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里山Ubuntu通信:13日目  仮想化環境へのインストール(2)

仮想化環境へのインストール(2)

仮想マシンの作成

では仮想マシンの作成手順について説明します。VirtualBoxを使ってお使いのWindowsパソコン上に、実際には存在しないパソコン、「仮想マシン」を作成してみましょう。もし、VirtualBoxが起動されていなければ、起動してください。

インストール後の起動画面

VirtualBoxの起動画面



この画面、水槽のような箱とそれを高いところから伺う4色の蝶とペンギンというちょっと不思議なイラストが描かれています。この箱は「仮想マシン」を、4色の蝶はWindowsを、ペンギンはLinux(昔からLinuxと言えばペンギンです)をそれぞれ象徴しているものと思います。「仮想マシン(箱)ができたら、Windows(蝶)あるいはLinux(ペンギン)がその中に入れます」ということで、ここで「入る」とはインストールすることを意味しています。

では、早速最初の箱(仮想マシン)を作成してみましょう。画面の左上「新規」というラベルがついた青いボタンがあります。これをクリックすると、情報を質問するダイアログが表示されます。このダイアログは、入力項目が少ない「ガイド付きモード」と詳細な項目がある「エキスパートモード」が用意されており、ダイアログ右下のボタンを押すとガイド付きからエキスパートへ、あるいはその逆に切り替えができます。「エキスパートモード」の画面が表示されるようにしてみてください。

ガイド付きモード

ガイド付きモード

エキスパートモードの画面

エキスパートモード



以下、エキスパートモードの画面の入力項目について、ひとつずつ説明します。

(1)名前
これから作成する仮想マシンの名前です。この名前は、仮想マシンのデータを保存するフォルダの名称に使われるので、スペースを含まない英数文字とすることを推奨します。ここでは"ubuntu1604"とします
(2)タイプ
プルダウンリストから"Linux"を選択します。
(3)バージョン
タイプをLinuxにすると自動的に"Ubuntu (64-bit)"になります。
(4)メモリーサイズ
これから作成する仮想マシン用に確保するメモリーの上限を入力します。スライダー(矢印)を左右に移動、あるいは数値を入力します。この項目は非常に重要なので、下に解説します。
(5)仮想ディスク
この項目は、仮想マシン用に割り当てるハードディスクに関するものです。「仮想ハードディスクを作成する」になっていることを確認ください。
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里山Ubuntu通信:12日目  「Ubuntuのセキュリティは大丈夫でしょうか?」〜 読者の方からのご質問

「Ubuntuのセキュリティは大丈夫でしょうか?」
〜 読者の方からのご質問
読者の方より1件ご質問をいただきましたので、ご回答したいと思います。

ご質問原文(誤字と思われた箇所を修正しています)

現在AVGのインターネットセキュリティ(有償)を使用しています。
ubuntuでのセキュリティはどうしたものかと思っています。
いずれは掲載していただけるとお待ちしていればよろしいのでしょうか。

質問者の方は、Windowsパソコンに商用のセキュリティ対策製品を購入して利用されているようで、Ubuntuでの対策はどうしたら良いか、というご質問です。

ご質問をちょっとアレンジして、「今度、WindowsシティからUbuntu村に引っ越しを考えている。Windowsシティでは保険に加入していたのだけれど、Ubuntu村ではどんな保険に加入したら良いか?」として考えてみたいと思います。

保険の加入は起こり得るリスクを想定して行うものです。そして、起こり得るリスクはその環境に依存します。ということで、最初にWindowsシティとUbuntu村の規模を比較してみましょう。OSの利用率について、正確なところはわかりませんが、参考となるサイト(Webサーバのログをもとにカウントしているものと思われます)は複数あります。http://www.netmarketshare.com/というサイトが公開している情報を見ると、この記事を書いている8月13日時点での上位5つは、以下のようになっています。

