注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】コメ増産こそが自給率を向上させる~輸入小麦をコメで代替すれば49%
(前略)
これからは、生産調整から需要創出へ切り替えなくてはいけない。日本の水田をフル活用すれば、今の700万トンから1,300万トンにコメ生産を増やせる。コメ需要はないというのは間違い。備蓄が消費量の1.5 か月分では少なすぎる。備蓄は安全保障上の需要だ。
そして、小麦やとうもろこしの輸入が滞るリスクも高まっている中、コメのパンや麺、飼料米を増やすのは安全保障上のコメ需要で、貧困層増大の下でのフードバンクや子ども食堂を通じたコメ支援も必要だ。備蓄とそれらを合わせたらコメ需要は膨大にある。かつ、コメの活用で自給率は大幅に向上できる。
(以下略)
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「米を増産せよ」の大号令に「今さら無理」と農家の怒り 9割が「経営が苦しい」崖っぷちの事情
(前略)
石破茂首相は7月1日、政府の「米の安定供給等実現関係閣僚会議」で、「令和7年産から増産を進めていく。不安なく増産に取り組める新たな米政策に転換する」と表明した。
(中略)
だが、米を増産するには作付面積を増やさねばならず、増産規模に合わせた新たな農業機械も必要になる。吉成さんはこう話す。
「高齢化が進む米農家が、増産を目指していまさら農業機械を買えるわけがないでしょう。農機がどれほど高額か、知っていますか」
(中略)
「年をとってトラクターが壊れても、400万円を支払って買い替えない」。機械が壊れたら、そこで米作りを引退する小規模農家は多いという。そんな小規模農家が今後、作付面積を増やしたり、リスクを取って農業機械を新たに購入することはまずないだろう。
(以下略)
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[特集]注目・水稲の再生二期作 各地の実践例や課題は
(前略)
一度刈った稲をもう一度伸ばして、収穫を二度行う「再生二期作」の機運が高まっている。
(中略)
これまでは温暖な西日本で取り組みが先行してきたが、東日本の主産地でも米を安定調達したい卸業者も参画した試みが動き出している。産地からは「米価の回復もあり、機運が高まっている」との声も上がる。
(中略)
離農の進行で生産基盤の弱体化が懸念される中、再生二期作を含め「農家の生産性を高めていくことが、米の長期的な安定確保につながる」(米卸)との声が上がる。
一方、再生二期作には注意すべき点もある。長期的に見れば地力が落ち、農機の燃料代などコストが増える可能性があるとの声も出ている。多発するイネカメムシへの対応も求められる。
各地の実践事例を共有・分析し、安定栽培に向けた知見を積み重ねる必要がある。食味はどうかや、米の全体需給にどれほどの影響があるのかも含め、まずは再生二期作の実態把握から始めよう。
しかし高市政権になると、鈴木憲和農水大臣は再び減反政策を表明しました。「おかしいのは、鈴木大臣は価格には関与しない、市場には関与しないと言いながら、生産量を抑制したら価格は上がる。これは価格に関与していることになる。備蓄米も"不足している時だけに出す"というのはすでに市場価格を下げるという効果がある。」と鈴木宣弘先生は矛盾を突きます。
農家に増産してもらって、需給にゆとりを持たせ、財政出動の直接支払いで農家を助け、消費者も米価が安定して助かるという形がまさに「市場に関与しない」win-winの稲作ビジョンですが、これには少なくとも6000億円くらいの財政出動が必要になります。「減反」という旧来の手法に戻るのは、財政出動ができないことと関わってくるのではないか、つまり「お金が出ない」。
お金を出さずに消費者米価を下げようとして出てきたのが「おこめ券」でした。これは一時的なごまかし政策であるだけでなく、一方で「トランプ大統領のご機嫌をとるのにアメリカのお米を75%増しで輸入する」ことを決めたわけですから、生産の抑制とは全く整合性がとれていない「めちゃくちゃ」です。
深田萌絵氏は「いつもの自民党から考えると、助成金を増やしたら、中小零細は潰して大企業か外国資本にそのお金を全力で流す。そしてキックバックをもらう、これじゃないかなと思いますよ。積極財政の意味って。」と見抜いておられ、鈴木先生は笑いをこらえて「あるある」というお顔でしたが「自給率100%、積極財政、財政の壁をぶち破る、俺が責任を取る、とまで農水大臣が言っていることに期待したい。」と述べておられました。