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ままぴよ日記 130 「これからの放課後をつくりたい 前編」

 懐かしいなあ~
 40年も前ですが、私の子ども達が小学生だった頃は、学校から2キロの道をそれぞれ道草しながら帰っていました。途中に叔父の畑があったので、もらった大根を引きずりながら帰ってきたり、田んぼで遊んで泥だらけになって帰ってきたこともありました。魚屋さんに寄って可愛がられていた事は後で教えてもらいました。

 当時は専業主婦が7割の時代です。働いている親の子どもを預かる学童保育所はなく、家の勝手口にランドセルを置いてすぐに友達と遊んでいました。家にも友達が遊びに来ていましたが外で遊ぶ時はどこにいるのかわかりません。今では考えられない事ですが、本当に子ども任せ。でも地域の目があり、子どもの顔と名前を知っていましたので気にかけてくれていました。

 子ども達に学校の思い出を聞くと、今でも放課後の楽しかった話で盛り上がります。
(かんなまま)
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放課後は子どもにとって特別な居場所


新学期が始まりました。小学生の子ども達が放課後をどのように過ごしているかご存じでしょうか?

放課後は子どもにとって自由な時と、仲と、居場所(空)がそろっている特別な居場所です。これをサンマ(三つの間)といいます。

学校で思い通りにならない事があっても、そこで自分を取り戻せました。好きなことに没頭したり冒険する時間があったのです。そしてお腹がすいて家に帰ると粗食ですが、おいしいご飯と家族団らんがありました。喧嘩もしたけれど人と関わる経験を積みました。


教育は学校だけでするものではありません。日常の会話や生活そのものから学ぶ事の方が多いのです。特に自分で体験する遊びは子どもの成長に欠かせないものです。

今急速に進化しているAIは人間の発達の過程を解明することによって創られています。AIは様々な体験学習を重ねて重ねて日々進化しているのに、今の子ども達は体験を減らして減らしてどこに行くのでしょうか?


学童保育での問題点


現に、赤ちゃんの時は親子カプセルの中で過ごし、1歳前から保育園等に預けられ、車や自転車で送迎されて歩くこともありません。

6歳になったらいきなり学校まで歩いていき、45分間授業を5時限まで受けます。給食も20分間で食べて、放課後はそのまま学童保育に預けられます。本当に夢中で遊ぶ体験も、ぼ~っとする時間も無いのです。

自由で楽しい学童保育なら喜んでいく事でしょう。でも決まりごとが多くて、ここでも指導される場所だったらどうでしょう?子どもにとって自由がないというのは無罪刑務所です。



そもそも学童保育所(放課後児童クラブ)とは母親の職場復帰を推進するために始まった事業です。放課後や土曜日、長期休みに預かってくれるし、我が町は19時まで可能です。親にとってこんなにありがたい制度はありません。

でも、学童保育の運営方法は統一されておらず、市町村によって担当課が違います。我が町では保育という意味で学校を管轄する教育委員会ではなく子育て支援課が担当しています。

まず施設が必要ですが学校は放課後の責任は持てないと、空き教室の使用を拒否しました。それで学校の近くに施設を作りました。行政はその準備で手一杯になり、指導員の人材養成や一貫した事業目的を共有する時間もなく各地域に丸投げしたのです。

丸投げされた地域も困り、とりあえず施設長は公民館館長が兼ねることになりました。不思議なことに公民館は生涯学習課です。生涯学習課管轄の公民館長が子育て支援課の学童保育の施設長になり、学校から子ども達がランドセルのまま通ってきます。

指導員の資格は必要なく、公募されました。夏休みは朝から、通常は午後からの勤務なので時間の都合がつく人に限られました。

2015年に国から学童保育の運営指針が出て、指導員もやっと認定資格研修を受けることになりましたが、すでに走り出していたので子どもにとってアタリ、ハズレが出てきました。

学習支援もしてくれて、楽しい企画や外遊びもできる学童保育所もあれば、外遊びは禁止、静かに過ごさないと注意されるところもあります。子ども達が持っている学習用タブレットでゲーム三昧のところもあります。

