高血圧は『作られた病気』

ところでその後、
おやっさんはどうだ?

心配かけて、ゴメンね。
軽い脳梗塞だって。
後遺症が残らなくてよかったよ。

そいつぁ、ウンが良かったな。

ヒートショックっていうの?
風呂場で服を脱いでたら、倒れちゃってね。
お医者さんが言ってたけど、
気温が急に下がる、今の季節に多いんだって。

年寄りが、救急車で運び込まれる季節だな。

ちゃんと定期的に病院に通って、
〈血圧〉の薬も飲んでいたのに。

ふうん、やっぱり・・・。

どういうこと?

よし、ゆっくり解説してやろう。
とにかく、ここじゃ寒いから、どっかに入ろうや。

わあ〜い!
ここのお店、「甘酒」って書いてあるよ。

ええなあ、寒い日の「甘酒」、体も大喜びだぜ。

さて・・・と、落ち着いたところで、お父さんの話。
高血圧はコワいよね。

ふ〜ん・・
東海大学名誉教授の大櫛氏は、こう言っている。
「高血圧は『作られた病気』です。」
(
smart FLASH)

「作られた病気」だって?!

大櫛氏、ホントのこと、バシバシ言ってくれちゃってるぞ!
「日本の健康診断や人間ドックで用いられている
(血圧の) 基準は厳しすぎます。」
「本来は
健康である人を “病人” とし、無駄な投薬や治療をおこなっているのです。」「医療界にとって、
高血圧の診断基準はまさに『打ち出の小槌』です。
血圧の基準値を下げれば 患者が増えるんですから。」(
smart FLASH)

ええええ〜〜?

そうさ、
高血圧の患者は、一生通ってくれるドル箱さ。

・・・でもやっぱり、〈血圧〉はコワい!

じゃあ聞くが、〈血圧〉ってなんだ?

血液の流れる圧力でしょ?

そうだ。 「オームの法則」覚えているか?

おええ〜 物理! 吐き気がする!

おれも得意じゃねえが、「オームの法則」とは、
〈電圧〉 = 〈抵抗〉 × 〈電流〉
これを〈血圧〉に置き換えると、
〈血圧〉 = 〈抵抗〉 × 〈血液量〉
この式は、何を言っているか?

考える気も起こらない・・・。

物理アレルギーだな。
つまりだ、
〈抵抗〉または〈血液量〉が増えると〈血圧〉が上がる。

頭が、はたらかない・・。

〈血液量〉は、腎不全や大ケガ以外は、めったに増減しない。
だから、
〈血圧〉に影響するのは主に〈抵抗〉だ。
血管の〈抵抗〉と言えば、なんだ?
動脈硬化?

お、甘酒飲んだら、頭が働き出したな。

お父さんは何の症状もなかったのに、
健康診断で〈血圧〉が引っかかって、
「症状がないからと言って
高血圧を放置していると、動脈硬化になる」と言われて、降圧剤を飲み始めたらしい。

「〈血圧〉が高いと動脈硬化になるから危険、そして脳梗塞や心筋梗塞になるから。」
でも、これは本当か?

高い〈血圧〉に順応して、血管も固くなるんでしょ?

その理屈は、実にもっともらしい、しかしおれは、
〈血圧〉が上がるのは、動脈硬化の結果だと考える。

動脈硬化があるから、〈血圧〉が上がるってこと?
血管が固くなると、すみずみまで血が行き渡らなくなる。
だから体は、すみずみまで
血を行き渡らせるために〈血圧〉を上げるのさ。

へえ、そうなのかなあ。

たとえば、脳の一番奥にある、「海馬」に血が届かなかったらどうなる?
海馬の位置

認知症になっちゃうよ。

動脈硬化のせいで、「海馬」に血が届かないとしたら。

〈血圧〉を上げて、海馬に血を送らないといけない。

だろう?
〈血圧〉は必要なんだよ。
人間、
年取れば、誰でも動脈硬化になるもんだ。
動脈硬化による体への影響を補うのが〈血圧〉だと思ってる。

でも、悪玉コレステロールが増えると、動脈硬化になるんでしょ?
瓶に入ったコレステロール

それも思い込みだな。
ゴムチューブの内側に、ネトネトの悪玉コレステロールがひっついて、内腔が狭くなって固くなるイメージだろ?

そうそう、それだよ。

おれは、こう考える。
血管は日々、何がしかの傷を受けているが、寝ている間に補修される。

真夜中の、道路工事みたい。

そのとき、穴を埋めたり、
傷を補修するのに使われるセメントが、コレステロール。
しかも、固まる方のコレステロール、
悪玉と呼ばれるLDLだ。

ええ? LDLは悪玉じゃなかったの?
LDLコレステロールは、細胞がきちんと形状を保つための細胞膜の成分だ。
セメントの役割をしている。

セメントだって?

もし、血管に傷がついたら、まずは凝血して一時的にふさぐ。
そして、最終的にコレステロールなどが注入されて、工事完了だ。

じゃ、動脈硬化の原因が、凝血やコレステロールだというのは?

