィギアが大好きで、1人何役もこなしてブツブツつぶやきながら自分の世界に浸っています。

お姉ちゃんが帰ってきました。ずっと頑張って学校に行っていたのでママの顔を見たら涙が出てきました。しっかり抱きしめられてホッとした様子です。そしてすぐに「赤ちゃんを抱っこしたい!」と言いました。まだ首も座っていない赤ちゃんですが、これはお姉ちゃんのためにもいい経験です。

「さあ、ここに座って、クッションを周りに置いて、抱く準備をしようね」と、抱き方を教えました。「赤ちゃんはまだ首がぐらぐらだからしっかり支えて抱かないと危ないのよ。できる?大丈夫?」と聞くと大きく頷きました。

「わあ!うまくできたね。上手だよ。きつくなったら交代するからね」と言いました。8種体癖のねじれちゃんなので、にこりともしないで抱いていますが、赤ちゃんのほっぺや小さな手を触りながら満足そうでした。

こういう場合は「ダメダメ、赤ちゃんがもう少し大きくなってからね」と、やる気にブレーキをかけるよりも、配慮することをきちんと伝え、その環境を整えてあげて、お姉ちゃんになりたい意欲を後押ししてあげる事が大事だと思います。

次はお兄ちゃんが帰ってきました。妹や弟が伝書鳩のように玄関に走っていき、「ママが帰ってきているよ!赤ちゃんも!」と、自分が先に会った事を嬉しそうに話しました。お兄ちゃんは、さすがに「ママ、抱っこ!」とは言いません。むしろママをチラッと見て、赤ちゃんに駆け寄り「ちっちゃあああ~」と叫びながら顔を見たり手を見たり・・・。



ママから「抱っこしてみる?」と言われて恥ずかしそうに「うん」と、うなずきました。同じようにソファーに座って、抱き方を伝授しました。上手です。弟を抱いたことがあるので覚えていたようです。余裕で赤ちゃんのお顔を覗き込んでいました。

そんな子ども達の様子を見て、ママも嬉しそうです。子ども達も留守中に頑張ったことをママに労われて満足そう。そして、気になっていた質問をしました。「ママ、痛かった?赤ちゃんが生まれてきた場所を知ってるよ。」と。

ムンメルの絵本を見せた事を話していたので、ママは「痛かったよ~。赤ちゃんが大きかったから(3800グラム)大変だった。でも赤ちゃんも上手に生まれて来てくれたよ」と話してくれました。みんなが生まれた時の事も話しました。

小さいお兄ちゃんは、やきもちを焼いて赤ちゃん返りをするかな?と心配していたら淡々としています。まだ自分の世界で遊ぶ事の方が面白いらしくて赤ちゃんにはあまり興味がないようです。でも、お兄ちゃん達が赤ちゃんのお世話をして、ママに「ありがとう」と言われているのを聞いて、自分も役に立とうと思ったらしいのです。

突然「ママ、赤ちゃんを落としてみて!僕がキャッチしてあげるから!」と得意そうに腕を伸ばしました。あまりにもあっけらかんと言うので、ひっくり返りそうになりました(笑)。慌てて「赤ちゃんを落としたら死んじゃうよ!それはやめておこうね」と言いましたが、本人は不満そう。ああ~怖いなあ。

やはり4歳では赤ちゃんが突然やってきて、生きているという実感を持つことができません。悪気がないだけに、突然実行に移すことがあります。赤ちゃんの口に食べ物を押し込んだり、1人で抱き上げたり、遊ぶつもりで馬乗りになったり・・・。

その行為だけを見てママから叱られたり、禁止されたりする子が多いのですが、なぜダメなのかを理解しないまま怒られた事だけがショックで傷つきます。そして、屈折した気持ちが赤ちゃんに向けられて、隠れて意地悪をするかもしれません。丁寧な対応が必要です。これも要注意!

そうこうしている間にも、赤ちゃんは何度もおっぱいを飲んで、おむつを替えます。そのたびにみんなが集まります。そして抱っこしたがります。自分も嬉しいし、ママを喜ばせたい気持ちもあるのでしょう。でも、抱かせるお世話も大変です。これはママの余裕がないとできないかなあ~。つい「もういいから!」と、言いたくなります。


ま、子どもが4人いるとはこういう事です。始まり始まりです。かつての私も目が後ろにも欲しい!手が4本欲しい!と思ったものです。多胎児を育てているママ達は「最初の3ヶ月は記憶にない」と言っていました。ここは周りがフォローしてあげなければいけません。しばらく腹を括って付き合いましょう。

お嫁ちゃんは、経験上、おっぱいはすぐには出ないことを知っているので、そのストレスはありませんでした。産婦人科から日記を渡されて細かく尿や便、おっぱいの量、時間を記録するように言われて来たらしいのですが、「そんなに書く暇はないし、多分書かない」と笑っていました。

初産のママはこの記録を書きながら、赤ちゃんの姿を見るより数字、記録を見て判断するように方向づけられてしまいます。そして、目の前の赤ちゃんが予定通りにならないので悩み始めるのです。