  1. Windows 7
  2. Windows 10
  3. Windows XP
  4. Windows 8.1
  5. Mac OS X

上位4件をWindowsが独占、その合計はなんと約9割(86.28%)です(Windows 8は8.1と独立にカウントされています)。かろうじてベスト5に残ったMac OS Xは5%を切っており、「すべてのLinux」がやっと第6位です(Ubuntuはlinuxの一つですから、Ubuntu単独にすると利用率はさらに低くなります)。マイクロソフトの創始者、ビル・ゲイツとポール・アレンは「すべての家に(1台の)PCがあるようにしたい」と夢を描き、それは長らくマイクロソフト社のミッションでした。二人の夢を遙かに凌駕し普及したWindowsは、文字通り、OSの世界の覇者であり、他を寄せ付けません(前代未聞のWindows 10への強制誘導の背景にはその奢りがあるわけです)。

次に視点を変えて、脅威の実績、データを見てみましょう独立行政法人情報処理推進機構(通称 IPA)では、コンピュータウィルスや不正アクセスの状況について、報告書を公開しています。現時点での最新版であるコンピュータウイルス・不正アクセスの届出状況および相談状況 [2014 年第 1 四半期(1 月~3 月)]を見てみましょう。報告書は、興味深い情報を多数含んでいますが、ここで注目するのは「2014 年第 1 四半期の検出ウイルス」です。Windows/DOSについては、49種25,821個とこれまた圧倒的多数で、Mac OS, Linuxを含むOSSは0件となっています。

利用者が少なくても、過去の被害がなくても、決して安全とは言えませんし、何の保証にもなりません。しかし、ブラウザでインターネットの情報を参照したり、メールの読み書きを行ったりするような使い方をするのであれば、次のような使い方をすれば良いと、私は思います。

  • ソフトウェア(パッケージ)の状態を最新に保つようにする(Windows Updateに似た仕組みがあります)
  • 使わないソフトウェア(パッケージ)は削除する(Windowsの「プログラムのアンインストール」に似た仕組みがあります)

いずれもUbuntuに限ったことではなく、Windowsを含めあらゆるOSに、すべての人に、いつの時代にも普遍的に当てはまる内容です。技術的な用語も難解な概念もありませんが、二点目について少し補足します。持っているものは盗まれたり、悪用されたり、攻撃されたりしますが、「持たないもの」にはそれらは起こり得ません。「ミニマム(最小限)」で過ごす、ことこそもっとも重要で、効果的なセキュリティ対策なのです。

(Haru)

読者の方からの質問コーナー

読者の方からいただいた、もうひとつの疑問にもお答えします。仮想化環境のインストール記事についてご意見をいただきました。

私は現在パソコンをWindows7とUbuntu14.04のデュアルブート環境で動かしています。Win上のVirtual boxなどのエミュレータでUbuntuを動作させた場合、若干動作速度が遅くなることがあると考えられます。Win上のVirtual boxでUbuntuを動かすメリットというのが、いまいちよく分かりません。(抜粋、一部誤字と思われた箇所を修正しています)

質問者の方が書かれているようにWindows上の仮想マシンとしてUbuntuを実行する場合、パソコン本来の性能が出ません(体感的には直接インストールした場合の6, 7割程度のパフォーマンスです)。仮想マシンは一種間借りした状態であり、一軒家を自由に使う場合と比べると窮屈なわけです。それにも関わらずこの方法を紹介している理由はただ一つ、お使いのWindows環境を温存しながら、Ubuntuを継続して利用(試用)することができるから、それにつきます。デュアルブートのインストール手順については、インストール時に問題が発生するとWindowsが起動しなくなる「可能性」がありますし、インストールして使ってみて「私はやっぱりもうしばらくWindowsで良いや」と思ったとしても、元のWindowsのみの状態には簡単には戻せません。一方、仮想マシンとしてのインストールは、VirtualBoxをアンインストールすれば完全に(かつ安全に)元の状態に戻ることができます。

本連載では最初に「(インストールDVDで)試す」方法を紹介しました。この方法は「Windows環境を壊さない」という意味で安全ですが、設定もデータも保存できない「使い捨て」環境のため、Ubuntuを使い続けるかどうかの判断には不十分です。一方、「仮想化環境のインストール」は、パフォーマンスは劣りますが、継続してUbuntuを「使ってみる」ことができるので、「どのようにUbuntuとWindowsを使い分けるか」を判断いただけます。つまり、この段階はまだ最終形ではなく、通過点に過ぎません(「試食」から「モニター」という感じです)。実際に利用してみた結果、「本格的にUbuntuを利用しよう(「定期購入」の申し込み)」と決断された方のための手順はその先となり、「デュアルブート環境」の手順はここで紹介されます。

