静岡県のツノを横断するリニア
夏休み、どこにも行けなかったから、
YouTubeの旅動画を見まくってたら、こんなのを見つけた。
誰も行かないガチ秘境"静岡最北部"を全力で観光してみた!!
静岡最北部?
静岡と長野と山梨の県境を見に行く動画だよ。
へえ、赤い線が静岡県か。まるで金魚だ。
金魚の背ビレと言うか、ツノのあたりが南アルプスだよ。だから、
県境に行くには、相当、登らなければならない。途中まで走っている大井川鉄道は、アプト式と言う歯車を噛ませて、急勾配を登って行くんだよ。
大井川鉄道のアプト式のラックレール
鉄オタが、ヨダレを垂らしそうな路線だな。
ツノの先まで行くには、
大井川鉄道の終点からバスに乗って、さらにそこから、宿の送迎車に乗って、土砂崩れの道を走るんだ。
車の中でも、ヘルメット着用させられるのか。
車窓からは、間近に子グマが見えたり。ホント山奥なんだけど、
驚いたことに、こんなところに工事車両がいっぱい停まってるんだ。
なんの工事やってるんだ?
リニア新幹線のトンネル工事だって。
リニア?! こんなとこ、走るんか?
見て、リニアは静岡県のツノを横断するんだよ。
ヒョエエ〜〜!!
費用概算額、9兆300億円??
それもビックリだけど、今はそこは置いといてね。おカネじゃなくて地形の話をするからね。静岡に焦点を当てると、こんな感じ。
まさに、ツノを横断しとる!
静岡の川勝前知事が反対していた理由
リニアの工事が進んでないのは、川勝前知事が、静岡区間の工事許可を下ろさなかったからなのは知ってるよね。
川勝前知事
川勝前知事は、なんで反対したんだ?
ことの発端は、JR東海が出した「トンネル工事によって、大井川上流部の流量が毎秒2㎥ 減少する」という予測からだ。これに対して静岡県は、毎秒2㎥ 減少するメカニズムの説明と、トンネル内の湧水を大井川へ戻す対策を要求した(2013年9月)。
う〜ん、静岡県民の生活用水が減ったら困るよな。
実は静岡県、100年前の丹那トンネル工事で、大変な目に合ってるんだよ。
丹那トンネルと言えば、できた当時、鉄道用複線トンネルとして日本最長と騒がれた。
丹那トンネルの工事は、湧水が多くて難航したけど、地下水源を破壊したんだね。
トンネルの上の丹那盆地の水が枯れて、お米が穫れなくなって、飢饉になってしまったんだよ。
丹那トンネルの湧水
そら、反対するのも無理はない。
これに対してJR東海は、トンネルから大井川まで導水路を掘って、6割強の湧水を大井川に戻し、残りは「必要に応じて」ポンプアップで戻すと言った。しかし、川勝前知事は「減少する毎秒2㎥ の全量戻し」をしなければ、着工を認めないとした(2015年11月)。(
東洋経済)
JRには厳しいが、県民の生活を思えば、1滴たりとも水を失えないのは当然だ。
これに答えるようにJR東海は、導水路トンネルとポンプアップで、「湧水の全量を戻す」計画を示した(2018年10月)が、静岡県は「湧水の県外流出を認めない」と主張(2019年8月)。(
東洋経済)
こりゃ、何を言ってもダメだな。
にっちもさっちも行かなくなったJR東海は、東京・品川―名古屋のリニア工事について、「2027年」だった完了時期を「27年以降」に変更した。理由は、静岡県内で着工できるめどが立たないから(2023年12月14日)。(
朝日新聞)
だが、7月から、静岡県知事が変わっただろ? これから、スイスイ行くんじゃね?
鈴木康友知事だね。一応、静岡県区域のボーリング調査にはOKしたらしいよ。でも、この先は見えないね。
鈴木康友知事
南アルプスの活断層地帯の中心にあるリニア区間
南アルプスに、トンネルを掘らなくてもいい方法はないのか?
もともと、リニア新幹線の南アルプス超えは、3つのルートが検討されていたんだ。
でも、当時のJR東海の葛西会長の「実現可能なのは直線ルートだけ」という一言で、Cルートに決定した。
南アルプストンネルは、ツルの一声で決まったのか。
乗ってる側からしたら、直線で走る方が楽だけどね。でも、葛西さんはとんでもない選択をしたんじゃないかな。「
南アルプスの地下では何があってもおかしくないのだ。『世界最大級の活断層地帯』南アルプスのリニアトンネル工事は不確実性の高い難工事となるとわかっている。まさに未着工の静岡工区は、南アルプスの活断層地帯の中心にある。大きな障害だった川勝知事がいなくなっても、リニア工事が順調に進むのかどうか、すべてこれからである。」(
President Online)
活断層の中心にあるだと?
そうなんだ。工事の難しさを、わかりやすく説明した動画があるよ。
探訪!リニア中央新幹線 技術の粋を集めて進む、最新インフラ工事|ガリレオX305回
この図を見て。
トンネル工事が予定される場所には構造線、つまり地層と地層の切れ目の断層が4つもあるんだよ。
わお!
中には、断層破砕帯のような地下水の通路もある。そこは地盤がゆるいので、あらかじめ樹脂のようなものを注入して、補強してから掘るそうだよ。
注入した樹脂は、自然界に影響ないのか?
