(前略)
感染症を媒介する
蚊を標的とした二つの技術を組み合わせる実験が中国で行われ、実験区域2か所で
蚊を実質的に全滅させることに成功した。研究結果が18日、発表された。
(中略)
実験の対象となった蚊は、ヒトスジシマカ
(中略)...と呼ばれる、制御が特に難しい種類だ。
一般にヤブカと呼ばれるこの蚊はジカ熱や
デング熱などの
感染症の主要な媒介生物となる。
米ミシガン州立大学
(中略)...などの研究チームは、次の
二つの個体群制御技術を利用した。蚊を実質的に
不妊化する
放射線と、蚊の卵を生存能力のない状態にする「
ボルバキア(Wolbachia)」と呼ばれる
細菌株だ。
研究チームは中国・広州
(中略)...を流れる川の中州にある2か所の実験区域で2年間に及ぶ実験を行った。広州はヒトスジシマカが原因でデング熱の感染率が中国国内で最も高くなっている場所だ。
実験結果は目を見張るものだった。ふ化した蚊の卵の数が94%減少し、生存可能な卵が一つも記録されなかった期間も最長13週間に上った。また、捕虫器で捕獲される雌の数が83~94%減少し、6週間にわたって一匹も雌が検出されないこともあった。
地元住民の蚊に刺される割合が97%近く減少したことも今回の実験結果を裏付けている。
(中略)
■放射線と細菌
ボルバキア
細菌株を用いる個体数制御は、ボルバキアに感染した雄と感染していない雌との間にできる卵を成長させないことで機能するため、感染させた雄だけを野外に放出する必要がある。同じボルバキア菌株に感染した雄と雌同士が交尾すると、
この手法に対して耐性のある雌が生まれる可能性があり、手法の有効性は低下してしまう。
だが、感染した雌を放出させないのは難しく、通常は0.3%ほどの雌が混入してしまう。研究チームは
この問題を克服するため、実験室内で飼育するボルバキア感染蚊に低レベルの
放射線照射を施した。放射線は雌を不妊化するが雄は生殖可能な状態を保つ程度に調節した。
(以下略)
波や紫外線にさらされ、劣化することで発生することの多いマイクロプラスチック、海洋生物が誤飲してしまうケースが増えている。マイクロプラスチックはその表面にポリ塩化ビフェニルなどの残留性有機汚染物質を吸着させやすいという性質があるらしく、有害物が付着したマイクロプラスチックが海洋生物の健康まで脅かしている。マイクロプラスチックを介した有害物資の生体への移行については、未だ詳細が明らかではないようだが、食物連鎖を通じて、有害物質がプランクトンから魚類、そして我々人間へ蓄積する可能性も指摘されている。
この厄介物のプラスチックを食べてくれる細菌(バクテリア)が、今から10数年前に日本のペットボトルの処理工場で発見され、ゴミ対策にならないものかと多くの国で研究が進んでいるようだ。この細菌が出す特殊な2種類の酵素が、ペットボトルなどの素材として利用されているポリエチレンテレフタレート(PET)を分解し、栄養源としていることがわかったという。厚さ0・2ミリのPETを、約1カ月で二酸化炭素と水に分解するという。微生物による生ゴミの分解でも同じで、二酸化炭素と水に分解される。
PETの総称であるポリエステルは、自然界にも存在していて植物の葉を保護しているそうだ。自然界のポリエステルを食べるバクテリアが、人造ポリエステルを食べるように進化してきたのだと思われる。
筆者がむかし会社勤務していた頃、お客様の事業に関連して産業廃棄物(主に化学物質)を処理するのに、微生物の力を借りる手法の「アガリエ菌」を調査したことがある。菌は、ターゲットにする廃棄物を無害化するように人手によって作られる。自然界に存在していない菌を誕生させるわけだから、天地自然の理は作用し得ない。それ故、突如として人間の意に反して暴走をしてしまう可能性が考えられたため提案を断念した経験がある。
プラスチックを食べてくれる細菌、人手の介入なしに進化してきた菌であって欲しい。今のところ、菌の分解能力からみて問題解決の救世主とはまだなり得ないようだ。そのための人的な介入など論外だが、人類が抱えるプラスチックごみ問題を解決してくれる救世主になってくれるかどうか、人類の心が試されているのかもしれない!
以下に貼った、プラスチックを食べてくれる細菌関連の記事、興味があればご覧ください。
・プラスチックを「食べる」酵素に賭ける リサイクルの未来
・プラスチック食べる微生物、海のごみを沈める助けに 豪研究
・プラスチックを「食べる」強力な酵素、米英チームが発見