ぴょんぴょんの「AI時代の課題」 ~“人間AI化過程” の学校教育では生きていけなくなる子どもたち

 ある寒い夜、早めにふとんに入ってラジオをつけると、「放送100年 じっくり語ろう日本の未来」という番組が始まるところでした。
 思いがけなくおもしろくて、そこから2時間、最後まで聞くことになりました。しかも、1回だけじゃなくて、さらに明朝、「聞き逃し配信」でもう1回聞いて、耳に残ったところを書き出してみました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「AI時代の課題」 ~“人間AI化過程” の学校教育では生きていけなくなる子どもたち

AIのある日本の未来について語る3人の識者


寒い寒い、雪も積もるし、道は凍るし。

まったく、「なにが温暖化?」って言いたくなるよね。

暖房費節約のために、日が昇ったらふとんから出る、日が沈んだらふとんに入る。

なんか、昔の人みたい。それじゃ、時間を持て余すでしょ。

いやいや、ふとんの中でラジオを聞いとるのよ。テレビを捨ててからとゆうもの、ラジオの世話になっててな。ちょうど今年は、「ラジオ放送100周年」とかで、特別番組も多いし。中でも、NHKラジオの「放送100年 じっくり語ろう日本の未来」は、発言者の人選が良くて、おもしろかった。


中村桂子(89歳):40憶年にわたる生き物の営みを科学的に読み解く「生命誌」研究家。
磯田道史(54歳):独自の視点で歴史を読み解いた数々の著書がベストセラーになっている歴史学者。
安野貴博(34歳):テクノロジーで社会の仕組みを変えていこうと発信を続けるAIエンジニア、SF作家。去年の都知事選で第5位。

で、何を話したの?

AIのある日本の未来について。AIエンジニアの安野氏は、もちろんAI肯定派。生物史研究の中村氏と歴史家の磯田氏は、AI慎重派だ。

それぞれの世代のAI観を代表しているんだね。

その、年齢ギャップを越えた討論がおもしろいのよ。「人間は生き物で自然の一部、機械じゃない」と主張する中村氏は、安野氏に対して、「AIとエネルギー」問題を提起する。

中村:安野さんに伺いたいのは、これからAIって、エネルギーどうなります? 今、ものすごく使ってるでしょ。
安野:はい、ものすごく使ってます。
中村:ね、それで、人間の脳ってね、20ワットなんですよ。
安野:ものすごい、効率がいいですよね。
中村:AIが今使ってるエネルギーって、すごすぎません? 私、このまま行くんだったら、ここに疑問符をつけたいと思うんです。この先、エネルギーを、AIの世界はどうやって解決していくのかな、と聞きたい。

うわあ! ぼくたちの脳は20ワットで働いてるの? なんて、省エネなんだろう!



これに対する安野氏の回答、「同じ計算をするエネルギーはどんどん下がっているが、より賢くなるには、ものすごいエネルギーを使う。ハードウェアのチップの設計、AIを動かすソフトウェアの進化で、効率はよくなりつつあるが、より賢いAIを作ろうとすると、ものすごい量の半導体と、ものすごい量のエネルギーが必要。この10年、エネルギー量は増え続けると思う。」これに対して中村氏は、

中村:縄文時代の人の脳も20ワット使ってたんですよ。今の私たちも20ワットなの。そういうシステムになりませんか? (後略)
安野:(前略)その差も早晩、変わって行くと思いますね。同じ賢さを達成するのに必要なエネルギー量は下がり続けているので。人間の脳より効率的に動くことは十分にありえると思います。
中村:そうですか? 20ワット以下になりますかね?

ここで、一同爆笑。で、場がなごんだ後に、安野氏は言う。

安野:なるんじゃないですかねえ。そこに限界があるとは思わないです。そのときには人間の脳よりも、すごく「賢い」計算をしたがってるはずなので、(後略)
中村:(前略)やっぱり私は、その「賢さ」って何ですか?って問いたいですね。それがほんとの「賢さ」でしょうか?って問いは、やっぱり出てきてしまいますね。

「賢さ」?

