肥満は感染症の一種
「数百万年もの間、私たちと共に旅してきた微生物の存在に敬意を払うこと、これこそが私たちの真の姿を理解し、ひいては100%のヒトになるための第一歩だ。」
あれ?
くろちゃん、なんかこの頃お腹が出てきた?
いきなり冒頭から、失礼なヤツだな。
おめえだって、アンパンマンみてえな顔してるくせに。
テヘヘ・・バレたか、ぼくも太っちゃってね。
なんせ、彼女の手料理がおいしすぎてさ・・。
おーおー ノロケてくれるじゃねえかよ。
どうせおれは一人さびしく、わびしい自炊だよ。
じゃあ太ったのは、運動不足? ビールの飲みすぎ?
ビールは控えてるし、毎日ジョギングだってしてるがな。
じゃあ、
もしかして、腸内細菌かも?!
はあ?? なんで、腸内細菌が出てくるんだ?!
いい?
太りやすい食べ物を食べたからって、太るとは限らないんだよ。
そう言やあ、正月に餅をバカ食いしたのに、太らなかったな。
大事なのは、どれだけ栄養を吸収したかでしょ?
それを決めるのは、誰?
体質だろ?
その体質は、何が決めるの?
遺伝子か?
それもあるけど、もっと決定力のあるのが
腸内細菌だよ。
腸内細菌が体質を決めるのか?
たとえば、
同じヨーグルトでも、やせた人には137キロカロリーで、太った人には140キロカロリーになりうる。(105p)
それが、そいつの腸内細菌次第ってか?
「
摂取カロリーは、実際にどれだけ食べるかよりも、
腸がどれだけ吸収するかで決まる。その吸収量は、手伝ってくれる微生物がどれだけいるかに左右される。」(108p)
なるほど、腸内細菌によって、どれだけ吸収するかが変わってくるんだな。
つまり「あなたが食べ物から得るカロリー量を決めるのは標準換算表ではなくあなたの微生物群だ。」(105p)
マジかよ〜!! ビールも唐揚げもがまんしなくて、良かったんか〜!!
雪の日に寒いのガマンして、ジョギングしなくて良かったんか〜!!
すごい喜びようだね。
でも、ビールと
唐揚げばっかり食べてると、腸内細菌のバランスが変わっちゃうからね。
脂肪を控えている人は、脂肪を消化する菌種が少ない。だから、たまに唐揚げをお腹いっぱい食べても、アイスクリームを食べ放題しても、
カロリーがほとんど吸収されないまま大腸を通過するけど。(107p)
つねにそういう食事を続けてると、脂肪を消化できる菌が増えて、全部カロリーになるってわけだな。
そう、
食べ物のカロリーは、腸内細菌、つまり〈マイクロバイオータ〉(微生物相)が決めているんだよ。
さらに、「
デブ菌、痩せ菌がいる可能性なども指摘されています。腸内細菌恐るべし。」(
時事ブログ)
デブ菌、痩せ菌だとお?!
腸内細菌がまったくいない無菌マウスに、肥満マウスの〈マイクロバイオータ〉を移植すると太る、通常マウスの〈マイクロバイオータ〉を移植しても太らない。(103p)
おれの〈マイクロバイオータ〉はどうなってんのか、心配になってきた。
この実験結果でわかったことは、
肥満が暴飲暴食、運動不足、意志の弱さだけによるものじゃない、肥満は感染症の一種だってこと。
ええっ!?
太った人の脂肪組織を調べると、免疫細胞がぎっしり集まってて、まるで感染症に見えるらしいよ。(117p)
肥満は感染症かい?
「
さらに議論を呼びそうなのは、
肥満が伝染性の病気だという。」(112p)
ぬぁんだとぅ?! 肥満は伝染するだとぅ?!
同居してる家族や親しくしてる友人から、肥満菌がうつるらしい。
つまり、あれか? 相撲部屋。
いやいや、あそこはチャンコ鍋で太ってるんでしょ?
しかしだな、相撲部屋じゃ寝食をともにする、稽古で肌を触れ合う、トイレも共有。
肥満菌のなすり合いじゃねえか?
肥満菌が壁や天上に貼りついて、味噌蔵状態じゃねえのか?
そこに入っただけで醸造、いや太ります?
そ、だから、新入りの時はヒョロヒョロでも、りっぱに太ってくるだろ?
