ままぴよ日記 123 「赤ちゃんは自分で自分を育てている」

 私の両親が孫のために買ってくれた七段飾りのお雛様が箱に入れられたままでしたので、市に寄付することにしました。ちょうど、9月9日は重陽の節句。菊の節句とも言いますが、不老長寿を願う節句だそうです。この地方ではお雛様の虫干しも兼ねて、雛飾りをする風習があります。
 わが家のお雛様が市の玄関口で、黄色の毛氈の上に飾られて嬉しそうにおすまし顔をしています。感動して母に写真を見せました。おしゃべりをしなくなった母が「まあ、きれい!」と言ってくれたのでほっとしました。
 もうすぐ102歳になる母の不老長寿は願いませんが、目の前に生きていてくれる日々を感謝で満たしてあげたいと思いました。
(かんなまま)
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五感を磨きながら主体的に自分を作ろうとしている赤ちゃん


長年、ベビーマッサージと乳幼児のメディア接触についてのアドバイザーをしている関係で、赤ちゃんの五感について改めて学びなおしてみたくなりました。


AIを研究している科学者が、その目的を聞かれたときに「人間を知りたかった」と答えていました。それを解明するには生物学分野、遺伝子工学や物理化学分野へと研究が進んでもなお限界があるようです。

なるほど、人は今やっと赤ちゃんはどのようにして体を作り、自分の感覚をつかんで体を動かし、思考したり、言葉を獲得したり、人とコミュニケーションをとれるように成長していくのか?を総合的に研究し始めたのでしょう。

しかし、その研究も目に見える形で実験して証明するという肉体レベルの研究で、東洋医学セミナーで学ぶような次元には到達できそうもありません。魂を抜かれた状態で人間の研究をしても本質には近づけないと思うのですが、それでも赤ちゃんはどんな存在なのか?子育てとは何か?の入り口には立ち始めた気がします。

もっと残念なのは、今の子育てが目に見える数字に支配されていることです。体重、哺乳の量や時間、尿や便の回数、離乳食を始める時期やお座りする時期を月齢を目安にしています。

これらは赤ちゃんが決めるものです。赤ちゃん自身が五感を磨きながら主体的に自分を作ろうとしているのを無視して、混乱させて、やる気を摘み、あきらめさせる育児です。お母さんも赤ちゃんと繋がっている直感的育児ができなくなってしまいました。このままでは人類滅亡・・・とさえ思うほどです。

本屋さんの育児コーナーには「頭のいい子を育てる」「有名大学に合格させる」「天才を育てる」「赤ちゃんの時から始める教育実践法」などの本がずらりと並んでいます。

このような価値観で育てられてきた親がボタンをかけ違えたまま一生懸命我が子を育てようとしているのです。



胎児がすでに一人の人間として主体性をもって自らの脳を育てている


赤ちゃんは自分で自分を育てている事を知ったら、こんな子育てはできないのではないでしょうか?まだまだ未知の世界ですが、今わかってきたことを少しまとめてみたいと思います。

さかのぼれば、どんな赤ちゃんを授かるのかは受胎の時の2人の波動や心の状態が大きく関わるようです家族の絆 〜夫婦(59):カリール・ジブラン「預言者」働くということについて〜)。そして、妊娠がわかった時に両親、特に母親が喜ぶ事がとても大事だそうです。子ども達の心を感じられますか?妊娠・出産・子育て 竹下雅敏)。

でも、残念ながら今の科学ではこのような理論は無視され、検証されてもいないと思うので、今回は今の科学でわかってきた胎児の五感の話です。

胎児は約10か月間お母さんのおなかの中で過ごします。身ごもりという言葉があるようにお母さんは赤ちゃんと一体です。でも、赤ちゃんはまだ物質次元なのだと捉えているお母さんは赤ちゃんと繋がろうとしていません。