安野氏は、計算能力や論理的な正解が出せることを「賢さ」と言っているようだ。一方、中村氏の言う「賢さ」は「知恵」のようなものだろう。違う定義で議論する二人の間に、歴史家の磯田氏が入ってくる。

磯田:大事な論点だなあ。たとえば、量子のレベルのコンピューターにして、エネルギー消費量を落としたとしても、「いっぱい問いたい、使いたい」が増えるから、けっこうエネルギー使うと思うんですよね。そうすると、バンバン原発を作ってね、そこのエネルギーでAIを動かしてみようって作ったけど、AIでもなかなか難しいような廃棄物の山が残るとかね。

なるほど、それはありえるね。原発で悠々とAI動かせても、廃棄物問題がどうなるかが未知数だ。

すると安野氏が、AIは目下、核融合エネルギーの開発に関っており、これが完成すれば、エネルギー問題も解決して、人類にとってプラスになると言う。

核融合発電って、施設も巨大だし、コストもかかるし、放射性物質も出るし、なかなかやっかいだよね。それよりも、植物も鉱物も動物もみんなやってる、常温核融合なら安上がりだし、安全だよ。AIの助けを借りれば、あっという間に実現できるんじゃない?


できたとしても、既得権益からブレーキがかかるだろう。

そういう人たちがいなくならない限り、AIを人類のために使うのは難しそうだね。


AI時代の課題とは


さてお次は、歴史家の磯田氏がAI時代の課題について述べる。約200年前に動燃機関が現れて、蒸気機関から原発にまで発展した。そして今、生成系AIが出てきたことで、「200年ぶりの大変化」が起きている。自分は「200年ぶりの大変化」より前に死んで、見ることはないと思っていたのが、「一番スゲえヤツを見ることになったので、うれしいような悲しいような」と話す。そんな磯田氏は、AI時代の課題を「子どもの教育」だと言う。

磯田:困ったのは、前回200年前は、西洋に、どうやったらいいかの教育モデルもあって、「読み書きそろばん」を高めて、よく勝ち抜いたヤツを帝国大学とかいい学校に入れて、物を生産すればいいんだ、で、話がすんでたんですよ。ところがこれから、どうやって子どもに生きる力をつければいいのか?「脳補助器」「脳もどき器」が現れるときに、それを基底にした社会が現れるときに、子どもをどう教育すればいいのか、っていう課題が、ぼくらに課されている。

AIは「脳補助器」「脳もどき器」?

磯田:(前略)最重要なキーワード、裏テーマは教育なんですよ。そいでねえ、これが困ったことにですねえ、AIが得意なことっていうのは、ことごとく、これまでぼくたちが塾に行って、試験を突破させるようなことなんですよ。つまり、人間をAIに近づけるのが学校であり、入試なんですよ。「人間AI化過程」と言っていいんですよ。そりゃそうですよ。記憶をしてくれと、そいで、記憶したら、定義とか、そういうのを適応してくださいと。それで結果を出す。で、目的が決まっている。

まさに、おっしゃる通り! 学校や塾は「人間AI化過程」だ。

磯田:工業化の段階の、工場で経済を高めてた頃には、効率いいですよ。軍隊作るとか、人間の道具化ですから、きわめて効率よく、それでG7の一角にポンと入ったわけですよ、アジアの国から、ぼくらの国はねえ。だけどですよ、AIがあるのに、AIのまねをしてあれすると、なんか長篠の合戦で、馬防柵のものに、馬で突撃する武田軍みたいなことに、子どもはなりつつあるわけですよ。

長篠合戦図屏風
Wikimedia_Commons[Public Domain]

アッハハハ! 子どもは、鉄砲隊に向かって馬で突撃する武田軍か? つまり、無謀ってことだね。さすが、歴史の先生。

磯田:笑ってる場合じゃ・・もう、自分では笑わないと話せないコワい話なんですよ、私も。で、どうするか? (中略)...どうしたらいいかわかんないから、おそらく早いとこ、子ども、塾入れて、試験突破できるようにして、払いのいい会社の所属にしていくように、いわゆる偏差値の高い大学に入れば、「一流企業」と言われたところの抽選券がもらえるワケですよ。(中略)...それを知っている親は、試験に出る、金太郎飴のような知識を子どもに授ける塾に、お金を、だんだん減ってくる収入の中で払い続けている、という状態なんですよ。恐ろしいですね。(中略)...みんなで金太郎飴にして、同じ知識を持ってると、あっという間にやられるのね。ぼくはマニアックの勧めを思ってるんですよ。


これは鋭い指摘だね。AIとの競争に敗れるとわかっているのに、今まで通りに、子どもに金太郎飴の教育をするために、なけなしのお金を払う。でも、そんなことしてたら、いずれ子どもは、AIに仕事を奪われて、路頭に迷うことになる。

磯田氏は、江戸時代は違ったと言う。あの時代が西洋に追いつけたのは、多様性の社会だったからで、司馬遼太郎も「江戸時代はバラエティに富んだ社会だった」と言った。だから、今までどおりに、金太郎飴のような人材育成をしていたら、半世紀、取り返しのつかないことになると言う。

じゃあ、どういう教育をしたらいいの?

