ぴょんぴょんの「香りの暴力」

 自然食品店の店主が、きつい臭いのする人は店の中に入れないという話を聞きました。
 商品に臭いが移るからだそうです。
 うちでも、宅配のお兄さんが立ち去った後、玄関にいつまでも整髪料のにおいが消えなくて困ることがあります。
 光源氏の残り香ならいいのですが、あのきついにおいは気分が悪くなります。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「香りの暴力」


取れないにおい


んもお〜、まだとれないよお〜!

どした、しろ? 何が取れないんだ?

においだよお〜。
帰ってすぐ、服も全部脱いで、シャワーも浴びて、鼻も洗ったのに、まだ鼻の奥のほうにあのにおいが残ってるよ〜。

あのにおいって、何のにおいだ?

今朝の電車で、となりに座った女の人のにおい。
安っぽい化粧品みたいな、トイレの芳香剤みたいな、人工的で強いにおい
でさあ、マスクしてもぜんぜん効果なくて、席を変えてもにおいがとれなくて。

pixabay[CC0]


今朝って、今は夕方だぞ。

半日も経つのに、まだ取れない。

そうゆうのを「こうがい」と呼ぶらしい。

「公害」だってえ?

いやいや「香害」。
最近、「香害」を訴える人が増えてきているそうだ。

へえ?

においの暴力ーー「スメハラ」とも呼ばれるーー「香害」とは、人工的な香りに含まれる化学物質により、めまいや吐き気、思考力の低下などの “化学物質・過敏症” を引きおこすことを言うそうだ。(pouch)

ぼくだけかと思ってた。

いやいや、被害を訴える人は増えているらしい。
シャボン玉石けんが行った「香りに関する意識調査」によると、「人工的な香りによって頭痛・めまい・吐き気などの体調不良を起こしたことがある」と答えた人は、なんと64%。(pouch)

へえ、けっこうたくさんいるんだ。

香害の始まりは08年、アメリカP&Gの香りつき柔軟剤「ダウニー」が日本でブームになった頃から。



「ダウニー」? 柔軟剤とか使わないから、知らなかったよ。

アメリカ人の体臭に合わせてるから、香水と勘違いされるほど臭いがきついらしい。

こんな投書があるね。
近所に『ダウニーおばさん』があだ名の方がいました。ダウニーの香りがカナリきついから。使用者はマヒするのかしら?」(弁護士ドットコム)。

こんな人が車内とか、オフィスとかの密閉された空間にいたら、呼吸できなくなるわな。

とくに食品を扱うところは禁忌だよね。

他にもこんな香害トラブルがある。
「今住んでるマンションの隣人・・・朝、奥さんがご主人と息子さんをエレベーター前で見送るんですが、その時にものすごい臭いがして、エレベーター前のうちの玄関にその臭いが入ってくるんです。管理会社に言っても洗剤の匂いなのでどうしょうもないと言うんです。絶対これは公害だよといつも自分の夫に言ってました。」(弁護士ドットコム)。

近所の人だと、かえって言いにくくてやっかいだね。


孤独な化学物質・過敏症


職場にも香害がある。
となりに座る女性の柔軟剤で、頭痛や思考力の低下、目のかすみや息苦しさで我慢できなくなり、早退をくり返す人。
電車に乗れなくなって退職に追い込まれた人。

それじゃ、仕事にならないね。

こういう人たちは、「化学物質・過敏症(Multiple Chemical Sensitivity)」と呼ばれる。

他の人は平気なのに、自分だけおかしいのか、神経質なのか、特異体質なのかと悩むよね。

精神科に行け、と言われた人もいる。
臭いは花粉症用マスクや活性炭入りマスクでも、空気清浄器(プラズマクラスター)でも除去できないから、化学物質・過敏症 の苦しさは体験者でないとわからないという。(DIAMOND Online)


孤独な戦いだね。

しかし、香害は職場だけじゃない。
「学校の香害はもう放置できない段階だ」と訴える医師もいる。
(DIAMOND Online)

シックハウス症候群じゃなくて、「シックスクール症候群」だって。

ある子供は、校舎内のペンキや、生徒や先生の洗剤・柔軟剤に反応して、頭痛や足のしびれ、鼻血、発熱などの症状が出てしまう。
校舎内に入れないので、寒くても暑くても、グラウンドの片隅で個別指導を受けているそうだ。(DIAMOND Online)

外で? 一人で? かわいそう!

「給食着は当番の子が週末に持ち帰って洗濯し、翌週の当番に引継ぐのだが、
香りが長続きする高残香型・柔軟剤を使う家庭が少なくない」ので、
「給食着のニオイが気になるようになり、給食着がくさくて給食が食べられない」子もいる。
体調がおかしくなって、外出さえできなくなり、引きこもりになる子も。

それは大問題だね。

また思春期になると、自分の臭いを気にして消臭除菌スプレーや制汗スプレーを使う生徒が増える。そうすると、それらによる頭痛・吐き気・全身倦怠・めまい・発熱・関節痛・食欲不振で、学校に行けなくなる子も出てくる。

目に見えない害だから、わかってもらうのが難しいね。

香害はタバコでいえば「受動喫煙」に当たるから、「学校は原則、敷地内の香り製品は禁止」にするべきだという。(DIAMOND Online)

早くそうした方が良い。じゃないと、犠牲者がどんどん増えちゃうよ。


においと脳の関係


実はにおいを嗅ぐ「鼻」というのは、脳のすぐお隣なのだ。

ってことは、あのいやなにおいの物質も、鼻粘膜を通って脳まで行くってこと?

