メキシコ便り(30):ロペス・オブラドール大統領は先住民を貧困から解放したい!

 2018年12月21日、ロペス・オブラドール大統領は、オアハカ州で先住民族を全面的にサポートするプログラムの開始を宣言。オアハカ州は伝統的なメキシコが凝縮された街ともいわれ、メキシコ一の観光地。でも残念ながら、メキシコで最も貧しい州とも言われています。自給自足をやっている人が多いよう。なので竹下先生がおっしゃるように自給自足はGDPに反映されずに、数字的にオアハカは貧しい州となっているのかも。。。実際に、オアハカに行ってみたpopoちゃんは、食の種類、色、豊かさに驚いた!え?!これが貧しいの?!貧しいどころか豊かさに溢れた街だった。もちろん田舎のほうは厳しい生活をしているのかも。。。先住民族の割合も65.7%と多い。スペイン侵略とネオリベラリズム、NAFTAでボロボロにされた先住民。そんな先住民たちに、今、弱い者の最強の味方、ロペス・オブラドール大統領は希望を光を与えています。
 大統領が政治家としてスタートしたのは、先住民のサポート施設。5〜6年ほど住み込みし、先住民からたくさんのことを学んだロペス・オブラドール大統領は、だれよりも先住民の尊さと彼らの心のキズを知っている。。。そんなロペス・オブラドール大統領は、だれよりも先住民たちを貧困状態から解放したい。なぜオアハカ州でこのプログラムが開始することになったのか、大統領が挙げた3つの理由を取り上げてみました。より伝統的なオアハカを、より古いメキシコ、先住民のことを知っていただけると幸いです。

 政府のサポートが始まり、金銭的な暮らしはちょっと楽になりそう。でもメキシコには大きな課題がある。長年メキシコに住んでみてわかったこと、それは多くのメキシコ人の中に、階級差別意識、人種差別意識が、こっそり心の奥底に居座っていること。。。なので最後にメキシコが「真の笑顔」で満たされるためには。。。AMLO大統領の尊敬するオアハカ出身のベニート・ファレス大統領の言葉をヒントにpopoちゃんなりの見解を少し書いてみました。
(popoちゃん)
————————————————————————
メキシコ便り(30):ロペス・オブラドール大統領は先住民を貧困から解放したい!

先住民の国家政策プログラム開始!



2018年12月21日、ロペス・オブラドール大統領は、オアハカ州で先住民の国家政策プログラム開始を宣言!(挿絵上↑ちなみに大統領がお召しになっている白シャツはオアハカの伝統刺繍シャツ、ステキ💖)あらゆる面で先住民をサポートする政策。オアハカでの演説動画を見たい方はこちらのリンク先で。。。

Author:TUBSE[CC BY-SA]
赤いところがオアハカ州


メキシコで5番目に大きな面積をもつ州、人口3,801,871人メキシコで一番貧しい州とも言われている。


ロペス・オブラドール大統領は、先住民を前にすると、途端に熱くなる。朝のプレス・コンファレンスでの大統領と、先住民を前にした大統領は明らかに話し方が違う。先住民を前にした演説は、先住民への愛と慈悲、熱い想いが体から溢れる。なによりも今の大統領の一番の政策は貧しい人々を救うこと。国民の50%が貧困、そしてそのほとんどが先住民。大統領は貧しい人々、弱い立場の人々の最強の味方!絶対に見捨てない、全力で守る意気込み!(やっぱり8種?!)


歴史好きな大統領は、メキシコの先住民がスペイン侵略後どんなに苦しんできたか知っている。そして過去約40年間のネオリベラリズム、特にNAFTAで先住民の農民が一番被害を受け、一番ほったらかしにされ、今の貧困状態に追い込まれたことを知っている。


そしてなによりも、大統領は、約4千年前からの先住民の知恵と社会の仕組みに最大の敬意を持っている。ソカロ(ダウンタウンの大広場)で先住民族による大統領就任儀式を、全国民の前でやったことでもわかるように。。。

大統領は1977年ダバスコ州の先住民施設の責任者となり、そこで政治家としてのキャリアをスタート。5〜6年ほどそこで住み込みし、そして、そこで長男も生まれた。

大統領は自分の生い立ち動画の中でいう。。。「ここで先住民から真の民主主義を習ったんだ」と。。。今の自分に大きな影響を与えた場所だと。。。だから、今、それを国レベルで実践している、先住民から習った真の民主主義を。。。

新空港建設の中止、マヤ鉄道の建設など、10の最優先項目の賛成か反対かを国民投票し、多数決で決めた。国民一人一人の意見を大切にし尊重する大統領。

(挿絵上↑)10の最優先項目の国民投票の用紙

大統領は、先住民の国家政策プログラム開始の演説で、なぜオアハカ州でこのプログラムをスタートするか、3つの理由を挙げた。(動画上↑)

理由1)オアハカは世界でもっとも文化が栄えているから

世界でももっとも?!はちょっとどうかな?!。。。と思ったpopoちゃんも、実際に行って見ると大統領の言っていることは大袈裟じゃないかもしれないと思った!伝統工芸、刺繍、織物、メスカリというお酒作り、コーヒー栽培、すべてが手間隙かけた伝統的な方法でやられていて、なので質も高い。食べ物や着るものには結構自分なりにうるさくこだわってしまうpopoちゃんから見ても、オアハカは圧巻!以前、メキシコの歴史の先生がこう言ってたのを思い出した。「メキシコはアメリカ大陸のイタリアだ!」だと。。。「それは言い過ぎじゃない?」とそのときは思ってしまったが、たしかにそうかもしれないと納得し始めた今日この頃。メキシコにさらなる敬意が。。。ともかくオアハカは先住民の伝統食と伝統工芸はとても有名で、おそらくメキシコで一番の観光地!伝統的なメキシコが凝縮した、とてもメキシコらしい街とも言われている。先住民族はオアハカ州の全人口の半分以上を占める。