たぶん、動脈硬化で死んだ人の血管を顕微鏡で見たら、凝血やコレステロールが付いてたので、それが原因だとカン違いしたんだな。

これもまた、結果を原因にしたのか。

そうさ。じゃあ、ここからはもっと詳しく説明しよう。

ちょっと待った!
その前に、頭が疲れた〜〜 「すみませ〜ん、おぜんざい、ひとつ追加〜!」

おれの分も!

「おぜんざい、ふたつ〜!!」
髪の毛よりも細い〈毛細血管〉は詰まりやすい

さあ、お次は血管の話をしよう。

むずかしい話は、イヤだなあ。

まああ、ぜんざい食って、血糖上げてがんばれ。
心臓から拍出された血が大動脈 に入るのは、知ってるな?
大動脈の太さは何センチあると思う?

1センチ?

いやいや、大動脈の太さは2〜3cm(外径)ある。

そんなに太いんだ!

大動脈から、どんどん枝分かれして、中動脈から小動脈に入る。
小動脈の太さは、1ミリ以下。

そんなに細いの?!

まだまだ、この先がある。
1ミリ以下の〈小動脈〉は、さらに10分の1の細さの〈細動脈〉になる。
そして、その先は〈毛細血管〉だ。
上の図は、赤い動脈から〈毛細血管〉Capillaryを通って青い静脈に流れていく図だ。

〈毛細血管〉は、網の目みたいになってるね。

その
網の目の〈毛細血管〉は、髪の毛よりも細い。

へええ!
日本人の髪の太さは平均【0.08mm】(
HAIR)、
つまり【80ミクロン】。(1ミクロン=1000分の1mm)
かたや、
〈毛細血管〉の太さは【5〜20ミクロン】。

ホントだ! 髪の毛よりも細い!
ほとんどの〈毛細血管〉の直径は【7ミクロン】前後 (
Wiki) なのに、中を通る赤血球の直径は【7〜8ミクロン】 (
Wiki)。
〈毛細血管〉は、赤血球がようやく通り抜けられる細さなんだ。
下の写真は、「各血球、左から赤血球、血小板、白血球(白血球の中で種類としては小型リンパ球)色は実際の色ではなく画像処理によるもの」

わあ、おいしそう!
お抹茶を横においたら、和菓子セットだね。
赤血球の内側がへこんでいるとこは、白玉に似てるね。

おめえは、何でも食いもんに見えるんだな。
赤血球の凹みは、〈毛細血管〉を通る際に折り曲がるのに便利だ。

赤血球は、折り曲がって通るの?!
柏もちみたいになって、通るんだね。

ハハ、おめえにかかると、ことごとく食いもんにされちまうな。
髪の毛よりも細い〈毛細血管〉は、詰まりやすいことも覚えとけ。

はあい!

さて、
〈毛細血管〉は何をしているのか。
「〈毛細血管〉の主要な役割は、周辺の組織に栄養やホルモン、酵素などを放出し、二酸化炭素などの代謝産物を受け入れる・・・栄養血管とも呼ばれています。」
(
局所血流の制御)

栄養血管なんだ。
組織に届ける栄養、そして組織で生まれたゴミは〈毛細血管〉の壁を通してやり取りされる。

宅急便とゴミ集配が、同時に行われている感じだね。
〈毛細血管〉の壁は、水や塩( NaイオンとClイオン)
は自由に行き来できるが、ブドウ糖のような大きな分子は、水の5分の3しか通さない。
血漿タンパクのアルブミンなどは、水の1000分の1しか通さない。(局所血流の制御)

狭き門だねえ。

だから、
このフィルターに汚れがついて目詰まりすると、病気になるのさ。

ただでさえ詰まりやすい〈毛細血管〉、その壁にゴミが詰まって、宅急便の受け取りもゴミ出しもできなくなるんだね。
その結果、糖尿病や高脂血症になる。

へ?
フィルターが目詰まりしたら、ただでさえ通りにくい
ブドウ糖や脂肪は、組織に渡らず、素通りしてしまう。
だから
、血糖や血中の脂肪が増える。
組織の方も、ゴミ集配してもらえないから、
ゴミがたまる。

ご飯は届かないし、ゴミ屋敷になるし! 利用されない血糖は増えるし!
だから糖尿病になると、やせて疲れやすくなるんだね。
糖尿病の原因は、インシュリンの不足ではない。
消費されない血糖のせいで高血糖になった結果、大量のインシュリンが出動する。
しまいには、インシュリンが不足して低下するから、インシュリンが糖尿病の原因だと思われているが、
インシュリンの低下は結果だ。

ここでも、原因と言われるものが結果だなんて。
でも意外だね、糖尿病の原因が〈毛細血管〉にあったとは。

そうかな?
糖尿病の3大合併症を見ろよ。
〈毛細血管〉がボロボロで、網膜がやられる〈網膜症〉、
〈毛細血管〉がボロボロで、
手足がしびれて、最終的に腐る〈神経症〉、
〈毛細血管〉がボロボロで、
尿が出なくなる〈腎症〉。

みんな〈毛細血管〉の病気だ!
糖尿病は、血液の汚れを取り除いて〈毛細血管〉の詰まりを治せばいい。
〈血圧〉の薬を飲んでたのに倒れた理由

じゃあ、脳梗塞は?
お父さんみたいに、
脱衣場で服を脱いで倒れたのはどうして?

