電話大ッキライの私が、携帯の着信に気づいたのは雨の朝であった。誰からだろうと思ってみると、登録されていない人からだ。留守電が入っていたので、何気なく聞くとMr.Xだった。
「体のことでご相談があるので、お電話ください」と蚊のなくような声で録音されていた。
それを聞いた瞬間、わたしの体は硬直して金縛りのようになった。
昨日おとといと風邪気味で、寝られるだけ寝て、今朝はやっと爽快な朝を迎えたというのに、この電話のせいで不快感100%にされてしまったのだ。
この人はもと患者さんだけど、別に教えたくて携帯の番号を教えたわけでもない。しかも親しいわけでもないのに、ときどき忘れた頃に相談の電話がある。それも体のことだ。
前回は1年以上前だったが、一応相談にのった。ただし、「お金も払わずに、タダで相談してくるのは困る」と突っ込んだのにもう忘れたのか、よほどの鈍感なのか。
まあ小心の人ではあるが、自分の小心のせいで他人の平和な朝をぶち壊すとは。
ネコと遊びながら、ムシャクシャを振り払おうとしたがそれは無理だ。
それなら、自分の心の中を見てやろう。
怒り、罪悪感、恐怖
あいつのせいで、静かな朝が台無しになったという怒り。
ムラムラしている。あいつの鈍感さに怒りを感じている。
返事の電話はしないと決めたけど、
相手を傷つけるのではないかという罪悪感。
けっこう、わたしも人に気を遣っているんだわ。
怒りと罪悪感に気づいただけで、ずいぶん心が軽くなってるよ。
でもまだ、なにかわだかまっている。 何だろう?
平和な時間が一瞬で台無しにされた恐怖。
そして、無視したために相手がどう思うかの恐怖。
Mr.Xそのものにも恐怖を感じでいるわ。
男性だし、うちのありかも知ってるし。コワイ。
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暖かく見守る大きな存在と、一途な少女との対話にも見える、朝のひととき。その先に見えたものは、、、?