でも、太ったおかみさんは、あまり見たことないよ。
たしかに、女性の肥満菌は種類がちがうのかな。
痩せ菌〈アッカーマンシア・ムシニフィラ〉の大好物
ところで知ってる?
腸内の〈アッカーマンシア・ムシニフィラ〉菌。
痩せてる人にはたくさんいるけど、肥満の人はほとんどゼロ。(118p)
つまりだ、痩せ菌〈アッカーマンシア〉を増やせばいいってことだな。
おい、それにはどうすりゃいいんだ?
〈アッカーマンシア〉は、腸粘膜表面の粘液を住みかにしてる。
それで、
粘液が足りなくなると、ヒト遺伝子に「粘液を出せ」って命令するんだ(119p)
小腸の粘膜の絨毛
細菌がおれたちの遺伝子に命令だと?! ナマイキだな。
あ、そんなに驚くことじゃないよ。
腸内細菌は、ぼくたちの遺伝子操作だってしてるんだから。
ははっ、恐れ入りました。
実は、〈アッカーマンシア〉が
粘液をたくさん作らせると、外敵から守る粘液が増えて腸壁が丈夫になる。
おれたちにもメリットがあると言いたいんだな。
だがそれが、肥満とどんな関係があるんだ?
「リポ多糖」。
なんじゃ、そりゃ?
太った人の血中に、たくさん見られる化学物質。
それが、どうかした?
「リポ多糖」は腸から吸収されて血中に入る。
実は
この「リポ多糖」、脂肪細胞に炎症を起こして一つ一つの脂肪細胞をふくらませるんだ。
ふくらんだら困る。
だから、〈アッカーマンシア〉が大事なんだよ。
脂っこいものばかり食べてると、〈アッカーマンシア〉が減る。
食物繊維を増やすと〈アッカーマンシア〉が増える。(120p)
決めては、食物繊維か!!
食物繊維は〈アッカーマンシア〉の大好物だからね。
食物繊維をモリモリ与えて、粘液やタンパク質を作らせれば、腸壁も丈夫になる。
腸壁って、大事なんだな。
大事も大事、内と外の国境だよ。
国境が破られれば、中の栄養が外に漏れて、外の不法移民が中に入る。(204p)
リーキー「漏れる」ガット「腸」の〈リーキーガット症候群〉みたいに、穴だらけの腸壁から水や栄養が漏れて下痢が止まらなくなり、外からは異物が入ってきてアレルギーや自己免疫疾患を引き起こす。
やっかいだなあ。
トランプみてえに、国境の壁を作らせねえとダメだな。
メキシコのティファナと米国のサンディエゴの国境の壁
そう、それをやってくれるのが〈アッカーマンシア〉。
そして、そいつの好物が食物繊維。
だが、チャンコ鍋にも食物繊維がたくさん入ってるのに、なんで太るんだ?
知らないよ、もう、相撲部屋はおしまい。
抗生物質で自閉症?!
その外にも、
〈アッカーマンシア〉を全滅させることがある。
抗生物質だな。
正解!
ところで、
どうして家畜に抗生物質を与えるか、知ってる?
そら、決まってんだろ?
狭いケージにぎゅうぎゅう詰めで病気になりやすいから、予防だな。
・・と、思うでしょ?
ところが、太らせるためでもあるんだよ。(217p)
マジか!?
抗生物質を与えると、我らの〈アッカーマンシア〉も殺される。
かわいそうに! 愛しの〈アッカーマンシア〉!
そして、生き残るのは耐性菌だけ、それが肥満菌だったらどうなる?
太る!
痩せるためにどんなに食事を減らしても、運動がんばってもダメなのは、腸内細菌のバランスの崩れを忘れてるからだね。
抗生物質、要注意だな。
とくに、抗生物質の影響は発育中の子どもに大きいよ。
やっぱ、太るのか?
生後6ヶ月以内に抗生物質を投与された子は、
投与されてない子より太る。(238p)
太るぐらいなら許せるけど、
抗生物質で自閉症になった子もいる。
まさか! 抗生物質で自閉症?!
自閉症の子はそうじゃない子よりも、3倍以上の抗生物質を与えられていた。
とくに生後18ヶ月以内の抗生物質は、最大のリスクだって。(244p)
予防接種のアルミニウムや水銀だけが原因じゃなかったのか。
本にあったけど、
生後15ヶ月まではごくふつうの元気な男の子だったのが、ある日、自閉症になってしまった。
なんでだ?