温度差で倒れた・・・いわゆる、ヒートショック。
糖尿病のように、血の汚れで目詰まりしたことが原因だが、
目詰まりしたのは〈毛細血管〉じゃなくて、AVA ( 動静脈吻合 ) だ。

AVA? なにそれ?
AVAは「〈毛細血管〉に枝分かれする前の動脈と、静脈とを直接つなぐやや太い血管」。(
日経Gooday 30+)
またの名を「グローミュー」。(
西式健康法)
かんたんに言うと、
動脈と静脈のバイパスだな。

なんのためにあるの?

体温調節のためだ。
人間は、一定の体温を保つ「恒温動物」だ。
寒さにさらされたとき、体表の小動脈などが収縮して、体表に血が行くことを止める。

鼻の先や手先が冷たくなっても、体温が保たれてるのは、そのおかげ?
寒さにさらされて、体表を通れなくなった血はどこに行くのか?
AVAという迂回路を通って、温かいまんま心臓に返る。
(
日経Gooday 30+)

うまくできてるねえ。
しかし、AVAにゴミが詰まって、通れなくなっていたら?
体表の血管も「通行止め」、迂回路も「通行止め」。

心臓に返れなくなるよ。

そしたら、何が起こるか?
そのまま血が止まったら、組織が死んでしまう。
〈血圧〉を上げないといけないね。

その通り!
でも、降圧剤飲んでたら?
薬は、体のジャマばかりしやがる。
たとえば、血管に傷ができたとする。
「早く、傷をふさいでくれ!」とSOS発信する。
だけど降圧剤のせいで、工事のトラックがのろくて、なかなか現地に着かない。
やっと到着したら、今度は「セメントの量が足りない」と言い出す。
コレステロールを下げる薬を飲んでいるから。
そうやって、どんどん工事が長引いて、ガタガタの道路は良くならないまま。

でも、工事途中のまんま、放りっぱなしにしたら事故が起こるよ。

たしかに、そうだな。
それと、意外と気づかれていないが、
降圧剤を続けると体は叫び続ける。
「
〈血圧〉を上げろ!〈血圧〉を上げてくれ! 下がりすぎだ!」ってね。
だが、どんなに主治医に言われたとおり、まじめに薬を飲んでいても、落とし穴がある。それは、降圧剤の血中濃度を一定に保つことは、不可能に近いからだ。

と言うことは、
薬の切れ間が、とても危険だということだね。

その切れ間
に、「〈血圧〉を上げろ!」が実行されて、ドーンと血圧が上がったらどうなる?
今まで
渋滞していたドロドロの血が、急激に押し流される。

土石流だ!

または、修復されないままの血管に大量に血が流れる。

土砂崩れだ!
「〈血圧〉の薬を飲んでたのに倒れた」というケースが多いのは、こういうワケだ。
これで、おやっさんの体に何が起こったのか、わかったろ?

うん、良くわかったよ。
お父さんは、日頃から降圧剤を飲んでいたけど、体はいつも「〈血圧〉を上げたい」って思ってた。でも、服を脱いで寒さにさらされたとき、AVAが詰まっていて、血は迂回できなかったので、体は〈血圧〉を上げようとした。
それが、日頃の思いと一緒になって、一気に〈血圧〉が上がって、どっかから来た血の塊が脳に飛んでった・・のかな?

かもしれない。

じゃあ、
〈毛細血管〉とAVAを元気にするには、どうすればいい?

まずは、
血の汚れを取ることだな。
ときどき
風邪を引いて高熱を出し、嘔吐や下痢でフィルターの大掃除するも良し。
食事に気をつけて、適度な運動をして、ストレスを減らすのはもちろん、
日頃から、血を汚さないように気をつける。
「最も血を汚すのが、化学薬品とタバコだ」って、竹下先生もおっしゃってたぞ。
また、暖房冷房に頼りすぎると、AVAが働かなくなる。
皮膚を空気にさらす「裸療法」も、AVAに効くらしい。

でも、ぼくはこれまで、〈毛細血管〉くんとAVAちゃんのこと、まったく気にもかけていなかった。
いつも見えないところで働いてる彼らに、「愛しています。そして、ありがとう」って言いたいな。
Writer
ぴょんぴょん
1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)
動脈瘤破裂の予防にと、降圧剤を飲み続けてきました。
最近、上の血圧が120〜130と落ち着いたので、主治医に言いました。
「そろそろ、降圧剤を止めてもいいでしょうか。」
ところが主治医の答えは、「私としては、110まで下げてほしい」でした。
自分が診ている以上、何かあったら責任問題になると考えたのでしょうか。
一昔前まで「上の血圧は年令プラス90」が標準でしたが、70代で110?
動脈瘤の破裂は免れても、他は大丈夫なのかと心配になりました。