著者:Haru(ペンペン先生)

1962年、北海道生まれ。うお座。
1985年、北海道大学工学部卒業、IT系企業に入社。
2003年、業務テーマとしてLinuxに取り組む。
2015年、関東地区交流会参加をきっかけに上映会スタッフに参加。
横浜市在住

*ペンペン先生への感想や質問はこちらのフォームからお願いします。


里山Ubuntu通信:11日目  仮想化環境へのインストール(1)

仮想化環境へのインストール(1)

はじめに


この連載は、読者のみなさまが現在お使いのWindows環境からUbuntu環境へ移行するためのお手伝いをすること、ガイドを目的としています。「なかなか実際のインストール手順の解説が始まらない」と思われている方もあるかもしれませんが、お待たせしました。いよいよ今回からインストール手順について取り上げていきます。Ubuntuのインストールは、ハードディスクの他に、USBフラッシュメモリ、USB接続ハードディスクに行うことが可能です。さらにパソコン本体に内蔵されたハードディスクへのインストールについては、9日目  UbuntuとWindowsの共存形態で紹介したような形態を選択することができます。

インストール手順の解説は、「内蔵ハードディスク」に「仮想化アプリケーションを導入」した形態(9日目の記事の最後の図の形態)を対象とします。なぜ、これを選択するかというと、「その他の組み合わせ(形態)では、手順を誤った場合、現在お使いのWindowsパソコンが利用できなくなる可能性がある」からです。私は、読者の方のほとんどの方が、1台のWindowsパソコンを利用されていることを想定しています。その場合、そのパソコンが起動しなくなったり、Ubuntuはインストールできてもインターネットに接続できなくなったりすると、大変困ると思います。なので、もっとも安全な形態から始めます。

「仮想化環境へのインストール」とは何か


「仮想化」とは日常の生活ではまず使うことのない言葉です。それがどのようなものか、おおよその概念を理解いただいたほうが作業しやすいと思いますので、たとえ話で説明してみます。

あなたがある日思い立って、Excelで家計簿を作ることにしたとします。その場合、することは、まずExcelをインストールして、それから「空の表」を新規に作成します。その作成した表に数値や式を記入して、結果を保存したものが家計簿となります。仮想化環境へのインストールでは、まず仮想化環境を扱うためのアプリケーション、VirtualBoxをインストールします(Excelに相当します)。VirtualBoxでは、「空の仮想マシン(「空のExcel」に相当します。この時点では「そういうものがあるんだ」くらいで結構です)」というものを作成することができます。仮想マシンは、あなたのパソコンの上で動作する見えないパソコンで、CPUやハードディスク、メモリなどを持っています(VirtualBoxが持っているかのように見せます)。なので、仮想マシンにはOSをインストールすることができます。インストールが終わった仮想マシン(「家計簿が登録されたExcelに相当します)では、インストールされたOSが動きます。つまり、ステップとしては以下のようになります。

  1. WindowsパソコンにVirtualBoxをインストールする
  2. VirtualBoxを起動して、「新しい仮想マシン」を作成する
  3. 作成した「新しい仮想マシン」にUbuntuをインストールする

今回の記事では、項番1について説明します。「なんだか難しそう」ですか?大丈夫、以下の説明は、私が実際に作業した際に保存した画面に注釈をつけて作成しているので、この通り行えば必ずできます。もし、うまくいかなかったり不明な点があれば質問フォームでお尋ねください。

はじめましょう


まずは、インストール用のプログラムをダウンロードします。ダウンロード元は、https://www.virtualbox.org/です。文章が英語ですが、気にする必要はありません。

VirtualBoxのダウンロード元

VirtualBoxのダウンロード元



さも「押してください!」と言わんばかりのダウンロードボタンをクリックします。

for Windows hostsを選択

for Windows hostsを選択



この画面ではダウンロードするプログラムを選択するようになっています。青く反転している「VirutalBox 5.1.2 for Windows hosts x86/AMD64」をクリックします。