アロマセラピーを学んだ人から聞いた話だが、アロマオイルの香りは3秒で脳に達するという。

Author:Hugo.arg[CC BY-SA]


ひええ〜3秒? そんなに早いの?

「空気中にある・・・香り分子は鼻腔を通り、嗅細胞に届くと嗅覚受容器を刺激して、その香りの情報が電気信号となり、脳の中枢部へ送り込まれます。」(アロマセラピーのメカニズム)

へえ、鼻からいきなり脳の中枢って? ヤバくない?

その通り。
婦人科で、生理を止めるときに使われる点鼻薬も、薬剤を鼻粘膜から吸収させて脳下垂体に作用させるんだ。

花粉症でも、鼻に薬をさしてるけど、脳に入るって考えたらちょっとコワイね。

「フォーラーネグレリア」って、アメーバを知ってるか?
このアメーバに汚染された水を鼻から吸い込んじまうと、アメーバが脳に入って脳を食っちまうそうだ。 (NATIONAL GEOGRAPHIC)

フォーラーネグレリア Wikimedia[Public Domain]


それほど鼻と脳は、近いってことか。

また、脳下垂体の手術は、鼻からするって知ってるか?
経鼻的・下垂体手術 という手術だ。(日本医科大学附属病院)

こうして見ると、鼻と下垂体はほんとに近いねえ。

薄い壁をはさんで、隣り合ってるのがわかるか?
ところで、五感の中でも嗅覚はもっとも原始的と言われてる。
その理由は嗅覚が、視覚や聴覚のように大脳皮質を介さず、直接大脳辺縁系に通じてるからなんだ。

大脳辺縁系って何?

大脳辺縁系は、大脳皮質ができる前の原始的な脳のこと。
本能的な欲求や情動、記憶を呼び起こす場所で、そこから視床下部、下垂体といった、自律神経系や内分泌系に指令が出されるそうだ。(アロマセラピーのメカニズム)

アロマセラピーは、嗅覚を利用して自律神経に影響を与えるんだね。
てことは、人工的なにおいも自律神経に影響するってことか。

ところでおれたちは、化学物質まみれって知ってるか?
お産の時に、羊水からシャンプーのにおいがした話は聞いたことがあるだろ?
日本人の赤ちゃんのヘソの緒から、約200種類の化学物質が検出されている。
アメリカでも赤ちゃんの血液から、413種類の化学物質が検出されたという。
(RARESEED)

生まれた時からすでに、そんなに汚染されてるの? 

化学物質は、脂肪に溶けるから脂肪の多いところに蓄積される。
脂肪の多いところって、どこだかわかるか?

皮下脂肪?

もちろん、皮下脂肪にも溶け込んでいる。
アーユルベーダの解毒法、パンチャカルマの一つスウェダナでは、全身にオイルマッサージしてからサウナで発汗させるだろ?
あれは、皮下脂肪の毒素を油に溶けこませ、皮脂腺を通じて排泄させるすぐれた療法だ。

ただのサウナよりも、デトックス効果がずっと高いはずだね。

実は皮下脂肪よりも、深刻な場所がある。それが脳だ。
脳は60%が脂肪だから。

pixabay[CC0]


カニみそとか、美味しいもんねえ。

食べ物の連想は早えな!

いやなにおいが鼻から吸い込まれて、直に脳に入る
てことは・・・・におい物質は脳の脂肪に溶け込むって、むちゃくちゃヤバくない?


毒性の強い、香料の正体


「揮発性・有機化合物(VOC)」って知ってるか?
VOCとは、Volatile Organic Compoundsの略で、吸い込むと、ぜんそくやアレルギーなどの化学物質・過敏症を起こす物質を指す。(DIAMOND Online)
平たく言えば有機溶剤のことだよ。

シンナーとかの、あの有機溶剤? 

それが、柔軟剤に使われている香料の正体だ。

ひええ??

つまり、天然の香りをまねた合成香料は、VOC=有機溶剤なのである。
そこで問題は表示のしかただ。
メーカーは単に「香料」と表示すれば、なにが入っているのか書かなくていいことになってる。

有害物質が入ってても?

そうだ。
アメリカの環境NGO「地球のための女性の声Women’s Voice for the Earth」は、約3000の香料物質をチェックした。

3000も! よく調べてくれたね。

すると、急性毒性が特に強くて、「ドクロ」マークをつけるべき物質が44、
呼吸器感作性・発がん性・生殖毒性などが強い物質が97もあった。


香料なのにドクロマーク!? 発がん性もあるの???

在野の研究者・渡部和男氏「香料の健康影響」によると、香料の成分には、
1,アレルゲン(アレルギーの原因物質)になるもの
2,ぜんそくを誘発・悪化させるもの
3,ホルモンかく乱作用(環境ホルモン作用)を持つもの
4,発がん性を持つもの
がある。

それらが、「香料」の名のもとに、平気で入ってるかも知れないんだね。

さらに気をつけないといけないのが、「このような毒性を持つ香料は、高残香性柔軟剤の場合、マイクロカプセルというミクロン単位(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)の超微小粒子に封じこまれている。」(DIAMOND Online)

コマーシャルで見るよね、カプセルがパンとはじけて「いい香り!」とか。

においを長持ちさせるカプセルは、周りの人の衣類などに移動して、さらにしつこく長持ちするんだ。

だから、時間が経っても、シャワーを浴びても取れないほど、しつこかったんだね。

ドクロマークの香料をカプセルに閉じ込めて、しつこく長持ちさせる。
ということは、おれたちは常時、ドクロマークを吸い込み続けるってことだ。

カニみそがアブナイ!!


ぴょんぴょん


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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