そんなお母さんに伝えたいのです。「胎児はあなたを選び、多大な影響を受けながらあなたと繋がっていますよ。そして自分の五感(触覚・聴覚・嗅覚・視覚・味覚)を働かせて神経のネットワークを作っていますよ」と。すごいのは、脳が指令を出しているのではなく、胎児がすでに一人の人間として主体性をもって自らの脳を育てているということです。

胎児の五感を具体的に言うと、触覚は7週の頃から発達して、熱い、冷たい、痛いもわかっていますが、羊水の中で温かく守られながら、自分の指をしゃぶったり、手のひらや足を触りながら自分のボディイメージを作っていきます。14週の双子の赤ちゃんは羊水の中でお互いの存在を認識して合図しあっているそうです。


赤ちゃんと母親の関係と五感の発達


出生直後の母子接触は特に重要で、赤ちゃんが泣かない、体温が維持され、血糖値も高く、母乳分泌を促してくれることがわかってきました。

赤ちゃんの立場から見れば分娩室は最悪です。産道を潜り抜けた瞬間、まぶしすぎる光でお母さんの顔が見えません。感覚を研ぎ澄ませて、聞いたことのある声や匂い、初乳の味、お母さんの温かい肌を求めますが、その前に異常がないか体中をチェックされ、母子分離されます。直感的母子関係のスイッチを入れる大事な時間なのに。


聴覚は20週くらいから発達して母親の声を認識しています。体内で母親の話す言語音声を聞くことで言語に特化した能力が脳内で構築され始めるそうです。特に自分に向かって話しかけられた言葉の量と質はその後の言語能力と認知能力の発達に影響を与えるそうです。胎児のときからお名前を呼んで話しかけて欲しいと思います。

そして、赤ちゃんは生まれた時から自分に関わってくれた相手と同調して繋がる能力を持っています(新生児模倣)。つまり、与えられたテレビなどの音声や電子音から学ぶのではなく、自らお母さんの口元、舌の動かし方、しぐさ、口調、発音を真似ながら獲得していくのです。

不思議なことに、ほとんどの母親は赤ちゃんに歌うような抑揚のある高い声でゆっくり繰り返し話しかけます(マザリング)。体を揺らします。これは赤ちゃんと共鳴し合って直感的に引き出された行動ですが、母親が安心していないとうまくいかないそうです。

日ごろのおしゃべりがポジティブであることも重要です。人の意識は自分の話す言葉で作られていきます。心の動きを「やばい」の一言で表現するより「嬉しかったね」「悲しかったね」「怖かったね」「ドキドキしたね」と具体的に表現した方が自分を深く知ることができます。

心地よい生活音、自然の音、自分に向けられた優しい言葉、歌、絵本を聞いて育つ子どもは幸せだろうなと思います。お金はかかりません。


嗅覚も胎生期に形成されるので、生後すぐから母親の乳輪の匂いやおっぱいの匂いをかぎ分けることができます。実験では母親も、赤ちゃんと1時間以上接触していると、たくさんの産着の中から自分の赤ちゃんの産着の匂いを検知する事ができるようになるそうです。

そして、嗅覚は味覚と感覚統合されて脳の海馬や偏桃体などの記憶や情動に関与しているそうです。ある匂いを嗅いだ途端に過去の記憶が鮮明によみがえることがありますよね。

味覚に関しても胎児は羊水の味を感じているし、母親の食べたものの刺激を受けているそうです。味の識別能力は大人の2倍です。生後、母親の母乳の味や口触りや匂いに敏感な赤ちゃんが哺乳瓶の乳首やいつも同じ味の人工乳をいやがるのも納得です。母乳を飲ませる前に乳首を消毒するのは無意味どころか、赤ちゃんの感覚を混乱させるかもしれません。

でも、なぜか離乳食の時期になると、研ぎ澄まされた味覚が鈍感になり、色々な味を受け入れるようになるそうです。その時期に始まる指しゃぶりは乳首以外のものを口に入れる準備でもあります。


