「タキガワ教授とご主人の瀧川敬司・東京貿易ロシア法人代表が日本からの会議参加者を探したが、日本の学術界やマスコミなど権威筋の人々は世界やロシアに対する見方が頓珍漢でダメで、私のような肩書なしの市井人に声がかかった。」コントロールを受けていない言論人がいかに少ないことか。
HSE大学(ロシア国立研究大学経済高等学院)の政治学部のトップが、プーチン大統領のブレーンでもあるセルゲイ・カルガノフ教授で、この方が基調演説をされる予定だったそうです。しかし都合でドミトリー・トレーニン教授が代わりに基調演説をされたそうです。どちらも大変有名な教授で、読者の方が紹介されている伊藤貫氏の動画では、両教授とも「ロシアの核兵器は使う用意があることをNATOは知るべきである。アメリカの核の傘は偽物である。アメリカは絶対にロシアと核戦争をしない。」と論じ、ヨーロッパにとっても日本にとってもアメリカとの同盟関係は価値の少ないものだと強烈な指摘しています。
及川氏は"今年のカンファレンスのテーマは「グローバルマジョリティ」だった。ウクライナ紛争では、アメリカがロシアに経済制裁をすれば世界中がついてきて、ロシアを孤立化させ、経済的に弱体化できると考えていた。ところが世界100ヵ国以上の国々がロシアの味方につき、その結果「グローバルマジョリティ」が出現した。ということは、マイノリティがG7で日本もここに入る。その「グローバルマジョリティ」の中身をトレーニン教授が論じた。(それによると)従来の覇権主義ではなく、お互いに内政不干渉をとり、一つ一つの国々の個性を大切にして、その個性を大切にしたもの同士が力を合わせて新たな世界秩序を築くという方向だ。"とレポートされていました。
グローバルサウス側の人々の間に、日本からポツンと入った及川氏らですが、トレーニン教授の話の中に日本のことが出てこなかったそうです。「もう日本に関心を持たれていないな」と思って、及川氏はトレーニン教授に質問をしたそうです。
「確かに今の日露関係は、日本側がロシアに対して敵対的な行為をしているので最悪な関係になっている。それは、岸田政権のバックにあるバイデン政権がそうなので仕方がない。しかし、アメリカの政権が変わって、日本の政権も変わって、もう一度日露関係が接近していくような可能性について、先生はどう思われますか。」
これに答えてトレーニン教授は、「可能性は絶対にある。なぜならばアジアにおけるロシアにとっての最も重要な国が日本だから。日本とロシアの関係は特別なんだ。だから今は確かにあなたがいう通り難しいけれど、しかし、もし状況が変わったら可能性はある。」
トレーニン教授が日本についてこのように語ったのは初めてだったそうです。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
Intro・世界多数派は欧米敵視でない。欧米が追求するものと別のものを求めているだけ。多数派はウクライナ開戦後、ロシアに対して寛容で建設的な姿勢をとっている。開戦後のロシアの外交政策は、米国側からの敵対への対応と、非米側との協調という、二面を持つことになった。
Intro ・いま形成されつつある多極型・他中心型の世界体制は、小さな諸国を含めたすべての国々に対して平等なものでなければならず、(極となる地域大国がその地域を率いる大国中心主義になりうる)多極性と、平等性が矛盾・衝突してしまう。
この問題を解決できるよう、今後の国際政治は、中心的な動きが地域的・域内諸国間の活動になる。
(中略)
Intro ・米主導の欧米は500年間の覇権を守ろうとして、世界の資産を自分らの好きなように采配し、欧米流の文化や政治理念を世界に押しつけてくる。繁栄しつつある非米側の諸国は、その押しつけを跳ね返し、米側の独断理念から解放された完全な国家主権の獲得を目指している。
(中略)
Intro・「世界多数派」は、未来の世界についての試論・試作品・予想図であり、定義によって一般化すべきものでない。
Intro・非米諸国間の関係は、どこかの国が支配的な力(覇権)を持つべきものでない。世界に関する概念は(露中などが勝手に決めるのでなく)参加諸国の自主的な合意に基づいて決めねばならない。
(以下略)
「世界の分析や露政府の戦略の提案を行ってきた大学の一つに『HSE大学』(国立研究大学経済高等学院)がある。HSEはウクライナ開戦後、何度も分析書・提案書をまとめて政府に提出・公開してきた。HSEは、さる11月30日と12月1日に、世界の多極化や非米側のあり方に関する5回目の国際会議を開いた。議題は『新たな現実下での世界多数派: 地域研究の視点から』」(田中宇さんの記事から)
HSEの政治学部のトップが、以前、伊藤貫さんの動画で紹介されていた、セルゲイ・カルガノフさんです。
この会議に、西側では及川幸久さんと田中宇さんのみが参加されていたようです。