[第48回] 地球の鼓動・野草便り 英雄


英雄

ペンキのペール缶と台所の排水ゴミ受けを使ったロケットストーブ式の卓上コンロ。ドラム缶で何でも簡単に炭にできると、炭作りを提唱されていたその炭。
昨年亡くなる少し前、松村賢治さんが、野草茶のお礼だといって、格別の笑顔で持ってきてくださいました。


一級建築士と南太平洋協会理事と旧暦カレンダー発行と旧暦講師、炭作りの指導に手作りコンロの指導、本の執筆、猟師。他にも講演を依頼されたりと、多彩で独創的で、1本筋の通った主張のある活動をされていました。

脳の手術をされ、帽子姿でも相変わらず活動的で、ヨット生活の合理性を活かしたログハウスがある広島と、仕事の事務所と自宅マンションがある大阪を行き来されていました。
最期は南太平洋協会として長年活動されてきたパプアニューギニアででした。

大工養成、自家発電、木造エコハウス、地元民の収入源になるようにと考案された、組み立てベット製作の仕事指導など、パプアニューギニアでの活動の様子を写真やお話で紹介してくださっていました。ヨットで太平洋を横断した時からの、パプアニューギニアの人たちとの付き合いで、当時、白人が食事代を払う時に、床にお金を投げて渡していたのを見て、白人に抗議したのだとか。とても親切にしてくれるパプアニューギニアの人に対しての、あまりに失礼な態度に腹がたったそうです。

ヨットで一人航海していると、海賊に狙われることもあり、甲板で猟銃を手入れして見せて、追い返した話などもされていました。自分の目や耳で得た情報は、日本では伝わってこないような、まるで逆な内容だったりしたそうで、マスコミを鵜呑みにせず、自分で考え、発信する生き方をされていたと思います。

考案された方丈庵というログハウスは100年以上は耐久性があり、女性でも自分で建てた方がいるそうで、自作の場合は特に格安で、たしか200万円台でした。ヨットで単独太平洋・大西洋を横断された時の生活を活かした、高機能のログハウスは随所に工夫があり、3坪以内で建築確認申請不要ながら、4人が寝泊まりできて、ロフト、囲炉裏兼テーブル、シャワー兼トイレルーム、足踏みポンプ式台所、ソファーベット兼収納等が備わっています。

方丈庵


地元産の杉の丸太を使い、移築も可能で、大雨などの災害時には、そのまま船にもなり、浮くように作られているとおっしゃっていました。屋根も波板を重ねて二重にすることで、空気層ができて風が抜け、夏涼しく冬暖かく。丸や四角の色が塗ってある板を外すとガラス張りになっていて、空や外の観察が出来、気の利いた棚などもあります。

もう1棟の大きめなログハウスは仏壇のある畳の部屋と、大きな掘り炬燵式の囲炉裏のあるダイニングキッチン、眺めのいいテラスに広いロフト、ヨット式の階段を降りると工房がありました。斜面にたてられていたので、そのまま庭に出られる一間窓とテラスがあり、水場もあり明るく、作業しやすそうでした。

畑に続く庭には、最近造られたお堂が完成していて、裏山の壊れたお堂のあった場所へ移動するばかりになっていました。長いボルトを引き抜くと、分解して運べると説明してくださった、そのお堂に座って笑っている松村さんの写真が、一昨年廃校になった小学校で行われた松村さんを偲ぶ会の会場に飾られていました。昨年、地域の小学生たちが取材した時の写真らしいのです。

阪神大震災の時に大阪で被災され、避難生活のボランティアでの活躍の話もあります。寒い中暖房もなく、校庭で焚き火をしていると、消防署から火を焚いてはいけないと通達があったそうです。