磯田氏も、確たる答えはないと言いながらも、こう言っている。

磯田:ぼくがやり初めて、子どもも興味を持ったのが「虫を見る」。とりわけ、蛾を見てます。なんでかって言うと、彼らが先輩だからです。(中略)...虫を見ていると、子供たちは、簡単に善悪を決められないと。人間の知性と呼ばれるものが、いかに短時間のもので、せいぜい農耕を始めて、都市を作って、身分があるとか、国があるとか、違う人種だと思ったら直ちに攻撃性を増したりとか、他の生き物と比べると非常に特殊で、善悪で断罪することはしないが、昆虫の社会を見ていると、ふしぎな生き物だと子どもが自覚を持つ・・。


なるほどね。子どもに自然に触れさせるってことだね。

いよいよ、かんなままさんの出番だな。そして磯田氏は、戦国武将の思考の底にあるものを推理する。

磯田:戦国武将とか、もっと前の近世の人たちって、この人、わりと深いとこまで考えているな、俗じゃなくて、もっと深いところから立脚して、ものをしゃべったり言ったりするなってのは、やっぱり読んでてもわかるんですよ。そうすると、背景、何なんだろう? 徳川家康。あれ、やっぱりね、禅僧が小さい頃、触れ合ってるのと無関係じゃないと思ってます。禅僧とか宗教の人、すごいこと言うじゃないですか。ぼくも小さい頃、ふしぎな老人に会いましたよ。禅のお坊さんとか。


見えない世界のことを話しているみたいだね。AIによってたくさんの時間が生まれる。子どもたちは自然の中で遊ばせればいい。そして、大人は、内面の世界を探求したらいいかもしれない。

「人間が何をすべきなのか?」は、安野氏が提案する、AI時代の課題だ。

安野:「人間が何をすべきなのか?」が、次の課題になってくると思うんですよ。つまり、知的な労働であるとか、知的な作業であるとか、そういったものの営みが、ほんとうにAIによって、AIの方がパフォーマンスが出るとなったときに、じゃあ、人間て何をしようか。個人としてどういう人生を送るべきか。というのが問われてくるワケです。

ゲームやギャンブル三昧、覚醒剤漬けになって、人間崩壊する人も出るかもしれないし。


実は、この発言の前に、安野氏と中村氏は、「人間の特別さ」「賢さ」を巡ってやり取りをしている。

安野:(前略)AIがもうちょっと賢くなれば、(中略)...AIがAIの研究開発をするようになると言われています。そうすると、人間が間で考えるプロセスを挟まなくてすむようになる。ものすごく、今までよりも早く、AIの研究が進展するんじゃないかと言われていて、科学のパラダイムが変わるワケですよね。(中略)...これを社会側から見てみた時に、今まで人間がある種「特別」だと、(中略)...動物たちとか、他の生き物と違って、なんとなく人間て「特別」だよねって感覚があったと思うんですが、それもある種、人間より「賢い」存在が出てくることによって、ほんとにどうなんだろうかと。ほんとうに自分たちは「特別」なんだろうかって言う、そういうある種の、人類にとっての、アイデンティティ・クライシスみたいなものが発生しうると思っていて、(後略)
中村:(前略)「賢い」っておっしゃった。「賢さ」とはなにか?ってことですよ。大量のものを処理して、統計的に考えて、確率的に考えて答えを出すのが、本当の「賢さ」でしょうか?って言うのが、私の問いです。コンピューターやAIを否定しませんが、人間と比べてどっちが上かと比べるのは、カテゴリーミステイクだと思っていて、比べちゃいけないんじゃないかって。思っています。

う〜ん、ここでも、「賢さ」の食い違いが見えるね。それと、人間は特別かあ?