子どもが行きたがらないケースも増えて、我が町では減少傾向です。でも親は家に1人で留守番させるのが心配です。

保育費も自治体によって異なります。民間経営の学童保育所も増えてきました。月に3000円から7000円。他におやつ代、延長保育代、夏休みの利用代も加算されます。ママ達の話によると年払いで結構な金額になるそうです。我が町の場合は途中で行かなくなっても返金されません。

学童保育について学校に相談しても管轄外と言われ、子育て支援課に相談しても地域の事情があると説明されて改善されないそうです。指導員も不足しています。


子どもたちに異変が起きている


一方、学童保育所に行っていない子ども達は寄り道しないでまっすぐ帰らなければいけません。帰宅後、校区外に遊びに行ってはいけないし、友達の家も禁止です。(親の留守中に勝手に行ってはいけない)。結局家で過ごす子どもが多く、ゲーム漬けの子どもが増えています。次に多いのがお稽古事、塾です。

これらは子どもが望んだことでしょうか?もともと楽しいはずの放課後なのに、ここでも子どもの選択肢はありません。

でも、子どもの遊び場をママ達とつくり始めてから、みんなの意識が変わってきました。ままぴよ日記35

photo by かんなまま

大人社会の都合で子どもの時間や自由を奪ってはいけない。子どもが自ら育ちゆく環境を取り戻さなければ子どもがおかしくなると感じ始めたのです。

現に、冒険遊び場で目撃する子どもの姿に異変が起きています。

遊具がないと遊べない、ボール遊びが成り立たない、大繩跳びの手を上に上げて回せない、リズムにのれない、体の使い方がばらばら。立体視野が育っていない、炎が見えない熱い炭を手で持つ、次々に木から飛び降りるのを見ているのに周りの子から何も学ばないでプールに飛び込むように飛び降りる、体が硬い、などなど。

身体の運動機能は5歳までに様々な動きを体験して獲得します。飛ぶ、跳ねる、蹴る、転がる、揺れる、回る、息を殺してじっとする・・・すべて遊びの中で獲得していきます。楽しんでいる時が一番学んでいる時なのですが、そんな体験をしていない子が増えているのです。


放課後の子どもの居場所を作る


さて、月に一度の冒険遊び場は作りましたが、それは子どもが自分の足で行けるところではありません。私たちの理想は、日常子どもが自分の足で行けるところに自由に過ごせる居場所が欲しいのです。

これは行政にもずっと伝えてきたことですが、子どもの姿をよく観察していないとその必要性がわかりません。見えないところで静かに大きな異変が起こっているのです。こども家庭庁ができてやっと子どもの居場所づくりが大切だと言い出しましたが、ほとんどの人がその意味さえ分からないままです。

私は、そのモヤモヤを抱えながらどうする事も出来ずにいました。でも、市の子育て支援計画を作る「子ども子育て会議」の策定に関わっていましたので子どもの遊ぶ権利と意見を表明する権利を保障することを明記しました。そして、施策の行動目標には放課後の子どもの居場所を作ると明記しました。

先の市長選挙でも、子育ての公開アンケートを出して、候補者に子どもの遊びと居場所づくりの必要性を問いました。全ての候補者がその意味も現状も知らなかったので資料も持っていき、説明しました。

初めてのことでドキドキハラハラの公開アンケートでしたが、これから市長になる人に会えて子どもの居場所の必要性を伝えられたことはよかったと思っています。

結果、「子どもの居場所を作ります」と回答した方が市長になりました。(無回答の人もいました)

でも、かつての学童保育所を作った時のようにトップダウンで子どもの居場所を作ってもうまく機能しません。現場に子どもの育ちの一翼を担っているという気概と愛が抜けていたからです。

実際、行政担当者は現場も現状も知りません。さて、どうしたものか・・・。これは私がずっと温めて釣り糸を垂らして来た事でもあります。1人ではできません。心が通じ合えて一緒に創る仲間が行政の中にも地域にも要るのです。

ところが、そのチャンスはいきなりやってきました!

続く


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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