みんなが落ち着いたので、今度はママが休む番です。母体は大きなダメージを受けています。年齢も高くなっているので回復が遅くなっています。「『閉店しました。失礼します』と言って寝室に行ったら?」と促すのですが、ママ自身も気分が高ぶっているので無理のようです。

理想は体の回復が優先ですが、赤ちゃんのお世話と、絶えず変化する3人の子ども達の要求にも応えられるように絶妙なバランスで動くしかありません。子ども達にも家族の一員として役に立ち、それが自分の喜びとなるように促せたらいいなと思います。他の雑用、家事はできるだけ息子と2人のばあばが引き受けます。

息子は仕事が忙しくて休みが取れないのですが、料理以外の家事は好きなようです。洗濯と掃除、片付けが得意なのを初めて知りました。小児科医なので赤ちゃんのお世話も上手です。自分の弁当も作っている姿を見て安心しました。

赤ちゃんがいると、食事を作るだけでも何度も中断します。私も若い頃は不慣れでしたが、いつの間にか同時進行で家事をする能力が磨かれてきたようです。次に何をしようか?という大まかな段取りはありますが瞬時に体が動くから不思議です。多分、考えて動いていません。

逆に夫婦二人になった今でも同時進行で何品も作る癖が抜けなくて夫から「作りすぎ!」と注意されます。今回は本領発揮です。息子の家に行ったら料理マシーンになって5日分は作り置きします。行ってあげられない日も、お嫁ちゃんが食事の心配をしなくていいように!



コロナ禍で産後鬱が急増している


さて、その日も食事のお世話をした後に、次は3人の子ども達とママのために赤ちゃんを預かりました。久しぶりにママが学校の宿題などのお世話をして、子ども達を寝かせる事ができました。

しばらくこんな日々が続きます。でも、このコロナ禍で無事に赤ちゃんを迎えられたことに感謝です。帰りの車の中で「神様、ありがとうございます。無事に生活がスタートしました」とつぶやいたら、不意に涙が出てきて自分でもびっくりしました。気づいていなかった私の緊張が少しほぐれたのでしょう。

そして、私の気持ちの根底に、今のママ達への不憫さがあり、お嫁ちゃんが私のそんな気持ちを代表で受け取ってくれて嬉しかったのだと思います。そう、予想通り、コロナ禍で産後鬱が急増しているのです。

マタニティセミナーも中止。産婦人科に受診するのも1人。上の子も連れて行けません。里帰りお産も無理。そんな中で陣痛が始まったら一人で荷物を持って入院。出産も1人。他のママ達との会話もなし。そして、家に戻っても感染が怖くて外出もできません。産後の健診相談なども変則的です。

特に初めてのお産の場合は大変です。いったいこれでいいのかどうかもわからない。頼る術もなく自分で全てをしなければならない不安。次第に、かわいいはずの赤ちゃんを疎ましく思い、解放されたいと思う自分。そんな自分への罪悪感。わけもなく涙が出てきます。これが密室で起きているのです。こんな時にそばに寄り添ってくれる人が1人でもいたら・・・。

そもそも、母体の回復と、赤ちゃんのお世話を1人でできるはずはありません。夫の協力もなかなか進まず、授乳の不安、夜も眠れない…が続き、産後鬱になる人が急増しているのです。その現状を知っている医療スタッフもコロナ禍で色々なことに気を使いながら疲弊しています。


医療スタッフが「コロナ禍で母親たちが苦しい状況に追い込まれることはわかっていました。1人も取り残さない。絶対に救います」という言葉は今の私の気持ちと同じで心に響きます。

私の地元でも、1回目の緊急事態宣言の時、私達の提案で始まったばかりの産後ケアのサポート事業が中止になりました。子育て広場も閉鎖になりました。

だからこそ、2回目の緊急事態宣言の時に「もう決して子育て広場は閉めません。サポート事業も辞めるつもりはありません。同じ形でできないときは別の形を考えます」と市に言いに行きました。そして、新しい事業として月に1回ですが、パパも参加しやすいように日曜日のお外遊びの日を作りました。オンラインの産前産後セミナーも配信し始めました。

そんな時に、ツイッターで、こんな漫画を発見しました。


まさにコレ!もう始めている自治体があるのか!…と思ったら夢だって。高齢者のヘルパー制度が当たり前になったように、産後のヘルパー制度も実現させたいと思います。

子育ては指導してできるようになるものではありません。子どもが自分でやる気を出して自分で育って行くように、ママも主体的に必要に迫られて、親にならなければ!と腹を括った時に、自ら親になっていくのです。

ずっと続く子育て。せめて、やる気が萎えないように励まし、支援し続けてあげたいと思います。言い換えれば、ママが我が子を育てたい時に、ママが育てられるように支援してあげるのです。

夜中の授乳と沿い寝で首が回らなくなって痛そうにしながらも「ママのおかげで、心は穏やか~」と言ってくれるお嫁ちゃん。こちらまで幸せになります。


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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