安野:「賢さ」の一つの測り方は、あるタスクにおいて、どれだけパフォーマンスができたか。(中略)...今いろんなことが数値で測られているからこそ、数値で負ける時代が到来した時に、「おれたち、どうしよう?」みたいな、人類社会全体として、パニックになり得ると思うんですよね。ていう中で、こういう価値があるんだ、我々には、というのを、しっかり説いていく。どういうふうにこの状況を捉えるのか、という考え方が非常に重要になってくるんじゃないかなと思います。
中村:(前略)さっき、「人間は特別だ」っておっしゃったけど、特別なところももちろんあるけども、非常に他の生き物たちも、自分のこと見てたり、鏡見て自分だってわかるとか、お魚だってわかるとか、どんどん近づいてきているんです。人間だけが持っているものって言うと、今言われてるのが、想像力。イマジネーション。ないものを考える。それによって、創造力が出てくる。そこが一番の、生きているおもしろさだと私は思っている。見えないものを見て、新しいものを作り出す。それも、「賢さ」?

たしかに、最近の動物たちは人間より進化が早いからね。ネコなんか、カメラの前で撮られることを意識してるからね。



AIも想像力、創造力を持てるのか


さて、中村氏の言う想像力、創造力はAIも持てるのか?

安野:(前略)人間が創造できるものは、今のAIはまだ難しいかもしれないですけど、将来的にはたぶん、AIも創造できると思いますね。(中略)...人間はこの想像力があるから、人間の特殊性だと思うこと自体が、数十年くらいで、それが塗り替えられた時に、その自信の持ち方はちょっと危ういんじゃないかと思うんですよ。これは今までも繰り返されてきていて、たとえば15年前とか20年前であれば、人間は将棋とか囲碁とかめちゃくちゃ得意だと、機械は計算も早いけれども、「神の一手」は打てないだろうと、すごい創造的な「一手」は打てないだろうって言われてたんですけど、この10年で、それがひっくり返りましたよね。想像力に関しても、同じことが起きると思うんですよ。(中略)... 私たちは、別の自信の持ち方を発見した方がいいと思う。


じゃあ、どんな自信を持てばいいの?

司会者が聞いてくれている。

司会者:結局、私たち人間が、一番問われているんだなというのが、みなさんの意見を聞いててすごく思いましたね。私たちに残るのはなにか?そこを考えないといけないっていうことでもあるなと考えました。(中略)...あらためて安野さんに、このAIの進化に対して、人はどういうふうにあるべきなのかを聞きたい。
安野:ぼくは、「自信を持つ」ことだと思いますね。人が、このAIの時代の中でよく生きる、人生を良くするためには、「自信を持つ」っていうのが一つの答えかなと思ってます。それは、根拠がない方がいいと思います。なにか根拠を置くと、たぶんそれがAIによって、自信をくじかれる場面が出てくるので、根拠のない自信を持って、明るく楽しく生きるのがいいんじゃないかと思いますね。そのためにはたくさん食べ、たくさん寝て、たくさん運動するということじゃないかと思う。そこが自信の基本なのかなという。

う〜ん、これは答になってないね。人間にAIに対して自信が持てる所がないから、苦し紛れって感じ?

じゃあ、おめえならどう答える?

それは、竹下先生が教えてくださっているよ。まずは、人間として恥ずかしくない生き方をすることだね。それには「ヤマ・ニヤマ」を守ること。日常のできごとによって心を乱されない修行をして、心を清めること。これらを心がけながら家族、またはペットを大切にする。彼らの世話、介護を通して、カルマヨーガを行う。

つまりこれから、おれたち人間は、AIによってもたらされる余暇を、霊的な世界の探求に使えばいいってことだな。

東洋医学セミナーや、たくさんの映像配信も用意されていて、学ぶことは無限にあるからね。

「竹中平蔵のような人たちが支配する世界でのベーシックインカムは、人々に“最低限の生活”を保証するもので、世界は一握りの超富裕層と人工知能が支配し、その他圧倒的多数は、生きているのがやっとという、極貧の生活を強いられると思われます。(中略)...まともな倫理観を持っていない人は、生きる意味や人生における価値観をどこに求めたらよいのかがわからなくなり、混乱に巻き込まれると思われます。そうした意味で、死後の世界も含めた生命の実相を知ることが、とても大事なことになると思います。」(時事ブログ) 


Writer

ぴょんぴょんDr.

ぴょんぴょん

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)


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