(挿絵上↑)毎年7月に開かれるゲラゲッツァ。オアハカ州に居住する16〜18の民族がそれぞれの伝統衣装をまとい、踊るイベント。

理由2)歴代のメキシコ大統領の中で、ロペス・オブラドール大統領が一番尊敬している第26代大統領、Benito Juarez 氏(1858〜1872年)の出身地がオアハカだから

ベニート・ファレス氏は先住民族から選出された初の大統領。前回のメキシコ便り(29)Cartilla Moral 「道徳小冊子」の表紙にも載っている。今まで20ペソ(約100円)紙幣に載っていたファレス大統領は、去年末あたりから500ペソ紙幣(約3000円)に格上げ!


1806年3月21日、ベニート・ファレスはオアハカ州のサン・パブロ・ゲラタオという小さな町に生まれた。4才の誕生日前に両親が他界。12才までトウモロコシ畑の見張り番をしていた。よりよい生活を求め、オアハカ中心地へ。。。当時ベニート・ファレスはスペイン語がまだ喋れなかったらしい。。。向上心の高いファレスは支援され神学校で勉強。卒業後、神父にならず弁護士に、その後、裁判官、そしてオアハカ州知事に。。。が、政治家の腐敗を告発したため投獄。

第26代大統領ベニート・ファレス
Author:Anonymous[Public Domain]


ベニート・ファレス大統領といえば、政治と宗教を分離した大統領として有名。法務大臣のときに、軍人や僧侶の特権廃止法案を提出し、ローマ教皇ピウス9世に破門される。(神学校で勉強していた学生時代に、カトリック教会の真実をすでに見抜いていたのかも。。。)

1862年、フランスのナポレオン3世が傀儡政権を設立するためにメキシコに侵入、1863年にメキシコシティを占領。当時の大統領ファレスは、ナポレオン3世に首相になることを提案されたが拒み、チワワ州ファレスに亡命。そこで抵抗活動を続けた。
(参考文献:ウィキィペディア

そうpopoちゃん在住のファレスは、ベニート・ファレス大統領の名前だったのらぁ〜。。。銅像もあるよ!

ファレスにあるベニート・ファレス大統領の銅像
Author:AndiieVga[CC BY-SA]


ロペス・オブラドール大統領は、アメリカのトランプの壁問題のときも、ベネズエラのマドゥロ大統領の問題のときも、ファレス大統領のフレーズを用いながら、またメキシコ憲法に沿って、一切メキシコはよその国に干渉しない、他国を尊重すると何度も繰り返し言っている。

「人と人の間も、国家間も、他人の権利を尊重することが平和である。」
1867年7月15日ベニート・ファレス (挿絵下↓のツイート内一部訳)


理由3)オアハカ州には古代から続く伝統的社会組織があるから

大統領いわく、多くのメキシコ人が知らないことだか、オアハカ州の土地の80%は先住民の共同所有、15%は政府から農民に与えられた土地、5%がプライベート所有だと。そして、多くの先住民族の村には、’Usos y Costumbres’「習慣としきたり」という伝統的な社会組織があると。この社会組織はメキシコ政府で正式に公認されていて、村役場のように村のお世話をする。しかも奉仕で。。。そしてこの役員に選ばれた人は、ニューヨークやロサンゼルスに出稼ぎに行っていても、オアハカに戻ってきて、その任務を果たすらしい。何よりも誇りをもって、無償で村に奉仕。


そしてTequio「テキオ」という肉体労働を無料で奉仕するシステムもあるらしい。(挿絵上↑)村の掃除、ペンキ塗り変え、川の掃除など3ヶ月に一度ほど回ってくるらしい、一回につき3日間ほどだとか。。やらない人には罰金があり。。。村では’Hay que servir’「奉仕をすべき」という概念が浸透しているらしい。。。
(参考文献:「民俗学研究」村落在住者と都市移住者の社会組織の相互関係 禅野美帆

ロペス・オブラドール大統領は省を分散し、メキシコシティ以外の町に移動させていて、今後、厚生省がオアハカに移動することになっている。国の先住民施設もオアハカに創設予定。


今、先住民たちは、おそらく史上、初めて政府からの全面的サポートを受けることになる。スペイン侵略、NAFTAによってなされた心のキズを、何百年、何十年と抱え続けてきた先住民。やっと先住民の村に光・希望が差し始めた。笑顔が見え始めた。

が、メキシコには大きな課題がある。。。

先住民の村で生活していないメキシコ人たちが、
どれだけ先住民に対して差別意識を捨てること
ができるか。。。
そして、先住民たちがどれだけ今までの被害者意識を捨てることができるか。。。

お互いに手放すものに気づくことができたとき
笑顔の裏に隠れる悲しみは立ち去り
✨曇りのない笑顔✨で満ち溢れるメキシコになれる
かもしれない。。。

ベニート・ファレス大統領が言ったように
そしてロペス・オブラドール大統領が実践しているように

お互いを「尊重」すること。。。
つまりそれは自分を「尊重」することでもあり
それが「曇りのない笑顔」「真の笑顔」をもたらすカギかもしれない。。。


¡Viva Mexico!
(メキシコ万歳!)

(popoちゃん)


Writer

popoちゃん

メキシコ人夫とメキシコ在住中♪
新アムロ政権の勢いある改革ぶりを中心に
「今のメキシコ」をお届けいたします!

体癖5・9、ピッタ・カファ、エニアグラム7


Comments are closed.