与党セヌリ党の朴槿惠が、昨夜韓国次期大統領になった。彼女は相手の民主統合党(DUP)の文在寅に51.6パーセント対48パーセントという僅差で勝利した。
朴の選出は、韓国の企業エリートによる、労働者階級との対決に備えた、独裁主義的な支配への転換を示している。彼女は1960年代と1970年代の大半、韓国を支配していた今は亡き軍事独裁者朴正煕の長女だ。
彼女の父親は、民主的権利や、労働者によるあらゆるストライキや抗議行動を情け容赦無く抑圧し、韓国のコングロマリット、財閥の急速な成長の基礎を築いた。
母親が1974年に北朝鮮工作員によって殺害された際、朴は父親の大統領夫人役をつとめた。彼は1979年、労働者や学生の騒乱という流れの中で、抗議行動参加者の殺害を巡る激しい議論のさなか、韓国CIA部長の金載圭によって暗殺された。1998年、彼女は国会議員になった。
文在寅 (上)と朴槿惠の選挙横断幕
朴は選挙勝利後、支持者達に向け、経済回復を求める“国民の希望”の勝利だったと語った。
主要大企業は朴を支持した。彼女は、恐らく将来のより良い生活とされるものの為に、労働者階級の犠牲を要求するであろう父親のスローガン“より良く生きよう”を使った。
過去、1961年の軍事クーデターによって“国を救った”父親を称賛して語ってきた朴ならば、緊縮策を強行するため、労働者階級に対する警察国家的抑圧をしかけることも辞さないだろうと大企業は判断したのだ。
朴は有権者に対し、韓国“初の女性大統領”を選出することによって“ジェンダーの平等”に向けた歴史的な“変化”を起こすよう訴えた。実際は、
彼女は金持ちと貧乏人の格差を広げる自由市場改革の再来を表している。彼女は自らを、イギリスのマーガレット・サッチャー首相やドイツのアンゲラ・メルケル首相の韓国版になぞらえている。
労働者階級にとって、社会状況は悪化し続けよう。今年、韓国経済はおよそ2.4パーセント成長に鈍化し、韓国GMや巨大通信会社のKTを含むより多くの企業が従業員を削減している。学生達は膨大な借金を背負って大学を卒業するのに、五人に一人は仕事を見つけることができない。
民主党が大統領選挙に勝てなかったことは、韓国のいわゆる“リベラル”陣営の深刻な危機を反映している。
とりわけ金大中大統領は労働者階級の社会的地位を弱体化させる上で重要な役割を果たしていた。1997-98年のアジア金融危機の間、彼は国際通貨基金(IMF)の要求を断行し、大企業の終身雇用制度を終わらせ、低賃金臨時労働に道を開いた。金の後継者盧武鉉はこうした政策を継続し、2007年に李が広範な国民の反感に乗じて権力の座につくのを可能にした。
選挙は主として国内経済政策に焦点を当てていたが、迫り来る国際問題が、朴の大統領選出に重要な役割を演じたことは確実だ。
朴の勝利がオバマ政権に歓迎されるのは確実だ。戦略的に中国を包囲するためのアジアへの“旋回”で、オバマ政権は韓国を重要な同盟国と見なしている。とはいえ、韓国の支配者集団は、アメリカとの軍事同盟と、中国との巨大な経済関係の板挟みになっている。財界エリートは既に韓国最大の貿易相手国である中国との緊密な絆を築きあげており、文等の政治家達も、同様に北朝鮮を低賃金労働の場として利用することを狙い、北朝鮮に対してより穏やかな態度をとって、関係を深めようとしている。
北東アジアにおける緊迫した状況は、安倍晋三の右翼自由民主党を政権に復帰させた日曜の日本での選挙によって更に悪化した。国粋主義的綱領を掲げて戦った自民党は、日本と中国の一層の対立を招くだろう。韓国の選挙も片づいたので、朴新政権はアメリカの外交政策と一層露骨に連携する外交政策を自由に推進することが可能だ。
朴の選出は、この地域における激しい政治的混乱と、韓国国内でのより激しい階級闘争の時代が始まったことを示すもう一つの目安だ。