ユダヤ問題のポイント(近・現代編) ― 第24話 ― ハルマゲドン(救世主降臨)計画(其の四)

 「今から~の期間だけ、あなた様だけへの特別な御案内です・・・。」これはセールスなどでよく使われるフレーズです。「期間限定、あなただけ、特別です。」これに私たちは弱いのです。ついつい不用な商品を購入してしまったりします。その気になってしまうのです。ただしそれは勧誘側が、相手がフラットな状態にあり、購入を選ぶも断るも自由な状態でそのフレーズを使用するならば、正常なテクニックの行使で問題はありません。しかし勧誘の状況が、密室状態や「脅し」など恐怖や強い不安を惹起せしめる場ならば、話しは別になってきます。
 終末思想を説く多くの宗教による布教は、これに該当するような気がします。また勧誘を受ける側の問題もあります。「あなただけ特別」とされると「私だけが特別で他の多くの人々と比較して勝れる」と思い込む点です。
 「私は特別」これには何らの問題もありません。「他と比べて自分だけ」が問題なのです。「自分が特別なように、全ての存在その一個一個が同じように特別だ」。このような視点で日々過ごすならば正常でしょうが・・・。
 ハルマゲドン陰謀団は、終末思想で恐怖や不安感を抱かせる一方、「私たち権威からあなたは特別に選ばれる」と人々の優越感をもくすぐり、このようにして宗教は世界中に拡大浸透してきました。宗教を世界中に拡大浸透させる、これこそがハルマゲドン陰謀団にとり、その計画実現のための中心となる柱だからです。
(seiryuu)
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ユダヤ問題のポイント(近・現代編) ― 第24話 ― ハルマゲドン(救世主降臨)計画(其の四)

pixabay [CC0] 1 & 2


恐怖と選ばれし者の優越感 ~到来する新エルサレムの住人とは



さて、お前さん、前回の最後で、黙示録の内容から、キリストは世界人民を救済するわけなどではなく、むしろユダヤ民族以外は奴隷支配される恐れもあるのに、世界の人々が信者となってキリスト教が世界宗教として広まったと、言ってなさったね?

そして、このことに対して、そのキリスト教が世界に広まった理由は教会側の戦略もあるが、それに加えて布教を受ける側の心理状態もあると? 改めてそれは?

へい、それはあっしの体験からで、随分以前のことでやすが、あっしの家に確かモルモン教の若い白人の二人連れがやってきたことがあって、彼らは絵本を見せながら「地球に破局が来る」って言っていやした。
その絵本の絵は、確か地上各都市が炎に包まれていてハルマゲドンの様子を描いていたようで・・・。

ふむ、モルモン教か・・・、それは間違いなくハルマゲドンを描いていたんだろう。それで彼らは、彼らの宗教に入信して仲間になれば破局から救われるとかと言っていったのかい?

いやー、随分昔のことでそれは憶えていやせん。確か最後の審判がどうかとか言っていたかな?
それとここが大事なところなんでやすが、彼らにあっしがこう尋ねたんでさ「あんた方は幸福として何を望んでいる?」と。
そうするとこう答えたんでさ「家族と一緒になること。」。「神の前で」だったか「神と」だったか、「一つの家族となること。」と。

で、あっしが驚いたのが彼らの表情だ。恍惚の表情を浮かべていたんでさ、そう、自分たちは神の使徒として崇高な行為を遂げている、といった感じで・・・。

ふむ、なるほど、お前さんの言っていることはよく分かるよ。それで布教を受ける側の心理とは?

へい、キリスト教では人類全てが生まれながら原罪を背負っているといいやすね。そしたらあっしらも罪人だ。そこに持ってきて「最終戦争ハルマゲドンだ、最後の審判だ、信じる者は救われるが、そうでないものは永遠の地獄だ」とやられたら、そう言われる側は不安と恐怖の塊になりかねない。

一方、信者となり教会側の人間として元自分がそうだった異教徒を改宗させキリスト教を広めたりしたら、キリストの使徒になるわけでやすね?
元の罪人の自分がそうなれば、選ばれた貴人となる。教会は古くからの一大権威だ。その権威から自分だけが特別に選ばれた、となれば優越感がくすぐられるだろうと。

pixabay [CC0] 1 & 2 & 3


彼らのやり口と、それを受ける側の心理か・・・。
なるほど。・・・最終戦争らしき恐ろしい絵を見せながら破局が来て最後の審判で裁かれるぞ、とされたら、気の弱い者は恐怖に襲われ、その恐怖心から逃れたい一心で、信仰もしていないのに信仰告白などする人達もいるかもしれんね。

そして一大権威の教会から使徒だと持ち上げられたら確かに優越感をくすぐられるだろう。大概の人間は本当のところ自信が無く劣等感が植え付けられているからね。
なるほど、よく観察しているね。感心するよ。

黙示録の最後に到来してくる新エルサレム、その城壁の土台にキリストの12使徒の名前が刻まれてあるとありやす。
ならば元は布教を受ける側であっても自分が信者になり更に布教するようになり、教会から自分が使徒と認められるようになったら、最後の審判をくぐり抜け、地上世界に君臨する新エルサレムの住人になれると受け取って自然でやすからね。

途中であっしの家に来た二人の顔と言葉が思い浮かんできたんでさ。神の前か神と一つの家族になるといいながら浮かべた恍惚の表情、あれは自分たちがこの黙示録にある到来する新エルサレム住人の一人だという感覚ではないか?とね。

そのキリストとは一体誰を指すのか? ~磔刑で死んだイエスの肉体が復活したのか?