インストーラをダウンロードする

インストーラをダウンロードする


画面はInternet Explorerですが、おなじみの「ダウンロード」してファイルを保存します。これは必須ではありませんが、上の画面の下部に「MD5sum」というリンクがあり、そこをクリックすると、ダウンロードしたファイルが正しいファイルかどうかを確認することができます(詳細は5日目  インストールDVDを作るを参照)。次は、ダウンロードしたファイルをダブルクリックして、「実行」すると、こんな画面が表示されます。

インストーラ起動画面

インストーラ起動画面



「Next(次へ進む)」をクリックすると、設定の変更画面が表示されます。

設定画面(変更は不要)

設定画面(プログラムの構成)



ここは特に変える必要はないので、「Next(次へ進む)」をクリックします。すると、「デスクトップにショートカットを作りますか?」など聞かれます。

「Install」をクリックしてインストール開始

設定画面(ショートカットの作成等)



特に変更する必要はないので、「Next(次へ進む)」をクリックします。

動作に必要なソフトウェアのインストール確認

動作に必要なソフトウェアのインストール確認



ちょっと見慣れない画面が表示され、「インストールするかしないか」選択を求められます。まず、これは何かですが、Windowsパソコンの世界に仮想的なパソコンを建てる際に必要な設備(電気、ガス、水道のようなもの)だと思ってください。この画面を含め、3度質問されますが、すべてに「インストールする」を選択しないと、Ubuntuが動作しません。画面には、「Oracle Corporationからのソフトウェアを常に信頼する」というチェックボックスがありますが、これを一度チェックしておくとそれ以降は(VirtualBoxに限らず一切)確認を求められなくなります。ご判断にお任せしますが、私は同種のものについて、マイクロソフト社の場合はチェック(常に信頼)し、それ以外は都度確認するようにしています(Windowsを使っているのにマイクロソフト社を信頼しないのは矛盾だからで、心から同社を信頼しているわけではありません。念のため)。

インストール終了

インストール終了



作業中にパソコンにコーヒーをこぼしたり、停電しない限り、上の図のように無事終了するはずです。この画面が表示されましたら「Finish」をクリックして、「VirtualBoxのインストール完了」となります(お疲れ様でした!)。

インストール後のVirtualBoxの起動画面

インストール後のVirtualBoxの起動画面



これがVirtualBoxの画面です。この時点では、当然ながら、空っぽで何もできません。次回はここに仮想化されたUbuntuを導入します。

(Haru)

著者:Haru(ペンペン先生)

1962年、北海道生まれ。うお座。
1985年、北海道大学工学部卒業、IT系企業に入社。
2003年、業務テーマとしてLinuxに取り組む。
2015年、関東地区交流会参加をきっかけに上映会スタッフに参加。
横浜市在住

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里山Ubuntu通信:10日目  「ウィンドウズ7を使い続けて問題ないでしょうか?」〜読者の方からのご質問

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「ウィンドウズ7を使い続けて問題ないでしょうか?」
〜 読者の方からのご質問
里山Ubuntu通信の記事には各回、読者の方からの質問を受け付けるためのフォームが用意されています。今回、7日目の記事について、読者の方より2件ご質問をいただきましたので、ご回答したいと思います。

質問1「ウィンドウズ7を使い続けて問題ないでしょうか?」

Windows 7はマイクロソフトの製品なので、同社の見解を確認してみることにしましょう。「Windows 7 メインストリーム サポート終了のお知らせ - Microsoft」という記事がありました。このページでは、Windows製品のサポートの期間、ライフサイクルについて、以下の4つの区切りを示しています。括弧書きの中は、私が追加したものです。

  1. ライフサイクル開始日(Windows 7では、2009/10/22)
  2. メインストリームサポート終了日(同 2015/1/13)
  3. 延長サポート終了日(同 2020/1/14)
  4. サービスパックサポート終了日(同 2013/4/9)

