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アラビアのロレンスの葛藤から見る中東問題
やあ、久しぶり。元気だったかい? 今回もお前さんと同伴の旅路になったね。よろしく頼むよ。
へい、「旅は道連れ、世は情け」っていいますからね。こちらこそよろしく頼みます。ところでご隠居、騒々しい世の中は相変わらずですが、近頃は例の
トランプの野郎のエルサレム首都発言で中東が蜂の巣をつついたみたいになってやすが、これのもとの原因はどのあたりにあるんですかい?
お前さん、
「アラビアのロレンス」って知っているかい?
へい、随分と古い映画で、砂漠を横断しての戦闘シーンが印象に残ってやすが、中身は忘れていやす。何か関係があるんですかい? 映画なんか作り話では?
ふむ、確かに創作部分はあるが、この映画、基本的には史実に基づいて作られている。
主人公のロレンスの葛藤を理解できれば、中東のいりくんだ複雑で深刻な問題も見えてくるよ。
へー、主人公のモデルは
トーマス・E・ロレンス(1888年~1935年)、
英国の情報局の将校でしたね。確かに複雑な物語で単なるハッピーエンドなんて映画ではなかったような・・・。
そう、状況も入り組んで複雑。主人公のモデルのE・ロレンスも複雑なものを抱えた男だった。そもそも
サライエヴォ事件を契機に
1914年から始まった戦争が、なぜあんな世界戦争にまで発展したか? どうも分からないような戦争で、気がつけば世界中の国々が巻き込まれていたという感じだった。
同盟国と協商国に分かれての戦争でやしたね。確か
同盟国側がドイツ帝国、オーストリア=ハンガリー帝国、
オスマン帝国。
協商国側が
大英帝国、フランス、帝政ロシアでやしたね。
英国はスエズ運河の利権を握っており、[それを脅かすオスマン帝国に対峙するにあたり、外務省カイロ情報局の下にアラブ局を新設し計略と指揮に当たることにした。
そこに集まっていた中東の専門家の中に考古学者だったE・ロレンスがいた。他にはハリー・シンジョン・フィルビー、
マーク・サイクスなど。
彼らの計略はアラブ人を蜂起させ、
オスマン帝国をその内部から揺るがせようというものだった。
その中東の専門家の中で、アラブ人の反乱軍を指揮したのがE・ロレンスというわけでやすね。
その通り、彼がその難しい役を担当した。アラブ人の蜂起、その実情は厳しいものだった。アラブ人と一口に言っても多くの部族に分かれる。反乱の軍と称してもバラバラでまとまりがなかった。これでは戦闘には勝てない。それをロレンスがまとめ大成功に導いた。
1917年末に英国アレンビー将軍によってエルサレムが占領された。しかし、それに先立つロレンスとアラブ反乱軍の活躍無しにはそれは達成できなかった。お前さんが映画で印象に残っている「砂漠を横断しての戦闘シーン」それはオスマン軍の要衝アカバ港攻略だよ。
7月にこれが落とされたので英軍は北方に進撃できた。また戦争の要である兵站の最重要ラインのヒジャス鉄道に大損害を与えている。アカバ攻略と兵站ヒジャス鉄道の戦闘、これはロレンスとアラブ反乱軍のみで行った。そして彼らは最終的にシリアの首都ダマスカスに入城する。
祖国英国を勝利へと導いたロレンスは大ヒーローでやすね。鼻高々でしょう?
いや、逆だよ。
ロレンスは大ヒーローに祭り上げられるの拒んだ。そして自身に対し深く恥じ入っていた・・・。事実として
ロレンスは英王室からのナイト爵の叙勲を拒み、名も栄誉も捨て2等兵として英空軍に入隊している。
彼は自責の念から生涯逃れる事ができなかったようだ。良心があったんだね。
なぜ、ロレンスは生涯にわたりそんな重い葛藤を抱え込んでたんですかい?
それは、彼自身の心境の変化によるものもあるな、
当初ロレンスは、諜報局員として冷徹に祖国英国の利益を追求しており、アラブ人の蜂起はそのための利用の対象だった。しかし、アラブ人たちと寝食を共にし命がけの戦闘を続ける中、
本当にアラブ人たちの独立を目差す心境に変化していたようだ。しかし、
結果として「独立国家樹立」を目差し行動してきた自身とアラブ人たちを裏切ってしまった。
アラブの独立と裏切り・・・?
そう。
英国は非常に卑劣なやり方でアラブ人を裏切った。それがロレンスの苦悩となった。
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特に第1次世界大戦の非常に入り込んだ出来事が中東の構造を生みだし、それが現在に通じています。
そこで第1次世界大戦時オスマン帝国相手にアラブ反乱部隊を率いて大活躍した通称「アラビアのロレンス」を追いながらポイントを押さえていきたいと思います。
出来事自体は非常に複雑な上、面白いことではないので、ぴょんぴょん先生に倣い、肩の力を抜いて弥次喜多道中の会話方式で記述を進めていきます。