ぴょんぴょんの「ルーマニア大統領選挙」 ~モルドバに続いて、ルーマニアでも不正選挙の疑いが濃厚

 この記事を書いている5月19日は、ルーマニア大統領選、決選投票の翌日です。
 去年11月のルーマニア大統領選で、国連を「悪魔的」と呼び、ルーマニアが加盟するEUやNATOに批判的なカリン・ジョルジェスクが、23%の票を集めてトップに立ちました。ですが、この選挙は無効にされ、5月4日にやり直し選挙が行われることになりました。
 そこら辺は、ここにも書きました。
 3月、ジョルジェスクは、やり直し選挙に立候補を申し出ましたが、中央選挙局は却下。さらに、ジョルジェスクの立候補が禁止されます。その後、前回の選挙で4位だったジョージ・シミオンが、ジョルジェスクの意志を次ぐ形で立候補。
 5月4日の選挙結果で、シミオンは前回のジョルジェスクを上回る41%の得票でトップに立ちました。が、2位のブカレスト市長ダンも過半数に満たなかったため、5月18日に決選投票が行われました。そして、予想した通り・・・。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「ルーマニア大統領選挙」 ~モルドバに続いて、ルーマニアでも不正選挙の疑いが濃厚

立候補禁止を言い渡されたジョルジェスク


終わったぞ。

なにが?

去年の11月に無効にされた、ルーマニア大統領選挙のやり直しだよ。

ああ、アンチEU、アンチNATO、アンチ国連のジョルジェスク氏が最多票を集めたことで、無効になった選挙のやり直しね。で、ジョルジェスク氏はどうしてるの?

カリン・ジョルジェスク
Author:Focus Creștin[CC BY]

元気だよ。寒中水泳をやるぐらいだからな。

じゃなくて、やり直しの大統領選に立候補したの?

それがだな、今年の2月、ジョルジェスクは「反憲法行為」「ファシスト、人種差別的、または外国人排斥的な思想の扇動」など、6つの刑事罪で起訴された。本人はすべての容疑を否認し、これはルーマニアの「ディープステート」が仕組んだキャンペーンだ、と主張している。RT

だろうね。

3月7日、ジョルジェスクは、やり直し大統領選挙に立候補を届け出たが、中央選挙局に却下された。さらに3月11日、ジョルジェスクは立候補することを禁止された。5年間の立候補禁止を言い渡された、フランスのルペンにそっくり。

じゃ、ジョルジェスク氏に期待した国民は? 投票する人がいなくなったよ。 

実は、前回の大統領選で4位に終わった男がいた。ジョージ・シミオン(38歳)。選挙後、シミオンはジョルジェスクの支持に回り、選挙が無効になった後は、「民主主義が否定された」として、抗議活動を呼びかけた。彼は、やり直し選挙でジョルジェスクが立候補するなら、自分はジョルジェスクを応援し、立候補しないと表明した。それが、ジョルジェスクの立候補が禁止になったもんで、自分が立候補することにした。

ジョージ・シミオン

良かった、ジョルジェスク氏に代わる人が出てきたんだね。で、結果は?

5月4日のやり直し選挙で、シミオンは、前回のジョルジェスクの23%をはるかに超える、41%の得票率でトップに立った。

すごい!


ジョルジェスクとシミオンの共通点と相違点


と言っても、もちろん、ジョルジェスクと全く同じってワケじゃない。

そりゃ、人それぞれ違って当たり前だよ。

2人の共通点は、EUに懐疑的、ルーマニアのウクライナ支援に反対、同性婚に反対など、キリスト教の伝統的な価値観を守るところ。違うのは、ロシアに対する姿勢だ。

ジョルジェスク氏は、プーチンを尊敬していたよね。

ジョルジェスク本人は親ロシア派じゃないと言うが、ロシアのウクライナ侵攻直後に、プーチンのことを「自国を愛する男だ」と言ったことがある。THE HILL)一方、シミオンは、ロシアのウクライナ侵攻後、プーチンを戦争犯罪者と呼び、ロシアに対する国際制裁は不十分と述べている。

う〜ん、違うね。

また、シミオンはこんなことも言っている。「プーチンのロシアは、ヨーロッパ諸国、特に私たち、バルト三国、ポーランドにとって、これまで、そして現在も最大の脅威の一つである。」Wikipedia

ぜんぜん、違うね。

それから、もう一点。あれ?と思ったのは、2023年、ルーマニアがホロコーストに加担したことを後悔し、「反ユダヤ主義との闘い」を約束したと。(Wikipedia

う〜〜ん、若いのか、アホなのか?

とは言え、シミオンは現在、妻と1歳の子と、52平方メートルのワンルームマンションに住んでいる。彼は、2025年大統領選挙の資産申告書で、個人資産が最も少ない候補者の一人だ。Wikipedia

そこは、ちょっと好感が持てる。

そして、野党第2位の極右政党「ルーマニア人統一同盟(AUR)」の創設者で、党首でもある。この党は、同性婚反対、マスク反対、ワクチン反対の路線で、無党派のジョルジェスクを首相候補として支持したり、自分たちの党の名誉会長にしようとしたこともある。実現しなかったが。(Wikipedia

へえ? けっこう、ジョルジェスクのファンだったりして。


シミオン氏の夢みる「大ルーマニア」


ただ、「ルーマニア人統一同盟」の名の通り、シミオンは若い頃から、モルドバとルーマニアの統一を訴える活動をやってきた。モルドバからは、「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定され、現在もモルドバへの入国が禁止されている。(Wikipedia

モルドバの国旗
Wikimedia_Commons[Public Domain]

へえ、お隣りの国から嫌われてるんだね。

だって、彼ら「ルーマニア人統一同盟」の目標はズバリ、ルーマニア民族の統一、「大ルーマニア」だからな。

大ルーマニア?