全くその通りだろうね。モルモン教はカソリックやプロテスタントのいわゆるオーソドックスなキリスト教ではない。しかし、むしろオーソドックスなキリスト教以上に黙示録を重視しているだろうからね。

え? あっしはモルモン教と普通のいわゆるキリスト教の区別がつきやせん。それに黙示録重視とは?

モルモン教が黙示録を大変重視している理由は、いずれ話しが進めば分かってくるだろう。
そして普通のキリスト教との違いについてだが、キリスト教とはイエスをキリストとして信奉していく宗教だね、モルモン教はキリスト教と言えばキリスト教だが、信奉するキリストがどうもイエスではないようだ。

え?そんなことがあるんで? イエス以外をキリストと信奉する宗教? モルモン教は誰がキリストで?

そうだね、まず改めて確認するよ。
キリストとメシアは同義だ。そうするとメシアを名乗った人物は複数いるね。サバタイ・ツヴィもヤコブ・フランクもそうだ。そして最近では統一教会の文鮮明、彼も自らをキリストの再臨者だと自称している。文鮮明のいうキリストは誰を指すのかは不明だがね。というわけでイエス以外をキリストと信奉する宗教は複数あるよ。

そしてモルモン教の信奉する対象だが、モルモン教会は表向き隠しているがそれはエノクだろうね。モルモン教はその創立当時は「エノク教」だった。エノクの教えを信奉するエノク教会だったんだ。
今はそれを隠しているがね。

ふーむ、そうでやした。キリストに関しては確かにそうで何人もいやした。
で、もう一方、エノクとは?

神がエノクを取られた『創世記 5:24』
[Public Domain]


ふむ、アダムとイブの息子セツの直系子孫で、創世記にはエノクは「生きたまま神に召された」とある。『エノク書』という書物があり、神に召されたエノクは天界で大天使メタトロンに変容したとある。
また大預言者だとかノアの箱舟のノアに警告を発したのもエノクだとかの様々な伝承のある人物だよ。

へー、人間から大天使に変容か・・・。なんか、すごいや。しかしいろんな種類のキリストがいるもんだ。

そう、キリストとはいわば役職名だ。役職だから人が入れ替わったりもする。キリストといってもそれだけでは一体誰を指しているのか不明で、それが誰かをきちっと捕まえておくことは非常に重要だ。

なるほど、キリストは役職名か、あっしはよく知りやせんが、キリスト教で「信じる者は救われる」とか「アダムとイブの一件で人類が原罪を背負っており、その原罪をイエスが磔刑の犠牲で贖罪した」などと喧伝するのを耳にしやすが、キリスト教全般はキリストの役割をどのように説いているんで?

うーん、キリスト教と名乗っていても、イエスをキリストだと信奉する教会の中でもいくつも派があるし、先ほど見たようにそれ以外もある。それらに共通したキリストの役割は判然としないよ。

ただし、黙示録にある磔刑復活昇天、それに再臨最後の審判、これは少なくともキリスト教を名乗るどの派でも説いているんじゃないかな?
またこのキリストの時系列的一連の役割というか動きは、黙示録に記されている点から分かるようハルマゲドン計画と連動している。

そして何よりもそこで記されているキリストが一体誰を指すのか?を特定することは、計画の陰謀団の実像を明瞭にする核心部分になるよ。

ふむ、黙示録には小羊つまりキリストでやすね、それが神から巻物として地上の統治権を授かっていやすから、確かにキリストが誰かを特定するのはすごく重要・・・、うーん、しかしそれはイエスなのでは?

そう、単純ではないよ。確かに磔刑にあったのはナザレのイエスの肉体だ。
しかしそれを含めたキリストの一連の役割というか動き、つまり①磔刑、②復活、③昇天、④再臨、⑤最後の審判、これを磔刑で死んだイエスの肉体が復活して全て行う? どうだい、こんなこと常識的に見て変じゃないかい?

pixabay [CC0]


確かに、あっしらにはそうでやす。でもそのイエスの奇跡を信仰するのがキリスト教なんでは?

うーん、信仰内容は分からないが、本当にそんなことを信仰させているなら、キリスト教団は世界最大のオカルト教団に感じるね。ただどんな信仰であれキリスト教が地上最大の世界宗教になっているのは紛れもない事実だ。

そしてその裏には陰謀団の存在と働きがある。というか地上世界の隅々までにも宗教を広げ浸透させることこそが彼らのハルマゲドン計画実現の柱だ、これこそが大黒柱になっている。


ハルマゲドン計画実現の柱、世界宗教の拡大 ~消えた民俗宗教と終末思想を説く世界の宗教群


え?宗教を世界中に広げる? それが計画実現の大黒柱? キリスト教が世界宗教になったことですかい?