さあね。
南アルプストンネルは全長約25キロ。土被り(どかぶり)と言って、トンネルから地上までの距離が最大1400mだから、土の重さだけでも、かなりの圧力がトンネルにかかるんだ。有名な大断層、「糸魚川ー静岡構造線」もあるし。
「糸魚川ー静岡構造線」は日本を東西に分ける断層で、硬い凝灰角礫岩と柔らかい粘板岩、その境目に軟弱な粘土や角礫でできた断層がある。
地震でズレるとこじゃねえのか?
それが心配だと思うんだけど、JR東海はそこじゃなくて、それぞれの断層の水分量の違いを心配している。
水の問題が、静岡県のネックになってるからな。
JRが静岡県に提示した、トンネルの湧き水を大井川に戻す「導水路トンネル」は、こういうものらしい。
トンネル内の水を自然に、またはポンプアップで導水路から大井川に流すようにする。でも、有識者会議の福岡教授は、農業用水はトンネル内の深い地下水とつながっていないから、丹那トンネルのようなことはないと言ってる。
田んぼの水は干上がらないと? 学者の言うことを信じていいのか?
リニア工事による水源の水位低下
だよね。どんなに学者さんが緻密に計算しても、
リニアのトンネル工事で水が枯れることは、実際に起きているからね。
静岡は再反対も! リニア中央新幹線のトンネル工事で水枯渇
その一つが、名古屋の手前の岐阜県瑞浪(みずなみ)市だ。
みずなみ、いかにも水が多そうな地名だ。
付近で、リニアのトンネル工事が行われているけど、2023年12月、トンネル内で大量の湧き水が出て以来、井戸水が減り始め、2024年5月に完全に出なくなってしまった。
2024.5.25付けの毎日新聞によると、「リニアの
トンネル掘削工事が行われていた岐阜県瑞浪市では2月、個人用の井戸やため池など計14カ所の水位低下が発覚した。瑞浪市の現場を歩くと、水枯れした井戸を前に立ち尽くす住民の姿があった。
(中略)...『天王様の井戸が枯れるなんて人生で初めてだ』。80代の男性は井戸の底をのぞき込み、いまだに驚きを隠せない様子だ。」
天王様の井戸が枯れた? バチ、当たるぞ?
あわてたJR東海は、水道工事を申し出た。工事費、水道加入料、維持管理費の増加分はJR東海が払う。ところがさらに、複数の井戸とため池で水が減っていることがわかった。JR東海は水道工事、新しい井戸、給水そうの設置も提案した。
JR、必死だな。
大きく騒がれて、せっかく前進しそうな静岡県を刺激したくないからね。でもね、
リニア工事で住民が困ってるのは、瑞浪市だけじゃないんだ。「
岐阜・水源の水位低下 JR東海へ不信感 工事中断で住民との溝深く(岐阜新聞) 」「
山梨・実験線延伸で水枯れ 井戸管理費用の補償30年方針 将来の不安残る(山梨日日新聞)」 「
長野・長引く工事で住民に負担 住宅移転も駅完成遅れ 沿線自治体に不安が広がる」(信濃毎日新聞) 」「神奈川・最も工事進む 夢と現実のはざま 住民の暮らしに影落とす 立ち退きの犠牲(神奈川新聞)」 (
President Online)
川勝前知事がいなくなっても、JR東海は一息つく間もなさそうだな。しかし、こんなに工期が遅れて、さらに水道を引く工事代、井戸掘るカネまで出して、予算が足りるんかい?
南海トラフが起きたら…
また、国が出すなんてことになるかもね。
あの時代は、安倍ぴょんと葛西帝王が蜜月だったから、3億円ポンと出してもらえたが、今はどうだか?
安倍首相
葛西敬之
でもね、そういうことを言うと「南海トラフがあ」とか騒ぎ出すんだよ。
なんで、南海トラフ?
これ見て。
なるほど、真っ赤っ赤の海岸線より、黄色い山ん中のほうがましに見える。
南海トラフが起きたら、東海道新幹線は確実に脱線するよね。
リニアに脱線はない。が、生き埋めの心配があるぞ。それに、電気が来なくなったらアウトだ。
たぶん、電力源は複数にしているし、本道を掘るための予備トンネルも、避難用に残されている。
じゃあ、
生き埋めにならずに生き残ったとして、避難用トンネルをてくてく歩いて、どうやって地上に出られるんだ?
エレベーターがあるはず。
停電だったら?
歩いて上るしかないね。
南アルプストンネルは、地上まで最大1400メートルだったよな? それって、地上47階だぞ? 47階の階段を上れだと? 足腰が悪ければムリ!
でも、避難路は斜めに掘ってあるから、そんなに登ることはないと思うよ。
じゃあ、
運良く出られたところで、雪が降ってたら? 雪の南アルプスなんか、重装備してても遭難するんだぞ? 雪がなくても、下山途中で崖から足を滑らせたり、クマに襲われたり・・。
最悪のことばかり、考えすぎだよ。
そうかな? おれには、パニック映画のシナリオにしか見えんのだが。
Writer
白木 るい子(ぴょんぴょん先生)
1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)
そんな、斜陽リニアの泥沼に足を踏み入れてしまったJR東海は、予定も大幅に遅れ、問題山積みの状況で、これから「南アルプストンネル」の大難関に取りかかろうとしています。