最低5年間続く「メインストリームサポート」が終了すると、サポートの内容が、「延長サポート」に格下げされます。延長サポートで受けられなくなるのは、具体的には「仕様変更、新機能のリクエスト」、「無償サポート」、「修正プログラム、新規リクエスト」の3つとあります。読者の皆様は、マイクロソフトにWindowsの仕様の変更や機能追加についての要望を送ったこと、あるいはWindowsに関する問い合わせ等のサポートを依頼したことがあるでしょうか?もしなければ(私はありません)、とりあえず延長サポート終了日である2020年1月14日までは使っていてもあまり困ることはないと思います。

延長サポートが終了すると「セキュリティ更新プログラムの提供が行われなく」なるとあります。セキュリティ更新プログラムは、「セキュリティ上の問題を解決、軽減するための修正」ですから、「将来セキュリティ上の問題が発見されてもマイクロソフトは、それを修正しない」ということを宣言しているわけで、言外に「そうした製品を使って発生した不具合には責任を持たない」と言っています。これは私の意見ですが、対象が何であれ、提供している主体が「責任を持たない」と言っているものは、利用しないほうが良いと思います。したがって、私は延長サポートの終了以降、Windows 7を使うことはお勧めしません。

ここに重要なポイントがあります。それは、「一般論としては、サポート対象の新しいOSを使うほうが望ましいけれども、新しいOSを使えば問題がないとは限らない」、ということです。なぜかというと、誰も未来にどんなセキュリティ上の問題が発生するか、今わからないからです。その意味でこの話は、保険の加入と似ています。「この保険に加入するのが正しい」という正解はないので、起こり得るリスクを頭の中でシミュレーションしながら、「自分が」どうしたいかを考えるしかありません。

質問者の方に対する私のアドバイス(答え、ではなく)は、「延長サポートの期間内はWindows 7を使い続けて、その間にWindows以外の選択肢をご検討されてはいかがでしょう」となります。そして、本連載では具体的な選択肢としてUbuntuについて、皆様のお役に立つような情報の提供を続けていきたいと思っています。

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里山Ubuntu通信:9日目  UbuntuとWindowsの共存形態

UbuntuとWindowsの共存形態

ハードディスクについて

パソコンは自転車を組み立てるように部品を買ってきて組み立てることができます。最先端、あるいはこだわりのパーツを組み上げる「自作パソコン」派の方は今も存在しますが、大多数の方はお店に行って、あるいはネットで買ってきたものを使われている方が多いことでしょう。パソコンのケースの中には、CPU(演算装置)、メモリ、ハードディスク、有線/無線のネットワークやサウンド機能を利用するための部品などを組み合わせた基板(「マザーボード」と呼ばれます)が電源装置とともに納められています。Windows OSやみなさんが作成したデータ(ファイル)は、このうち「ハードディスク」に記憶されています。

ハードディスクについて、名前は聞いたことがあっても(パソコンのケースを開けて)実際にものを見たことがある方は少ないかもしれません。そこで、どんなものか写真をご紹介します。

IMG_3875
ここに並んでいるのは、ノートパソコン用のハードディスクです。ノートパソコンは特殊なものを除き、ドライバがあるとハードディスクが取り出せるようになっています(最近のデスクトップ型はドライバすら不要で取り出せるものが多いです)。ひっくり返してみると、こんなふうになっています。

IMG_3876
手前側にパソコンに接続するためのコネクタが見えます。いずれも同じ形状で、シリアルATAと呼ばれる規格に対応しています。左側の2台は、だいたい同じ感じですが、右端の1台は見た目が異なることにお気づきになったかと思います。左側の2台は昔ながらの、あるいは本当の「ハードディスク」で、中には薄い円盤が入っています。この円盤に釣り糸を垂れるようにアームを垂らし、磁気を書き込んだり、消したりして情報を記録しています。右側のものは、SSD (Solid State Disk)と呼ばれるもので、円盤は入っておらず、電子回路が中に入っています。SSDは円盤を回したりしないので、軽量でショックに強く、高速です。良いことずくめですが、同じ容量を持つハードディスクに比べて割高となります。