人は食べ物を視覚で確認して、嗅覚で匂い、触覚で硬さや形状、聴覚で咀嚼音、味蕾で味覚情報を脳に伝えて歯や舌で咀嚼して唾液分泌を促すことによって味わいます。そのすべてを人と共感しながら言語化することによってさらに感覚が発達していきます。このように五感は感覚領域間を超えて連携しあうのです。

子どもの嗜好の形成は家庭料理から。特に母乳を通して母親の食べているものに強く依存するそうです。日頃の食事が大切だと改めて思います。「この大根おいしいね。少し辛かったかしら?」などおしゃべりしながら楽しく食卓を囲むことで味覚が育つのです。

さらに言えば、食べ物の邪気、作る人のネガティブエネルギーもできるだけ排除していきたいものです。

視覚は羊水の中ではあまり使われていないようですが、20週くらいから発達して光を検知することができるそうです。誕生直後は20cmに焦点があり、0.02の視力です。これは抱っこされたときに母親の顔が見える距離だそうです。

1か月頃はゆっくり動くものやコントラストのはっきりしたものはわかります。


2か月過ぎると追視ができるようになり、色覚は3か月くらいから徐々に発達していきます。それらは全て、自分が主体的に動きながら何度も見て、触って、視神経を通して脳に送られて認識されていきます。立体視はそんな経験を積み重ねて獲得されます。

両眼視機能は6~8歳ごろに完成します。視覚機能は10年かけて発達していくそうです。単に見えるのとそれが何であるか?を認識できるのは違います。人は見たいと思うものだけを見て(認識)いるのかもしれません。

だから、赤ちゃんにとって、与えられたテレビや動画の視聴は無意味であり、逆に様々な主体的な体験の機会を奪い、ブルーライトの強い光を浴びることで眼精疲労や立体両眼視の発達に悪影響を及ぼします。


赤ちゃんは今、ここに全てを集中して自分の感覚を研ぎすませて生きている


さて、人は胎児の時から社会脳という社会にアンテナをはる脳を持っています。出産直後から周囲の雰囲気を感じ取り、対人関係にアンテナをはって相手の表情や行動の奥にある本音や意図を見抜いて反応する能力を持っているそうです。

又、赤ちゃんは生まれながらにして人間性のモラルを持っているそうです。対人関係を大切にして相手と楽しく触れ合おうとしたり、相手の困りごとに思いやりを持ち、力を合わせてチャレンジしようとするのです。

今の科学では証明できないかもしれませんが、母子はテレパシーで繋がっていると思います。意識に関しては前世の経験や記憶、進化段階も影響しているでしょう。

さて、どんなにAIが進化してもAIは自分で体験できません。五感で感じることもできません。自分から湧き出た感覚や感情を自分固有のものと認識できるでしょうか?直感的につながって人や他の生き物と共鳴し合うことはできるでしょうか?想像もしていないようなアイデアがひらめくでしょうか?

それに比べて、赤ちゃんは今、ここに全てを集中して自分の感覚を研ぎすませて生きています。主観の時間を生きているのです。お母さんの優しい声や関りから愛情を全身で感じ取り、目を輝かせ、体を乗り出し、生き生きこの瞬間を生きている実感で満たしているのです。

だから、子どもが自分を生きているか?輝いているか?高い波動でいるか?を基準に子育てができたら自ずと子どもは「なりたい自分」に育つことができるのではないでしょうか?同時に私たちは伴走しながら自分の感受性を磨き、ヤマ・ニヤマを指針として生きていく姿を見せたいものです。

お母さんたちに「赤ちゃんって凄いのよ!」とおしゃべりしたくなりました。赤ちゃんを身ごもっていたり、繋がっているお母さんはきっと胸の奥から愛おしさと喜びが湧いてくると思います。数字に支配された情報は不安ですが、自分の腑に落ちた情報は喜びと同時に自分を覚醒させてくれます。赤ちゃんもテレパシーで「そうだよ!」と応援してくれることでしょう。



Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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