かつて、1920年のルーマニアは、最大の地理的範囲、295,049平方メートルに達した。しかし、現在は238,391平方km。縮小した主な原因は、お隣りのモルドバを失ったこと。「ベッサラビア」と呼ばれる地域だ。

ベッサラビア? 聞き覚えがあるね。

ここや、ここで話したから、参考にしてくれ。

ベッサラビア
Wikimedia_Commons[Public Domain]

ほとんど、今のモルドバのことだね。

1917年のロシア革命によって、ベッサラビアはルーマニアに里帰りする。この時、周辺のブコビナ、トランシルヴァニアも加わって、ルーマニア民族の「大統一」となった。この最大面積の「ロマニア・マレ(真の、完全なルーマニア)」は、1940年まで続いた。(Wikipedia

「大統一」時のルーマニア王国
Wikimedia_Commons[Public Domain]

これが、シミオン氏の夢みる「大ルーマニア」か。

だが、完全なルーマニアは20年で終わる。ヒトラーとスターリンの「独ソ不可侵条約」によって、ベッサラビアはソ連に戻ってしまう。ナチス政権下、ルーマニアは一時的にベッサラビアを取り戻すが、ナチスが敗北すると、ベッサラビアは再びソ連に戻る。

と言うことは、モルドバを取り戻したいんだ。ヨーロッパ最貧国と言われるモルドバにとっても、ルーマニアと一緒になれば、EU加盟の夢もかなうし、願ったり叶ったりかも。

だが、モルドバにはモルドバの都合がある。ルーマニア人以外も住んでるからな。それを無視して、一方的にモルドバをルーマニアに統合しようとするから、嫌われるんだよ。シミオンは若い頃、ルーマニアのあちこちに、こんな落書きしたそうだ。

「ベッサラビアはルーマニア」
Author:Chainwit.[CC BY-SA]

ベッサラビア、BASARABIAって書くんだ。


決選投票の結果、選ばれたのは…


さて、話を選挙に戻そう。1回目の選挙でシミオンがトップに立ったことは話した。しかし、2位につけた首都ブカレストの市長、ダン氏の得票も20%余りで、どっちも過半数に満たなかったので、5月18日に決選投票が行われることになった。

そこが、なんとなく引っかかるんだよ。

なにがだ?

だって、前回の選挙の時は、ジョルジェスク氏がトップに立って、あわてて選挙を無効にしたんでしょ? なのに今回は、シミオン氏がトップだったのに、すんなりと決選投票に進んだのは、どうして?

はてさて? ジョルジェスクはロシアに好意的だが、シミオンはそうじゃなかったから? ジョルジェスクを推す、国民の声に圧倒された?

よく考えてみてよ。ジョルジェスク氏が大統領になったら、困る人がいっぱいいるから、選挙を無効にして、決選投票をさせなかった。その人たちにとって、ジョルジェスク氏の流れを汲む、シミオン氏が大統領になってもマズいんじゃない?

たしかに。

次の一手は、不正選挙しかないよね。

やっぱ、そう来るか? いや、あれだけの国民がジョルジェスク、そしてシミオンを支持しているのに、無視していいのか?

それでもやるね。

だよな。案の定、決選投票の結果、1回目に2位だった、EU言いなりのブカレスト市長のニクソル・ダンが、54%の得票率で大統領に選ばれた!

ニクソル・ダン
Wikipedia[CC0]
やっぱねえ。

それも、EU言いなりのモルドバが動いていた。

ジョージ・シミオン:モルドバ共和国では大規模な不正選挙が行われている。マイア・サンドゥの腐敗した政府は、ルーマニアの選挙に介入しており、政府機関は、ジョージ・シミオンに対するキャンペーンを積極的に行い、両国の法律を破っている。

だって、シミオン氏が大統領になったら、自分たち、ルーマニアに組み込まれちゃうよ。

サンドゥも、してやったりだ。「EU支持派の隣国、モルドバの大統領マイア・サンドゥはダンを祝福した。『モルドバとルーマニアは共に立ち、互いを支え合い、すべての市民のための、平和で民主的かつ欧州的な未来を目指して、協力していく』と述べた。」(RT

最初っから、こうするつもりだったんだ。

そういうことだな。1回目はシミオンにトップに立たせるが、今回は、決選投票に持ち込んで、不正選挙でケリをつける。

残念ながら、ルーマニアは、この人たちのお仲間に入ることはできなかった。

ルーマニアの人々よ、 シミオンはプーチン、ブチッチ、フィコ、オルバンの部下だ。あなたは、本当にこれらのいじめっ子に支配されたいのか......?

ただ、今回の騒動で、ルーマニアの真の愛国者たちを見ることができた。彼らなら、きっと近いうちに、自分たちの望むトップを選出することができるだろう。

ぼくたちも、彼らの愛国心を見習いたいね。


(期日前)投票の後、国歌を歌うルーマニア人女性


Writer

ぴょんぴょんDr.

ぴょんぴょん

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)


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