その時、消防署長に直談判し、自分の親が避難生活して凍えていても同じことが言えるのかと抗議したそうです。そうして許可を得て、燃やす廃材には事欠くことがなく、その焚き火に鉄板をのせ、砂をショベルでのせて温めて、Tシャツなどを袋にして詰めて、砂のあんかを作ったそうです。避難生活の人たちが、毎日砂を詰め替えてもらうために、大事そうに抱えて持ってこられていたそうで、その時使ったショベルは半分近くまですり減って、先が短くなっていて、今でも小学校に置いてあるのだとおっしゃっていました。



その松村さんから、出会った頃に頂いた、もう一つのプレゼントが七輪を入れて使うテーブルです。
プレゼントしてくださった2つとも、災害時に困らない日常の生活を心がける工夫が込められています。単にそれだけでなく、生きる力を育て、楽しめるようなアイテムだと思います。


今、形見となったこれらを眺めていると、ご存命の頃には気がつかなかった事がわかってきます。人類愛に基づく発想、実力、行動力。

英雄ってこういう人のこと?と思い始めています。

そうそう松村さんの存在が消えたわけではないですよね。わたしは松村さんとは喧嘩友達でしたからね。松村さんが紹介してくださったご縁で田舎に引っ越した年、家の前の山で熊の母子3頭が檻にかけられ、引き取り場所をさがしたけれど見つからず、撃ち殺したと話された時、熊森協会で熊の保護を訴えていた私と喧嘩。筍を食べに出てきた場所が、私たちが借りた田んぼのすぐ近くで、地元の人たちが慌てて猟師さんに頼まれたのでしょう。安心してもらおうと話をされたのでしょうに、憤慨してしまいました。

でも考えてみると、言いづらいこともはっきりと面と向かって言えたのも、松村さん自身がそうだったからでしょう。


さて、立春もすぎ、今の内にご紹介しておきたいのが忍冬(ニンドウ、別名スイカズラ)です。

忍冬(スイカズラ)


冬を忍ぶの名のとおり、冬でも葉や実をつけていて、薬効が高く、採取適期は秋~冬です。蔓や葉を乾燥させてお茶にできます。4~6月頃に咲く花は金銀花といい、香りが良くて花の蜜をすったり、ハーブティーにしたり甘酒に混ぜたりしますが、味見程度でミツバチに置いておきます。

忍冬(スイカズラ)


薬効は神経痛、リューマチ、滋養強壮、肝炎、小便不利、美容、あせも、関節痛などです。

忍冬(スイカズラ)




yasou
自然賛歌

お猿さんの足跡手跡・・・雪で食べ物に困ってる?

蠟梅(ロウバイ)・・・春に先駆けて咲く、花が蠟質で、香り高い


キササゲ・・・利尿作用が強く、腎炎、ネフローゼなどに



クヌギ・・・枯葉が散らずに残る・・・落葉のための離層の形成不良がよくある



ザクロの実



ジャケツイバラの豆果



シッポゴケとキヅタ



フジの実・・・弾ける時の音が大きくてビックリ




氷の中のドングリ


カワニナ・・・ホタルの幼虫の餌にな
る・・・昔はたくさんいて、土用や普段でも食べていた




■ 参考文献

イー薬草・ドット・コム
「大地の薬箱 食べる薬草事典」 村上光太郎/著 農文協
「カラダ改善研究所 自然のチカラいただきます」中村臣市郎/監修 西日本新聞社



ライター

ニャンニャン母さんプロフィール

ニャンニャン母さん

プロフィール:1955年魚座生まれ、広島の県北 中山間地域在住、
体癖はおそらく2ー3種

20代の頃「複合汚染」有吉佐和子/著 を読んで、食の環境悪化を考えた時、野草を食べることを思いつき、食料としての野草研究を始める。
全くの素人ながら、健康住宅の設計事務所に入社し、健康住宅を学ぶ。
残された人生と限られた時間について気付かされ、仕事を辞め、自給自足を目指す。
平成22年頃、古民家を借り、Iターン。野草教室を開催。
「古民家カフェ・むす日」「山のくらしえん・わはは」「クリエイティブ・アロマ」等にて野草教室。

現在、野草好きになった87歳の母と、無関心な33歳の長男と猫3匹と暮らしています。

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