注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
キューバの革命家、カストロ前国家評議会議長が90歳で亡くなりました。
ミールターヘル解説員
カストロ氏は、1959年から76年までキューバの首相を、76年から2008年までは国家評議会議長を務めました。また、1965年から2011年まではキューバ共産党中央委員会の第一書記を務めました。
カストロ氏は、中南米諸国や国際分野において、特に冷戦時代の最も影響力のある人物だったと言えます。カストロ氏は、1959年のキューバ革命を主導し、勝利に導きました。しかしその後、アメリカの激しい敵対に直面し、キューバの新政権を倒そうとするアメリカの努力の中で、カストロ氏はソ連寄りの路線を取り、社会主義と共産主義のイデオロギーを選び、キューバ共産党を独裁政党として打ち立てました。
カストロ氏は、中南米における覇権主義との闘争の象徴です。カストロ氏がキューバを支配していた時代、産業や貿易は国営となり、キューバ全体で政府による社会主義的な改革が実施されました。無料の教育と医療サービスに関する改革により、キューバはこの2つの分野で世界の上位に立ちました。
カストロ氏が政治を担っていた間、キューバはアメリカの敵対に晒されていました。アメリカはキューバの革命後、常に、この国に対して敵対的なアプローチを取り、キューバの革命政権の打倒に失敗した後、この国に対する経済制裁を強化しました。
1960年から、キューバの貿易、経済、金融に対するアメリカの大規模な制裁が始まり、現在も続いています。アメリカによる対キューバ制裁は議論を呼び起こすものであり、国連総会はこれまで何度も決議を採択し、この圧制的な制裁の終結を求めています。この制裁やそれに対する抵抗は、常に、カストロ氏が懸念する問題でした。キューバの関係者によれば、アメリカの経済・貿易、金融制裁による人的な被害は計り知れないものです。これらの制裁はキューバの人々に大きな問題をもたらしており、これは、大規模な人権侵害に相当します。それにも拘わらず、キューバはカストロ政権時代、これらの制裁に屈服せず、アメリカの侵略に抵抗しました。
外交においても、カストロ氏は、ソ連の政策に従い、世界に共産主義を広め、左派政権を誕生させるため、ロシアと緊密な協力を行い、アフガニスタン、モザンビーク、アンゴラの左派政権を擁護するため、これらの国に軍隊を派遣しました。
カストロ氏はさらに、非同盟諸国の事務局長を2度、務めました。また、国際的な賞を受賞し、その支持者からは、アメリカの帝国主義に対してキューバの独立を守った、社会主義や反帝国主義の英雄と見なされています。カストロ氏はソ連の崩壊後、多くの問題に直面しましたが、このような困難な時代を克服しました。
カストロ氏は、ほぼ半世紀に及び、キューバで政権を握り、2008年に弟のラウル・カストロに国家評議会議長の座を譲りました。このときから、カストロ氏は政界を退き、国際問題に関して、時折、自身の見解を述べるに留まりました。例えば、オバマ大統領のキューバ訪問の際には、それを批判しました。カストロ氏は支持者から、キューバを国民の手に返した人物として知られています。
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冒頭の記事では、カストロ氏は“社会主義や反帝国主義の英雄…キューバを国民の手に返した人物”とあります。習近平氏も“キューバ国民の解放…国家主権の擁護と社会主義の建設…に力を尽くした”としています。プーチン大統領は、“一時代まるごとのシンボル”であり、“国際社会における…規範”と賞賛しています。
現在、ロシアは国際社会における規範としての役割を政治において実践しています。そうした意味で、プーチン大統領のカストロ氏への賞賛の言葉は、とても重要な意味があると思います。
通常、記事に見られるように、カストロ政権は社会主義と見られているのですが、実のところ、ホセ・マルティ主義と言った方が正しいのではないかと思います。ホセ・マルティという人物を知っている人の方が少ないかも知れませんが、実は1953年7月26 日、カストロは弟のラウル・カストロと共に、キューバ島南東部にあるモンカダ兵営を襲撃します。この襲撃は失敗に終わり、カストロとラウルは捕えられ、裁判にかけられます。このときの裁判で有名なエピソードが残っています。裁判官から「反乱の首謀者は誰か?」と尋ねられ、カストロは「ホセ・マルティである」と答えたというのです。
カストロは直接には詩人ホセ・マルティには会ってはいないので、この言葉は、ホセ・マルティこそ革命の精神的な支柱だったということになります。
裁判によってカストロらは監獄に入られましたが、1955年に特赦が出てメキシコに亡命、1959年に終にキューバ革命を成功させます。
ホセ・マルティが亡くなって、約120年になりますが、帝国主義から国や地域の利益を守る精神は、今なお生き続けています。カストロ政権において教育と医療が無料であるというのは、まさにホセ・マルティの精神によって、キューバという国が運営されている証拠です。キューバはラテンアメリカ諸国から尊敬されていますが、その源はホセ・マルティにあるのです。