Ubuntuのさまざまなインストール形態

さて、みなさんが購入してきたWindowsパソコンのハードディスクの内容を簡単に図示すると次のようになります。

all_windows
この箱はハードディスクを現しており、「ハードディスク全体」がまるごとWindows用に使われていることを意味しています。連載では、UbuntuのインストールDVDの作成方法と使い方(起動の仕方)を説明しましたが、「体験する」と「インストールする」の違いは、前者がハードディスクに変更を加えないのに対して後者はハードディスクに書き込む点にあります。特に「新規インストール」あるいは「クリーンインストール」と呼ばれる方法でインストールすると、次の図のようになります。

all_ubuntu
この図では、Windowsのマークがなくなっています。建築で例えるならば、一旦家(Windows)を壊して更地にする、その後に新しい家(Ubuntu)を建てるイメージです。全区画(ハードディスクの容量)をUbuntuで占有しており、すっきりしてすがすがしいのですが、もはやWindowsは起動しませんし、Windows上に作成したファイルも残っていません。「もう、Windows(マイクロソフト)にはこりごりだ!金輪際縁を切ってやる!」という方は良いかもしれませんが、なかなかそうもいかないと思います。では、どうするか。

パソコンでは、本物の家と違って、「一旦建てた家の区画を狭くする」ということができます。Windowsパソコンを買ってきたら、全領域が「C:(Cドライブ)」になっていますが、これを次の図のように狭くすることができます(裏技でもなんでもなく、Windowsの標準機能で実行できます)。この場合、Windowsは通常通り起動し、それまでインストールしたアプリケーションや作成したファイルもそのまま利用できます。

small_windows
この状態で、Ubuntuをインストールすると「空き地にインストールしましょうか?」と聞かれ、同じハードディスクにWindowsとUbuntuが共存する状態が実現できます(賢いですね!)。実は、UbuntuのインストールDVDは、この「Windowsの区画を狭くしながら、Ubuntuをインストールする」ことができるようになっているので、通常自分でWindowsの領域を狭くしないで、インストールの中で行います。「Windowsの環境も残しながら、Ubuntu生活を始められる」わけです。

both
実は、Windows家の上にUbuntu家を建てる(乗せる)ということもできたりします。この図でWindowsの上に乗っている平たい板は、「仮想化機能」という特別なアプリケーションを示しています。このアプリケーションは、「自分自身が独立したパソコンのふりをする」というもので、このアプリケーションを使うと、UbuntuインストールDVDは自分が本物のパソコンの上で実行されていると騙されて、インストールしてしまいます。

vm
何を隠そう、3日目 竹下氏、Ubuntuをインストールで、「「VirtualBoxのインストール」から「VirtualBoxとUbuntuを立ち上げる」までの動画を、シャンティ・フーラ・白井薫代表が作ってくれました。」とあるのは、この形態になります。この形態では、Windowsの環境はこれまで通り残っていて、仮想化アプリケーション(VirtualBox)を実行するとUbuntuの環境が同時に利用できます(Windowsの中にUbuntuが表示されているアプリケーションがあるイメージです)。

ここまでの説明を読むと、「Windows環境がそのままで、Ubuntuも同時に使えるなんて最高!」と思われるかもしれません。それは実際そうなのですが、デメリットもあります。仮想化アプリケーションが作り出す環境は、その下にあるWindowsの環境を一種間借りするわけなので、借りる側であるUbuntuは一種の居候状態です。メモリなどの資源を割り当てすぎると大家さんであるWindowsが遅くなりますし、気を遣って遠慮すると今度はUbuntuのほうが実用にならなくなります。ある程度新しく、パワフルなパソコン(ひとつの目安として、6GB以上のメモリを搭載しているパソコン)をお使いの方以外にはお勧めしません。

今回は、Ubuntuのハードディスクへのインストールの形態についてご紹介しました。実際のインストールの手順については、この後の記事でご説明する予定です。

(Haru)

著者:Haru(ペンペン先生)

1962年、北海道生まれ。うお座。
1985年、北海道大学工学部卒業、IT系企業に入社。
2003年、業務テーマとしてLinuxに取り組む。
2015年、関東地区交流会参加をきっかけに上映会スタッフに参加。
横浜市在住

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