検診で、耳から液が出ていると指摘され、抗生物質を投与された。
2ヶ月くらい
飲み続けた後、おかしいと思ったら自閉症になってた。(126p)
やっぱ、抗生物質が原因か?
だけど、
もちろん医師は認めない。
しかし母親は、似たような症例の論文を見つけた。
抗生物質使用後に発生する、難治性大腸炎の〈クロストリジウム・ディフィシル〉症。
そう言えば息子も、抗生物質投与後から大腸炎になっていると。
なんだ、大腸炎の原因を見つけたのか。
いやいや、
彼女はピンときた。
〈クロストリジウム属〉、特に破傷風菌〈クロストリジウム・テタニ〉は神経毒を出す。もしかして、その毒が息子の脳にダメージを与えたんじゃないかと。(133p)
顕微鏡で見た破傷風菌
すげえな、母親がそこまで推理するとは。
医療関係者だったんか?
まったくのしろうと。
専門家なら、下痢と自閉症に関係があるなんて思いつかないよ。
頭が柔軟だから、真理にたどりつけたんだな。
早速、破傷風の抗体価を測ってみると、グラフに収まらないほど高かった。(133p)
推理は当たってた!!
それから破傷風の薬を与えたけど、少し改善しただけで元通りにはならなかった。
遅かったか・・・。
脳の発達時に抗生物質はキケンすぎるな。
自閉症児の腸内にはこの〈クロストリジウム属〉が、健康児の10倍もいるんだって。
〈クロストリジウム〉は、自閉症と関係が深いんだな。
しかし、自閉症の原因が細菌だったとは、おどろきだ。
しかも、その引き金を引いたのが抗生物質だったとは。
なんかいい治療法はねえのか?
答えは、
時事ブログにあったね。
「
腸内フローラを移植することで、自閉症を発症したり、逆に治癒することがマウスへの実験で分かりました。」
ウンコ移植か!
〈クロストリジウム・デフィシル〉はやっかいな菌でね。毎年100万人以上の人が感染して、数万〜数十万人が亡くなる。抗生物質でも30%しか治らない。
だけど、一度の糞便治療で80%、二度目の移植で95%まで治る。(367p)
すごい!! すごすぎる!!
しかも、ウンコは医薬品じゃないので、キッチン用ミキサー、濾し器、生理食塩水さえあれば、あとはユーチューブのビデオで手順を見ながら、自分で移植できるし。(373p) 下の動画の3:13〜 見てみて。
Fecal microbial transplantation
なぬなぬ?
ウンコ50gに、生理食塩液50~300ccを入れてミキサーでガーッとやる。
おお、泡立ってビールみてえだな。
それを、2回濾して、注射器に入れて腸に注入かあ。
病院だと内視鏡入れながら注入してるな。
そんなことしなくても、浣腸や
腸内洗浄の装置でもできそうだな。
問題は、健康なウンコをゲットしないといけないこと。
はいはい!!おれ、提供者になってもいい!!
抗生物質は飲まねえし、添加物も控えてるし。世界もうらやむ日本の伝統食を食ってるし。
・・(移植された人が、デブにならないことを祈るよ。)
ああ〜〜 むづかしい話聞いてたら、甘いのが欲しくなった。
そうだ! 甘酒があるから、あっためて飲もうよ。
ヤッター! 腸内細菌も大喜びで飛び跳ねてるぞ!
【腸内細菌】「あなたの体は9割が細菌」を世界一わかりやすく要約してみた【本要約】
Writer
白木 るい子(ぴょんぴょん先生)
1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)
腸内細菌については、これまでも時事ブログでたくさん取り上げられきました。「地球に優しい方の微生物学者」さんの連載、「ぺりどっと通信」の「腸内細菌シリーズ」などなど。
この本は、そういう常識的なことを押さえた上で、さらに進化し続ける腸内細菌の研究について、専門家にもしろうとにもわかるように書かれています。
ここでは、肥満と自閉症のエピソードに焦点を当てましたが、それ以外の興味深い内容については実際に本を手に取っていただきたい。
読者の方が教えてくださった、最後の動画も、本の概要がわかります。