[Sputnikほか]原油価格下落の今後の見通し、ロシアへのダメージよりも仕掛けた米国・サウジの側が窮地に

竹下雅敏氏からの情報です。
 原油価格の下落、しばらく安値相場が続きそうだということで、サウジアラビア、アメリカが経済的に厳しい事態になっています。こうした経緯を“続きはこちらから”以降で、櫻井ジャーナルが簡潔にまとめてくれています。
 全体像を知る上で、わかりやすい記事だと思います。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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どうなる原油価格?日本人専門家「サウジ王政崩壊シナリオも想定」
転載元より抜粋)
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原油価格が12年ぶりに、30ドル割れまで下落している。スプートニクは、現在の原油市場の状態と今後の見通しについて、日本の大手商品先物取引会社「日本ユニコム」の主席アナリスト菊川弘之氏に見解を伺った。

菊川氏「年初にサウジとイランとの外交断絶から一時的に買われたものの、主要生産国の供給障害には至らず、地政学リスクが金融市場のリスク回避に繋がっています。イランとサウジの断絶で後ずれが意識されたイランの制裁解除に伴う原油輸出再開の動きも、マーケットの上値を抑えました。一部でOPEC緊急総会開催期待もありましたが、サウジに原油減産を受け入れる気配はないままです。現段階でのサウジにとっての優先順位は、シェールなどの代替エネルギー開発を阻止して国際原油市場での主導権を維持する事で、イラン対抗策という観点からも、6月のOPEC総会前の減産には応じないと思われます。


対ロシア政策もあり、米国も原油輸出解禁の動きを見せており、原油安を巡るチキンレースが世界的に始まっている様相です。米原油在庫の歴史的な高水準や、メキシコ湾岸の新プロジェクト始動など上値を抑える要因は多く、イラン輸出再開の遅れや、新たな生産国リスクがなければ、当面は25ドルから45ドルの安値低迷相場が続きそうです。

ただし、中期的には昨年秋のIMFの指摘(現在の財政運営を続ければ、サウジの在外資産は5年でなくなる)にあるように、サウジは財政赤字問題を抱え、中期的にはサウジ王制崩壊シナリオも想定されます。米国との溝が深まるサウジがIS、イスラム国よりも原油価格の波乱要因になりそうな点には注意が必要です。シェール企業への投資削減も始まっており、中国備蓄積み増しも観測される中、投機玉のショートが溜まっています。安値圏での保合いが長ければ長いほど、将来の上値波乱の種は増えていく事になるでしょう。

資金力が限られている中小の米シェール企業の融資見直しが4月頃に行われると見られています。価格低迷が続き、有効なヘッジ機会も失われつつある中、シェール企業の資金繰り懸念が春先には材料視される可能性も注意したいところです。イランの石油精製施設も老朽化が進み、新たな資本投入がなければ、大量の生産・輸出再開は困難との見方もあります。これまで売り要因とされていたイラン原油が、市場が期待するほど輸出量が早々に増えないようなら、買い要因に転換する可能性もあるでしょう。」
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原油相場の下落で露国より米国やサウジが窮地に陥り、中国はアヘン戦争から続く侵略への反攻へ
転載元より抜粋)
 原油相場の下落が続いている。WTI原油の場合、2014年6月には1バーレルあたり110ドル近かった価格が年末までに大きく値下がりし、年明け直後に50ドルを切り、今年1月15日には30ドルを割り込んだ。2014年9月11日にアメリカのジョン・ケリー国務長官とサウジアラビアのアブドラ国王が紅海の近くで会談、それから加速度的に下げ足を速めたことから原油相場を引き下げる謀議があったとも噂されている

 相場引下げの目的はロシアにダメージを与えることにあったと言われた。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制をNATOとアル・カイダ系武装集団LIFGがクーデターで倒した後、ロシアは体制転覆プロジェクトを阻止するため、積極的に動き始める。その国のあり方はその国の国民が決めるべきことだという主張だ。その結果、シリア、イラン、ウクライナなどでネオコン/シオニストをはじめとするアメリカの好戦派は思い通りにことを運べなくなる。

 アメリカの好戦派が最終的に狙っているターゲット国は中国とロシアではあるが、シリアやウクライナを制圧する前にロシアを揺さぶろうとして同国が大きな収入源にしている石油の相場を引き下げようとしたと見られている。

 ラテン・アメリカではアメリカから自立する動きがあるが、その原動力になってきたのはベネズエラの石油。そのベネズエラでは相場の下落が大きな問題になっている。昨年のインフレ率は275%、今年は720%になると予測され、経済が破綻する恐れがある。その影響はBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)へも波及するだろう。

 それだけでなく、相場下落を仕掛けたと言われているアメリカとサウジアラビアで経済が揺らぐ事態になっている。アメリカでは金利がまだゼロに近いというものの、それでもシェール・ガス/オイル業界がコスト割れで春には破綻する企業が続出する恐れが出てきた。巨大石油資本による吸収が進むかもしれないが、金融機関への悪影響は避けられないだろう。

 何度も書いているように、アメリカは基軸通貨を発行できるという特権で生きながらえてきた国で、それを支える仕組みのひとつがペトロダラー。流通するドルを産油国が回収して財務省証券や高額兵器という形で固定、投機市場へ資金を流し込んでハイパーインフレをバブルに変換させるということもしてきた。

 その中心的な存在であるサウジアラビアが石油相場の下落とイエメン侵略による戦費負担の増加で厳しい状況になっている。IMFによると、同国の2016年における財政赤字は19.4%、5年以内に金融資産は底をつくと予測しているようだ。サウジアラビアの現体制が崩壊し、民主化されたならアメリカのドルが基軸通貨の地位から陥落する可能性が高まり、支配システムは大きく揺らぐ。

 そうした中、ロシアはこうした国々ほどにはダメージを受けていないようだ。ロシアの通貨ルーブルも同時に急落したため、ルーブルで決済すると問題はないということになってしまう。ロシアの石油生産コストも不明な点がある。しかも、ロシアには中国という強力な同盟国が存在する。

 その中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)や新開発銀行(NDB)を創設するだけでなく「一帯一路(シルク・ロード経済ベルトと21世紀海のシルク・ロード)」を推進、米英が支配する経済システムに対抗しようとしている。国内経済の育成をないがしろにしているという意見もあるようだが、米英の金融界が支配する体制から脱却することなしに真の独立はないことも確かだ。アヘン戦争以降、米英の侵略と戦ってきた中国としては、反攻の時がきたと考えているかもしれない。

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