陰謀団は聖書を形成したグループだから、キリスト教に関してはその通りだ。
ただし、キリスト教だけじゃ無いよ。世界のほとんど全てと言ってよいぐらいあらゆる宗教の裏に彼らの存在がある。

??世界宗教と言えばキリスト教、イスラム教、仏教だ。ユダヤ教とキリスト教、それにイスラム教は一神教で、聖書に基づくいわば兄弟の関係にあるから、イスラム教は「まぁそうかな」とも思えやすが、仏教やそれに他の宗教も陰謀団が関わっているんで?

うーん、それとハルマゲドン計画実現のシナリオがシオニズムで、その破壊工作の綱領の中に「全ての宗教撤廃」とありやすが、これと矛盾するのでは?

いや、それが矛盾しないんだ。
陰謀団にとって既成の宗教は不用で邪魔なのでゴミと仮定してみよう。ゴミを取り除くにはあちらこちら無数のバラバラにあるゴミを幾つかの大きな塊にした方が処分しやすいね? それと同じ事だ。

2000年前のことを想像してご覧、アメリカ大陸アフリカ大陸太平洋に浮かぶ島の群れ、そこに生活するする多数の民族、それぞれの民族にはその民族独自の伝承があり、祖霊がいて宗教とも呼べないような独自の宗教があったはずだ。それらはほぼ全て消えているだろ?

また、2000年前にも既にエジプト、インド、ギリシアなどでは巨大宗教はあったよ。しかしそれらは全て多神教だ。様々な神が信奉されていたのであり、唯一絶対の神だけを信奉するようなものではなかっただろ?

ああ、そうか、なるほど、世界宗教が拡がることで多数の民族独自の宗教は消えてやすね。
また、特に現在は一神教の信者が世界人口の過半数でやすが、一神教とそれ以外の宗教の共存は困難だ。うーむ。

世界宗教が悪いとは言わないよ。キリスト教、イスラム教、仏教それぞれ良いところも間違っているところもあるだろう。そしてそれぞれの世界宗教を信奉する人々の中にも、素晴らしい人もいれば愚劣な人間もいるだろう。

ただ客観的事実として、世界宗教の拡がりで民族独自の多数の宗教が消えたのは確かさ。それと現在の世界中のほぼ全てと言ってもいい宗教、それにはある共通した傾向があるよ。

え?はて、共通した傾向? 一体それは何でやすか?

お前さん、モルモン教の布教師に訪問されたとき、ハルマゲドンの絵を見せられただろ? それだよ。

??えっと、ハルマゲドンは黙示録に登場するものなので、キリスト教系だけの概念では?

pixabay [CC0] 1 & 2 & 3


ハルマゲドンとは呼ばないが、多くの宗教では地上世界の破局を示している。終末思想といい地上の悪が高まり破局を迎えるというパターンだ。

ユダヤの秘密教義カバラが典型的で「カバラによれば、天国に秘め置かれている“メシア(救世主)の魂”が地上に“人の子”として現れ、全ユダヤ人を救済するのは、地上の悪が絶頂に達したとき」(「ヘブライの館2」)。この思想からサバタイ・ツヴィ、ヤコブ・フランクが登場している。彼らはカバリストだからね。

ルーツはゾロアスター教の終末論で、救世主の到来、最終戦争、最後の審判、新世界の到来などヨハネの黙示録とほぼ同様の内容だ。そしてユダヤ教、キリスト教の兄弟宗教のイスラム教も当然終末思想の色合いは濃い。また実は仏教にも終末思想はあるよ。

え?仏教も地上世界の破局を説いているんで? ハルマゲドン的なのは一神教だけかと思いやしたが?

ふむ、仏教と言ってもその主体は大乗仏教だけどね。原始仏教と大乗仏教は質が相当異なる。
そして意外だろうが仏教の終末思想を見ていくことでハルマゲドン陰謀団の首領は誰か?が判明してくるよ。

ええ!? ハルマゲドン陰謀団の首領が? 首領ならば黙示録の小羊つまりキリストが誰かってことが?

そうだよ。キリスト教そして大乗仏教が拡がった背後には陰謀団の首領が大きく関わっているからね。

うーむ、キリスト教と大乗仏教が裏で陰謀団のもとに繋がっている? そいつは一体・・・?


Writer

seiryuu様プロフィール

seiryuu

・兵庫県出身在住
・いちおう浄土真宗の住職
・体癖はたぶん7-2。(自分の体癖判定が最も難しかった。)
・基本、暇人。(したくないことはしない。)
・特徴、酒飲み。アルコールには強い。
・歯が32本全て生えそろっている(親不知全て)原始人並み。

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